女性雇用【イベント報告】あの会社の「女性活躍への取り組み」の成果とは
企業の人材・組織戦略・人材開発のための専門イベント「ヒューマンキャピタル2015」が、7月15日~17日に東京国際フォーラム(東京・有楽町)において、日経BP社主催で開催された。7月16日の日経WOMAN特別セミナーでは、「経営戦略としての女性活躍」と題して、ANAの常務取締役執行役員・女性活躍推進担当の河本宏子さんが、女性人材育成や組織・風土改革に成果を上げてきたANAの女性活躍施策について、基調講演を行った。
2007年から女性活躍の施策を実施

「ANAでは、客室乗務員や地上スタッフなど、女性の活躍とともに企業として成長を遂げてきました」。
1952年に2機のヘリコプターと28人の役職員で発足したANAは、農薬散布や広告ビラの配布からスタートした。その後、55年に旅客機を購入して初の女性客室乗務員を採用し、68年には地上勤務の女性スタッフ採用を始めている。
しかし、女性は現場での勤務が中心で、マネジメントへの参加はなかった。「30数年前に私が入社したときには、客室乗務員も地上勤務の職員も子供ができたら辞めるのが当たり前の時代でした。創業当時から男女が一緒に働いている会社ですが、女性活躍を意識して取り組んだ歴史はまだ浅いのです」。
女性活躍の施策としては、2007年にいきいき推進室が発足。仕事と家庭の両立支援、女性が長く働ける環境整備に努めた。さらに、2012年には、「人財戦略」にダイバーシティ&インクルージョンを掲げ、2014年にはポジティブ・アクション宣言を行い、女性活躍を経営戦略のひとつに位置づけている。
365日24時間無休の空運業のために、女性の働き方へのサポートは、客室乗務員と地上職では異なる制度を整備している。客室乗務員は仕事の性質上、通常の時短勤務を取り入れると仕事が進まなくなるので、短日数勤務制度を設け、働く日数を減らすことで勤務を続けることのできる環境を作った。一方で、出産休暇、介護休暇などは地上職と同様だ。
女性の職場復帰を制度と雰囲気作りの両輪で進める
職場復帰へのサポートとしては、仕事復帰応援ブックを作り、復帰を支援する様々な制度を網羅し、活用法を説明。「せっかく制度を作っても、情報がないと十分に生かしきれない。このガイドブックを見れば、子育てをしながら制度を利用して働き続ける方法を考えられます」。また、配偶者が海外転勤になった場合、一定期間、配偶者に付いて海外に行くことができる休職制度や、退職者の再雇用制度も整備している。
制度だけではなく、職場に復帰しやすい雰囲気作りも重要だ。育児休職者対象セミナーでは、休職者は自らの状況を説明し、会社側からは職場の現状を聞くことができる。休職後に復帰した先輩が、ロールモデルとして悩みの相談に乗る場も設けた。また、子供の職場参観日「きっずでい」を実施し、子供たちに親の仕事を知ってもらうことで、家族の応援を得やすい環境を整えている。
2012年のポジティブ・アクション宣言では、女性活躍を経営戦略の一つとして位置づけており、トップ自らが決意を示し、数値目標を示したことが推進力になった。2020年度末までに、女性役員2人以上、女性管理職比率15%、総合職・客室乗務員における女性管理職比率を30%に設定した。
「女性の活用を積極的に進めている企業として、空運業から初めてなでしこ銘柄に選定されたのも励みになりました。現在すでに4人の女性役員が誕生し、グループ会社にも女性の社長が就任しています」。
すべての女性が管理職を目指すわけではないので、専門職のロールモデル作りにも努めている。「日本で初めて3万時間のフライトタイムを達成した客室乗務員もいます。3万時間とは、3年半ずっと空の上に居た計算になります。まさにプロフェショナルで、エキスパートとしてのCAのモデルです」。
空港やコールセンターではスキルコンテストを実施し、現場でいきいきと輝く女性の支援にも取り組んでいる。
ワークスタイルイノベーションを目指す
女性の意識改革を促す制度としては、女性のキャリアデザインセミナーを催し、自分がどんなキャリアを描きたいのかを学べる場を設けた。また、女性の総合職がライフイベントと仕事を両立させながらどのように自律的にキャリアを描くか気軽に相談できるメンター制度を設け、入社5年目の総合職の社員と、女性管理職が知り合う仕組みを作った。
男性職員への施策も重要だ。女性活躍推進を一緒に考えてもらうために、ダイバーシティに関わる講演会を実施している。オリンピック女子バレーボールの監督の講演は、強いチームを作る方法、女性の個性を引き出す方法がテーマだった。女性の医師から女性の体の変化の講演を学ぶ回もあった。
「外部の講師に様々な切り口でダイバーシティについて語ってもらうのは効果的です」。さらに、イクボスセミナーも開催し、男性の意識改革、働き方改革を推進している。
「いきいき推進室から始まった女性活躍の環境整備、風土作りから具体的な施策も加わり、2015年4月には、ANAグループ全体でダイバーシティ&インクルージョン宣言をしました。『日経WOMAN』による『女性が活躍する会社Best100』のランキング総合3位にも選ばれ、少しずつ前に進んでいることを感じています」。
今後の取り組みとしては、プロとしてのスキルを磨くとともに、一人ひとりがいきいき働き輝ける職場を作りに注力するという。「上司と一対一のコミュニケーションをどうとっていくか。これが女性活躍、ダイバーシティ推進には大事だと思っています」。
長時間労働に価値があるのではなく、良いアウトプットを重要とするワークスタイルのイノベーションの必要性を感じているという。「まだまだ進化の途上なので、意見交換をしながら次のステップに向かっていきます」と今後の方向性を示した。