総合「クラウド」は人材難の中小企業の救世主となるか?
人材不足に悩む中小企業経営者からの注目を集めている「クラウドソーシング」。「群衆(Crowd)」と「業務委託(Sourcing)」を組み合わせた造語だ。より詳細には、企業が外注したい業務内容と、クラウドワーカーと呼ばれる業務受託者のスキルや労働力を、ネットを通じてマッチングさせる仕組みだ。クラウドコンピューティングにもある、雲を意味する「Cloud」とは別物。念のため。
急成長する「クラウド」市場
2014年に発足したクラウドソーシング協会の資料によると、仕事の発注金額ベースで2011年には44億円程度だった市場規模は、13年には246億円に拡大してきた。さらに、17年には1400億円以上の市場規模にまで成長するとみられている。
クラウドソーシング市場の成長を支えてきたのは、インターネットを通じて場所や時間に捉われない働き方の普及に他ならない。従来は、人材登録サイトや人材紹介会社、や協同組合が担っていた「仕事と働き手のマッチング」が、クラウドソーシングの登場によって大きく変化しようとしているといえるだろう。
クラウドソーシング導入のメリット
クラウドソーシングの導入が企業にもたらす最大のメリットは、圧倒的なコストダウンだ。日増しに範囲が広がっていく専門分野に、ひとつひとつ対応できる人材を常時雇用しておくことは、特に中小企業にとっては、至難の業と言わざるを得ない。
さらに、もうひとつ見逃せないのが、「開かれた技術革新」だ。日本中の技術者らとネットを介して直接繋がることによって、従来は打開することが出来ないでいた研究開発の課題を解決できる可能性が高まってくる。また、広くユーザーの声を取り入れた商品企画や、ユーザーと一体化したキャンペーン展開などのマーケティング戦略も、手の届く範囲に入ってくる。
中小企業の「クラウド」活用はまだまだこれから
企業の発展に、人材は不可欠の要素であるのは明白で、中小企業にとってクラウドソーシングは、さまざまな専門知識やノウハウを持つ人材調達のハードルを引き下げる魅力に満ちている。ところが、中小企業がクラウドソーシングを生かし切るのはそう簡単ではないのも現状だ。
というのも、クラウドソーシングを導入するためには、発注者側にITリテラシーと発注スキルの2つが求められる。ITリテラシーとしては、メールやチャットなどのオンラインツールを使ってコミュニケーションするスキルがクラウドソーシングのプラットフォーム上で、円滑に意思疎通するために求められている。また、発注スキルと言うのは、依頼したい仕事の内容をきちんと整理し、要件を定義した上で、クラウドワーカー達に向けて発注するスキルのことだ。
ただ、実際のところ、大多数の中小企業はこうしたスキルを持った人材を抱えていない。そのことが、クラウドソーシングの利用に障害となっていることも否めない。先に掲げたクラウドソーシング協会では、そうした企業をサポートするためにプロデューサー制を設け、クラウドソーシングを利用した経営改善の提案や活用に役立てようとしている。
また、すでにこうした事情も調査で指摘されている。業務を発注したい企業と、クラウドワーカーとして業務を受注したい主婦の橋渡しをするクラウドソーシング「シュフティ」を運営する「うるる」が3月に、中小企業の管理職以上600名を対象としたインターネット調査を実施。同調査の結果によると、「クラウドソーシング」という言葉自体の認知は6割強あったものの、実際の活用は1割弱と低い水準に留まっており、人材難の救世主にはまだ、なれてはいなさそうだ。
クラウドソーシングの活用が事業を伸ばす
クラウドソーシングを使って依頼できる仕事の種類は「課題解決型の研究」、「商品設計やアイデア出しなどの企画」、「プロトタイプの製作や製造サポートなどの商品開発」、「プロモーションなどのマーケティング支援」など多岐にわたる。また、業務の依頼パターンも、固定報酬をベースにした「プロジェクト形式」、成果物によって採否を決める「コンペ形式」、アンケート収集などに適した「タスク形式」といった選択肢が揃っている。
クラウドソーシングの普及に伴い、クラウドワーカーの中には、MBAホルダーやプロデザイナー、統計解析の専門家など、中小企業ではアプローチが困難なハイクオリティなスキルや実績を持つ人材が揃いつつある。しかも、インターネットの環境が整っている現在、クラウドソーシングに登録しているワーカーは国内外にわたっている。併せて、オーデスクといった、海外のクラウドソーシングサービスを活用するという方法もある。
大手人材・ITの後押し受ける「クラウドソーシング」
現在ネット上でクラウドソーシングのマッチングサービスを展開している企業としては、2014年12月に東証マザーズへの上場を果たしたクラウドワークス <3900> やリアルワールド <3691> などが最右翼だ。無論今後、他の有力企業が上場によって注目銘柄となる可能性も高い。ほかにも、IT・ネット業界で知られるようになってきたランサーズなどもある。
また、クラウドソーシング協会には、パソナG <2168> の子会社パソナテックや、アサツー・ディ・ケイ <9747> 、サイバーエージェント <4751> などの企業も名を連ねており、いずれも業界の発展に積極的な姿勢を見せている。
クラウドソーシングは、「顔の見えない者同士の商取引」である一方で、限りない可能性を秘めてもいるだけに、不正やモラルハザードのない健全な発展が望まれる。