40代の転職が失敗に終わる最大の原因

総合40代の転職が失敗に終わる最大の原因

あなたのエージェントは、本当にあなたのことを考えてくれているか

あなたは自分の転職を人材紹介会社任せにしていないか

転職を行う場合は、ヘッドハンティングを受けるか、あるいは人材紹介会社などのエージェントに登録して仕事を斡旋してもらうケースが多い。

そこで求職者としての立場を一度脇に置いて、エージェントの立場に立って考えてみてほしい。斡旋事業もビジネスだ。できるだけ効率的に仕事を進めたいと思うのは当然だ。できるだけスピーディーにマッチングを成立させたいと思うだろう。そしてこれは求職者と利害が一致する。

その上で、できるだけ高い給与の仕事を斡旋したいと考えるはずだ。なぜならば、転職者の給与が高ければ、それだけ手数料も高くなるからだ。ここも多くの求職者と利害が一致するだろう。

その結果として、自分たちの手持ち求人リストの中にある会社で、求職者に一番高く給与を払ってくれそうな会社を探す。しかも、同業他社のほうがわかりやすいから、そこに絞って探すのが常だ。

この、一見問題のなさそうな行動に、実は問題が潜んでいることを、この連載をお読みいただいている読者は気づいたかもしれない。

今までお伝えしてきたポイントと全く逆の選択なのだ。最初の給与は無理して高くしないほうがいいということ、同業他社への転職は必ずしも成功確率が高くない、というこれまでに挙げたポイントとは正反対になっている。

多くのエージェントは、その人の転職後の仕事のやりがいや仕事の継続性についてまではあまり考慮しない。かなりドライであることは知っておいた方がいい。あくまでもビジネスなのだ。

エージェントはよく、「求人件数が常時何万件あります」ということを宣伝文句として使う。それだけの件数があるのだから、きっと自分に合った転職先が見つかるだろうと考えてしまう。

ただ、そこがそもそもの間違いだ。あなたが今選ぶべき相手は、最終的にはたった1社だけ。何万社あっても何の意味もない。それよりもむしろ、自分が幸せになれるストーリーを描ける候補企業が数社あるほうがいい。

だから求人件数=社数が多いということに惑わされてはいけない。

「剣山マッチング」は
若い頃にしか通用しない

「剣山(ジョブ)マッチング」という言葉を聞いたことがあるだろうか。剣山とは、生け花に使うあの棘のたくさんある金属の塊だ。両手に一つずつ剣山を向い合せに持ち、剣山と剣山を針側でぶつけるところを想像してみてほしい。

お互いにあれだけの針があるのであるから、一つぐらいはぴちっと針と針がぶつかるだろうと、あなたは思うだろうか。試しにやってみるといい。実際は、意外とぶつからないものなのだ。針と針は素通りして、剣山の本体同士がぶつかってしまう。

剣山と剣山ならば針がぶつかる。そうした幻想は、それでもこの世界にまかり通っている。つまりは、求人が多数あり、他方に求職者が多数いれば、どこかに当たる。求人と求職者を増やせば増やすほど当たる確率は増すから、ますます在庫を増やしたほうがいいという考え方だ。

しかし私は、この思想自体が問題だと考えている。それでもエージェントは言う。「若手の場合はそれでうまく行っているじゃないですか?」

確かにそうだが、それには理由がある。若手の場合、新入社員を考えるとわかりやすいが、まず求人側の採用したい人間像が漠としている。つまりピンポイントで人材を採りにいっていないのだ。

つまり、人材のストライクゾーンが広い。求める人材像は極論すれば、「素直で元気」ならばいい。少々能力やスキル的に足りないものがあっても、入社してから鍛えよう。そのような考え方だ。

求職者も新卒ならば多くの場合、「私の専門はこれで」などという確固たるものをまだ持っていない。「私の取り柄は素直で元気なところです」などと言う。このように求人側・求職者側双方のストライクゾーンが広いから剣山マッチングをしても当たる確率が高いのだ。点対点ではなく、面対面なのだ。

ところが40歳くらいになってくると、どちらもストライクゾーンが絞られてくる。多くの求職者は、自分の専門を狭い領域に特化しようとしがちになる。求人側も、座ってもらう席を決めてから求人をするようになる。だから、どんどんと針の先がお互いに細くなってしまって、当たりようがなくなる。ベテランになればなるほど、この傾向は強まる。

35歳転職限界説なるものの正体は実はこれだ。だからミドルが大手のエージェントに登録しても、なかなかマッチングしない。これは現在の人材マッチングの、構造的な欠陥と言える。

年齢が高くなると転職しにくくなるのは、頑固で使いにくくなるからだとか、給料が高くなるから求人側の会社が嫌がるなどと言うが、そんなステレオタイプの話ではない。ただただ、ピンポイント対ピンポイントのマッチングが難しくなるのだ。

40歳からの転職に有効な
2つの方法とは?

では、どうしたらいいのか。有効なやり方は少なくとも2つある。

1つは剣山の針が、思いもよらなかったところに当たる場合だ。これまでにも紹介してきたような応用事例だ。その人のスキル・技術が全く別の領域で活かされるような場合で、例えば生産管理のスキルがサービス業で活かされるといったケースである。

この場合、求人企業が気づいていなかったことでも、正鵠を射る提案ができればうまく転職できる可能性が生まれる。「剣山の針が秘孔を突く」といった感じだろうか。

また、こうしたケースでは、提案型のマッチングを支援してくれるエージェントないしは仲介者が必要になる。私たち社会人材学舎が行っている、「求人者のプレゼンを聞いてほしい」というやり方はまさしく提案型マッチングだ。

会社側に今現在求人の意志があるかどうかはあまり関係がない。ポストが用意されていなくてもいい。ジョブマッチングというよりも、経営への提言であったり、新規事業提案だったりなので、会社側としては提案されて初めてその重要性に気づくといった形になる。

もちろん、一発で提案が通るということはあまりない。まず、仮説の段階でプレゼンし、そこから企業側の本音を聞きだし、それに対して再度提案するといったステップを踏む。

私の経験から言うと、何回か提案を繰り返すうちに、提案そのものの内容よりも提案者である求職者の人となりがわかってきて、提案内容を超えて活躍が期待されるということが多いようだ。その意味では提案の形を借りた自分自身の売り込みと言ってもよいかもしれない。

もう1つのやり方は、すでに求人のある場合。多くの企業は自分たちの戦略を実行するために、あるスペックを持った人材を求める。しかし、必ずしも実行したい戦略と求める人材のスペックが一致しているとは限らない。

たとえばある会社が、経理のできる人間がほしいと言っていたとする。経理の担当者はすでにいるのに、なぜ経理のできる人間をさらに求めるのか? 話をよく聞くと、上場準備のためだという答えだった。そこでその会社の現在の人材の状況を調べてみたところ、本当に必要なのは経理ではなくIR=株主対策のできる人間だとわかる。

さらに上場準備のために、社内規定の整備ができる総務的スキルを持った人間こそが求めている人材だとわかった。欲しい人材は上場準備経験のある、管理全般に精通した人間だったのだ。

残念ながら、そのことをその会社はわかっていなかった。会社の表現上の意味するところと、本来必要とされる人材のズレを見抜いて、「そうであれば、こういう人間がいます」と本当にマッチする人間を紹介すべきなのだ。

これは機械的マッチングではなく、人材コンサルティングの領域だ。私は、RA(リクルートアドバイザー)と称する企業の採用を支援するエージェントの担当者の多くには、この人材コンサルティングの能力が欠けていると感じている。

クライアントの要望は聞くのだが、ただ単に要望を聞くだけで、真にクライアントが求めている人材を明らかにする能力にも熱意にも欠けている場合が多い。まず多くのRAは企業の戦略に関する理解がほとんどない。ただ単に“採用”という側面からしかクライアントを見ていない。人材の採用、特に中途採用は明らかにクライアントの戦略に対する深い理解があって初めて成り立つはずだ。

少し不遜に聞こえるかもしれないが、私はコンサルティング案件を受注する際、お客様は実は自分たちの解決すべき課題も、その解決の方向性も十分にはわかっていない、という前提に立って議論を進める。お客様と共に、本来解決すべき課題をともに発見する、といった姿勢で臨んでいる。単なる御用聞きでは、本当にお客様のご要望に応えることなどできないのだ。

いずれにしても、針と針を絶妙に合せていく必要があるわけで、そこまでの手間暇を大手のエージェントには期待できないと思ったほうがいい。それはビジネスとして非効率だからだ。

だから、大手だけに依存する転職は危険なのだ。特に35歳を越えたらすべてお任せの態度はやめたほうがいい。

余談ではあるが、私自身はRAスタッフの提案能力向上にぜひ関与したいと考えている。エージェントの求職者側に立つCA(キャリアアドバイザー)と求人企業側に立つRA(リクルートアドバイザー)の能力と意欲の向上を図ることにより、我が国の人材流動化は飛躍的に高まると考えているからだ。