総合まさかの「人材不足倒産」がやってくる!
どうやって余剰人員をリストラしようか……と頭をひねらなければならなかったのが遠い過去のようです。「人手不足」が多くの会社経営において、影響をきたすようになってきました。
余剰人員に悩んでいたのは昔の話
たとえば、
「自分がまいた種が、ここまで大変なことになるとは……助けてよ!」
と頭を抱えるのは、中堅のシステム会社を経営しているD社長。販売管理を中心にカスタマイズや導入支援、アフターサポートまで一連のサービスを提供しています。震災以降は売り上げが下がって苦労する時期が続きました。
ところが半年前に大手企業から大型の開発案件を受注。「これまでの苦労が報われた」と経営陣は大喜び。ただ、現場は冷めた反応です。
「会社にマイナスをもたらす受注としか思えない。社長はとんでもないことをやらかしてくれたものだ」
確かに、現状の人員だけで体制的に足りないのはわかっていたのですが、中途採用で何とかしのげる、だから受注してしまおうと経営側は判断しました。
実際、これまでは、そうした綱渡りの対応でも人員が確保できてきたのです。もちろん、エンジニア不足の状態は半年前にもありました。ただ、伝家の宝刀を抜けば、簡単に問題は解決したのです。つまり、人材採用系の会社に対する費用の割増を容認する特別キャンペーンを行えばよかったのです。具体的には
「エンジニアの急募キャンペーンを開催するので、よろしくお願いします」と人材会社に連絡し、
・紹介手数料の上乗せ
・求人サイトへの大型発注
など、人材会社の営業担当が大喜びするような依頼をかけるのです。通常よりも売り上げも利益も大幅にアップしますから、
「ありがとうございます。特別対応で何とかします」
となり、無事にエンジニアが確保できたでしょう。
このように、大胆なコストをかけた依頼が、人材サービス業界の相場をインフレ化させる懸念まで出ていました。ただ、それにも限度があったようです。今回のD社長の会社のケースでは、人材会社の担当営業からの反応は悪く、
「ご依頼に関して、期待にお答えするのは難しいかもしれません」
との回答がメールで返ってきたそうです。その後も連絡するものの、つれない返信が続きました。中には連絡しても返信が返ってこない営業担当もいたそうです。
人材不足倒産が現実化
札束を出せば人材確保は何とかなる……と勘違いをしていたのかもしれません。ただ、大型発注を納期までに開発できなければ、ペナルティが待っています。D社長も焦り出しました。そして、半年が経過。いったいどうするか?その大型案件は外部に再委託しての開発が契約上できなかったので、なんと、管理部門や経営層まで開発に関わることになりました。
「エンジニアの採用ができるまで、頑張って協力してくれ」
と社長は管理部門のメンバーに懇願しました。こうして、開発には門外漢の他部署の社員まで無理矢理動員して、全員でただただこなすだけの状況に。はたして、いつになったらエンジニアの採用ができるのか?社内に不満が蔓延します。
これは、まさに最近の人材不足を象徴するような“事件”かもしれません。ただ、そんな事象は「まだマシだ」と言う会社も少なくないかもしれません。
厚生労働省が発表している労働経済動向調査の労働者過不足DI(指数)が高止まりしています。業界・分野別では医療・福祉、運輸や地方の中小企業は高水準で「不足」との回答。こうした、人手不足で
・店舗の閉鎖
・工期が遅れ資金繰りに窮する
・ドライバー不足で採算が悪化
など、業績低迷にまで影響する事態に至り、「人材倒産」する会社が出てきました。運用資金が回らなくなって事業を続けられなくなるのが、普通の倒産だとすれば、人材が枯渇し事業が回らなくなる「人材倒産」というような事態に陥りかねない状況です。
帝国データバンクの発表によると、2015年上半期の倒産件数は6年連続の前年同期比減少。負債総額も3年連続で減少しました。ただし、倒産件数で求人難による倒産件数・負債総額は増加。これまでの人材倒産は代表者死亡や入院などによる「後継者難型」が中心だったので、アベノミクスが生み出した新たな課題として指摘されています。
実際には、人材倒産の件数が倒産件数全体に占めるシェアではわずかかもしれません。ただ、会社の人材が大きく流出しているのに新規採用がうまくできなかったり、内部の人材が多忙で疲弊しきっているような、倒産の予備軍のような会社を多く見かけます。
では、どうしたら人材不足から逃れられるでしょうか。その回答としてよく登場するのが「高齢者」「育児中の女性」の積極的な活用です。高齢者の雇用は技能伝承や生産性向上といった寄与が期待できます。女性の雇用は男性にない新たな視点からビジネスを考えることで新しいチャンスを生む可能性を秘めています。
ただ、高齢者も女性も確保できないときにはどうするか?ソフトバンクのPepperのようなロボットの導入で人手不足を解消するというようなことが、本格的に検討課題にのぼってくるかもしれません。ちなみにソフトバンクグループの孫正義代表は
「ロボット1台で3人分の仕事ができ、月給は1.7万円で済む」
と言っています。
人手不足による倒産をロボットで解決?!
低賃金で休日も不要なロボットの導入によって「モノ作り大国ニッポン」は復活できる。自動車が生まれてすでに200年。パソコンが生まれて30数年。次に生活環境を大きく変えるのがロボット。ロボットは1日24時間働けるため、1台のロボットで3人分の仕事をする。つまり、1000万台が稼働すれば3000万人分の労働人口に匹敵し、これで人手不足が解消できるというのです。
単純労働はロボットがやり、人間は高付加価値の仕事に集中でき、日本経済も復活すると、孫社長は希望に満ちたコメントを発しています。突拍子もない夢物語を語っているのではなく、今、日本企業が直面している人材倒産という事態を防ぐためにも、とても有効な施策かもしれません。
ちなみに日本政府は2015年度を「ロボット革命元年」と位置づけ、産業界へのロボットの普及を促進するようです。実際、2015~2019年度の5カ年計画「ロボット新戦略」を策定し、1次産業から3次産業まで広範にロボットの導入を目指していくとしています。
これまでも民間ベースでは、人手不足の対策としてさまざまなロボットを活用しています。大手企業の製造現場のみならず、老舗旅館で配膳するロボット、牛丼などのどんぶりに飯を盛るロボット、すしのシャリを高速で握るロボット、肉や野菜などの食材を串に刺すロボット、倉庫で荷物を搬送するロボットなど、一部の中小企業ではありますが、人手不足をロボットで解決しようという試みが始まっています。
人手不足が大きな課題になっている物流業界では荷物の仕分け、積み出しにロボットを活用する会社が増えています。さらに活用できる領域は拡大をしていくことでしょう。すると
「人手が足りなくなる前にロボットの手配を早急に進めるべし」
と人事部長が部下に指示する時代も訪れるかもしれません。まだまだ遠い話かもしれませんが、人手不足による倒産も、これで解消できるといいですね。