人材不足でシニア女性の出番

女性雇用人材不足でシニア女性の出番

シニア世代の女性がパートやアルバイトで働きやすい環境づくりが進んでいる。

 無理なく働ける短時間勤務の求人が増えているほか、主婦業など自身の経験を生かせる仕事を提供する会社が出てきた。若年層の減少による人材不足などが背景にある。

「朝に働きたい」

 午前8時。埼玉県春日部市のディスカウント店「MEGAドン・キホーテ春日部店」で、アルバイト店員の土屋真寿子さん(64)が商品を棚に並べていた。土屋さんは、開店前の準備を担うスタッフ「ライジングクルー」の一人。週4日、午前7~10時の3時間勤務だ。

 昨秋、体力的な理由で医療関係のフルタイムの仕事を退職したが、「仕事をしないとリズムが崩れる」と思い、同店で12月から働き出した。「短時間なので無理がない。午後は買い物をしたり友人に会ったり。充実しています」と話す。

 ドン・キホーテグループは昨年7月から、ライジングクルーの募集を開始。クルーは現在、国内全295店舗のほぼ半数で働いている。彼らが開店前に陳列を終えることで他の店員が開店中の接客に集中でき、サービス向上につながるという。

 1日2時間、週2日から勤務できるようにし、60代以上も積極採用する。春日部店では8人中、5人が60代の女性だ。「朝に働きたいというシニア層が多い点も考慮した」と同グループ。

 パートやアルバイトで短時間勤務の求人は増えている。求人情報誌を発行するリクルートジョブズによると、1日3時間以内や週2日以内などの求人は昨年、前年比1・7倍になった。

 増加の大きな理由は人手不足だ。24時間営業のファストフード店やディスカウント店などは若年層の減少で人が集まらず、シニア層に目を向けた。勤務時間を柔軟にしたり業務内容を単純化したりして、シニア層が働きやすい環境を整えてきた。

 消費者側の変化も影響している。同社ジョブズリサーチセンター長の宇佐川邦子さんは「消費者もシニア層が増えており、同じ目線で商品説明ができるとして、小売業などでシニアの女性を接客業務で採用する例も出てきた」と指摘する。

家事代行や塾講師

 シニア女性の活躍の場は様々な業界に広がる。

 2013年に設立した家事代行会社、かじワン(東京)は、東京都内を中心に、掃除や子どもの送迎などを一般家庭から引き受けている。スタッフは60~70代のパート女性が中心で、約180人が登録。1軒あたり2時間程度の掃除の代行を1日に2軒担当し、月10日程度働く人が多い。

 設立時から働く女性(72)は、子どものいる共働きの家庭などで週4~5日、2時間程度作業する。30代まで出版会社に勤め、退職後もフリーで出版関連の仕事をしながら家事と育児をこなした。その経験から「共働き家庭の母親の大変さが分かる。その手伝いをできるのはやりがいがある」と話す。

 個別指導塾の明光義塾では、アルバイト講師の多くを大学生に頼ってきたが、学生の確保が難しい地域では主婦らを積極的に採用する。「生徒との接し方がうまく、保護者からの信頼が厚い」と言い、最近はシニアの女性を採用する例も出てきているという。

 在宅でできる仕事をインターネットを通じて企業から受注する「クラウドソーシング」でも、シニアの姿が目立つ。クラウドソーシングサイト「シュフティ」では、55歳以上の利用者が昨年から増え、今年8月で約2700人。このうち女性が8割程度を占める。日常生活の感想など生活情報サイトに掲載される簡単な文章作成や、データの入力などの仕事が多い。

 シニア人材の活用に詳しい、日本産業ジェロントロジー協会代表理事の崎山みゆきさんは、「シニアの女性は子育てなどで頑張ってきた分、勤勉な人が多い。コミュニケーション力も高く、販売やクレーム処理などの顧客対応に適しており、短時間でも成果を上げられる」と指摘する。

「体力的軽さ」重視の傾向

 総務省の労働力調査によると、55歳以上の女性の就業率(パートやアルバイトを含む)は増加傾向にある。

 55~59歳の就業率は、2004年には58%だったが、14年は66%に伸びた。60~64歳と65~69歳も、14年は48%と31%。それぞれ04年の38%と24%から上昇している。

 また、内閣府が11年、55歳以上を対象に、仕事を選ぶ際に重視する条件(複数回答)を聞いたところ、女性は「体力的に軽い」が41%で最多。「勤務時間」(37%)、「経験が生かせる」(29%)、「収入」(28%)と続いた。経験が生かせる点や収入を重視する男性と対照的だった。