【イベント報告】女性の「管理職になりたくない」意識を変えたもの

女性雇用【イベント報告】女性の「管理職になりたくない」意識を変えたもの

企業の人材・組織戦略・人材開発のための専門イベント「ヒューマンキャピタル2015」が、7月15日~17日に東京国際フォーラム(東京・有楽町)において、日経BP社主催で開催された。7月16日の日経WOMAN特別セミナーでは、講演に続くパネルディスカッションで、『日経WOMAN』と日経ウーマノミクス・プロジェクトが実施した2015年版「企業の女性活用度調査」の上位企業の女性活用推進担当者が登壇し、各社独自の取り組みとその成果を語り合った。

社長直轄のプロジェクトで女性活躍推進

パネリストは、KDDIの総務・人事本部人事部ダイバーシティ推進室長の小島良子さん、第一生命保険グループ経営本部兼人事部ダイバーシティ&インクルージョン推進室長の柏崎美樹さん、高島屋の人事部人事政策担当次長の三浦剛さん。モデレータは、日経BPヒット総合研究所上席研究員・日経WOMAN前編集長の佐藤珠希が務めた。

最初に、KDDIの小島さんが、自社の女性活躍推進への取り組みについて語った。「当社の女性活躍推進は、2005年、当時の社長の女性活躍推進宣言からスタートしました」。ここから体制構築が始まり、07年には社長直轄の女性活躍推進プロジェクトが発足、08年にはダイバーシティ推進室を設置。再雇用制度などの制度の充実を図った。

第二ステップとして、女性リーダー登用に注力。役員補佐への女性登用や、社員へのインタビューなどをもとにリーダー育成に取り組んでいる。

「これらの施策の効果により、出産で退職する社員はいなくなり、基本的には育児休業から100%復帰しているので、体制構築は整ったと思います。次は働き方改革です。テレワーク等を利用して能力を発揮する方法を探るフェーズに入ると考えています」と小島さんは語った。

従業員の満足度低下を挽回する施策が奏功

続いて、第一生命保険の柏崎さんが、「当社のダイバーシティ&インクルージョンの取り組みは、一人ひとりの個性を活かすことで、新しい価値が生まれるという思想です」と話した。社員の9割が女性という組織において、継続的発展を遂げるためには、女性の活躍推進が必要不可欠という。同社の女性活躍推進の歴史は古く、1974年には女性営業部長の登用がスタートしている。

本格的に女性活躍推進の部署を設けたのは2005年。その理由は、04年の従業員満足度調査で、女性を中心とした一般職の満足度が下がり、危機感を感じたことが原因だった。

06年には両立支援策を大幅に拡充させ、09年には人事制度改定を行った。以前は男性を中心とする旧総合職が企画、立案等の分野を担い、女性を中心とする旧一般職はルーティンワークが中心という役割分担があった。「お客様ニーズの多様化、高度化に対応するために、女性の活躍を期待して職掌統合を行っています。統合前後には、多くの研修や仕組みの整備を行い、女性職員の意識改革に努めました」(柏崎さん)。

顧客接点業務への展開では、来店型店舗である第一生命ほけんショップでの窓口業務から、店長業務までを女性が行っており、また、保険金支払い時のコンサルティング業務でも多くの女性が活躍している。

顧客も社員も女性が多い環境、男女格差は少ない

最後に、高島屋の三浦さんが、「百貨店という性格上、お客様の8割は女性で、従業員の7割以上が女性。そのために、昔から男女の処遇差はなく、女性の感性や能力を活かすための環境作りや取り組みを推進してきました」と説明した。

実際に、1986年の育児休職制度に始まり、女子再雇用制度の導入もして、2000年以降は男女共同参画型企業を目指した取り組みを実施。06年からはワークライフバランスの推進や、育児、介護をしている社員への支援も充実してきた。

2015年度に女性の部下持ち課長以上の比率20%の目標を立てており、3月現在で20.5%。「あくまで管理職は能力により登用すべきという考えを前提にしており、本人の能力、意欲、期待を含めた人事異動の結果としての数字です」(三浦さん)。

百貨店業界を取り巻く環境は年々厳しくなり、小売業界の変化、ビジネスの面でも競争が激しい。また、職員数の減少が予測され、生産性の向上が求められる。優秀な人材の確保と同時に、ノウハウの継承と能力伸長が必要だ。職員の大半を占める女性の活躍推進は、企業の成長のためには極めて重要だという。

このような理由もあり、従業員が安心して働ける環境作りのために、育児、介護に関する制度設備の充実や経済的支援に注力している。

男性の育児参加を推進すると…

続いて、各社独自の取り組みについて話し合った。第一生命保険の柏崎さんは、「トップダウンでの取り組みを推進するため、所属長向けのマネジメント研修で、メリハリある勤務の必要性を伝え、各職場での働き方変革の推進をお願いしています」と話す。

ワークスタイル変革の各職場での活動における昨年度の好事例職場では、業務効率化によって総労働時間を10%削減。業務の一部をアウトソーシングしたり、月1回プライベートを充実させるための3時の早帰りの実施を行っている。

高島屋の三浦さんは、「男性の育児参加を推進した結果、昨年は約60人の男性が育児休業を取得しました。また、年間14日の看護休暇があり、子供の予防接種や健康診断の立ち会いに利用できます。スクールイベント休暇は年間2回、半日単位で取得できるので、午前中は運動会に出て、午後から勤務する社員もいます」。

さらに、新たな勤務パターンの導入として、今年度は短時間勤務者から管理監督者を登用。3月時点で4人がマネジャーとなり、職場の責任者として活躍している。

KDDIの小島さんは、「部下を持つマネジャーである女性ライン長を、2015年度までに比率90名(ライン比率7%)まで持って行く目標を掲げました」と話す。

そのための具体的な取り組みとして、社長以下5人の役員に、男女社員が1人ずつ補佐として付き、役員が出席する会議やイベントにもすべて同行。役員のジャッジの仕方、人の動かし方を学んでいる。補佐の任期は1年、現在は4期目で15人が卒業し、全員がライン長として活躍。うち2名が部長に昇格した。

「管理職になりたくない」理由とは

人材育成の取り組みとしては、高島屋の三浦さんは、キャリアサポート研修の効果を挙げた。「30代後半から40代前半で、同一職務での経験が長く意欲の高い女性職員を対象に、管理監督者に必要なスキル、ノウハウの習得、視野の拡大、自己のキャリアプランに向けた意欲向上を図ることを目的に実施しています」と言う。

また、男性の意識改革のために、女性の多い職場をマネジメントしているシニアマネジャー、経営層を対象に、女性が活躍することの意義、女性の仕事に対する意識を理解させた上で部下の指導方法、コミュニケーションのとり方を指導している。

さらに、新たな取り組みとして育児勤務者メンター制度がスタート。育児経験のある通常勤務者への懇談会を開き、出産から復職までの過程、仕事と育児の両立の難しかった点、工夫した点、キャリアアップの理由について意見交換を行う。30人程度の参加を予定していたが、約120人の応募があった。

KDDIの小島さんは、「人事育成対象者は人事が選ぶのではなく、各職場の本部長が選びます。部下を持つライン長に育てるための育成計画書を書き、本人の強みと弱みを明確にし、弱みを克服するための方法を考えます。人事部も集合研修や社内のネットワーキングを作る場を提供し、勉強会を開き、現場と組んで動いています」と語る。

人事部は、「管理職になりたくない」と考えている社員200人にその理由をインタビューした。一番多かったのは「自信を持てない」という回答。スキルがない、経験がないという答えだったが、実績を見ると成果を出している人も多かった。そこで社長が、その200人と直接話し合うセミナーを開催。社長自ら女性活躍への思いを伝えたことにより、参加者の90%に管理職への意欲が芽生えるという結果を得た。

第一生命保険の柏崎さんは、「2015年4月時点で女性の管理職比率は22.5%。次の目標は2018年4月までに25%。政府が掲げる2020年までに30%という目標に関しては、2020年代の早期に達成したいと考えています」と話す。

これまでの女性活躍推進の取り組みの結果、女性のリーダーが増えてきており、昨年度は女性部長職以上の会を立ち上げ、ロールモデルとして講演をしたり、女性の管理職育成のアドバイザーを務めたりしている。エリア部門ごとに課題が違うので、その部門で女性のリーダーを育成するには何が必要か、当該エリア部門の女性管理職が自分自身の体験を含めて企画運営している。

最後にモデレータの佐藤が、「女性活躍推進方法の正解は、ひとつではないと感じています。ご登壇の3社も、それぞれの状況に基づいた多様な取り組みによって成果を上げている。各社の施策が、明日から多くの企業の女性活躍推進のヒントになることを願っています」と締めくくった。