新卒採用活動後半戦を 「10の工夫」で乗り越えろ
ここにきて、新卒採用関連の記事をいたるところで見かけるようになりました。残念ながら、今年度のキーワードは「長期化」です。そもそも今回の就職活動時期の見直しは、期間短縮が狙いだったはず。しかし、どうやら現実には逆の現象が起きているようです。
今から取り組める!
使える採用の工夫あれこれ
昨年までなら、すでに就職活動を終えた学生たちが大勢キャンパスに戻ってきている時期ですが、今年は「就職活動の本番はまだまだこれから」という学生が大半。長期化の中で実態としての採用活動がなかなか見えてこない「アングラ化」も広がっているようです。
採用側でも「長期化」が起きています。とはいえ、もはや大掛かりな対策を打てる段階ではありません。いきなり奇をてらう新手法なども現実的ではないでしょう。
でも、ちょっとしたディティールをチューニングするだけで、採用活動のレベルは高まります。「お金をかけず、すぐにでも取り組める小ネタ集」といったところでしょうか。可能な範囲で工夫を凝らし、長期戦に臨みましょう。
1.採用担当者は応募者のメンター、応援団長になる
採用活動において、企業側の登場人物たちは2つの立場に分かれます。片方は選考官、もう片方は採用担当者です。当然、両者は同じ採用戦略のもと、同じ方向を向いていなければなりません。ただし、応募者である学生に対するスタンスは違っていて構いません。
つまり、採用担当者は選考官とは違う役割――応募者のメンターとしての役割を担えばよいのです。選考段階が後半になると、こうしたスタンスは効果的です。応募者が十分に力を発揮できるように最終面接の前にリラックスさせたり、面接官のタイプをちょっと伝えてあげたり、就活上の悩みを聞いてあげたり。あらゆる場面で学生を支え、関係性を強めることが、内定辞退を未然に防ぐうえでも重要なのです。
最悪、内定を出した応募者が他社に就職してしまった場合も、よい関係を築いていれば、「好きな会社」として彼らの心に残ることでしょう。これは特に消費財を扱う企業にとっては大切なポイントです。
2.学生は想像以上にフィードバックを求めている
私たちが思う以上に学生はフィードバックを求めています。彼ら彼女らは、不安な気持ちで就職活動を進めており、自分がどう捉えられたか、どう評価されたかをとても知りたがっています。選考の都度、フィードバックを伝えてあげることは、学生の成長にも寄与します。成長目線でフィードバックをすることで、劇的な成長を遂げる学生もいます。結果的に企業イメージの向上にもつながるでしょう。
面接官用の評価シートに、あらかじめフィードバックを面接官に記入してもらう欄をつくるのもよいでしょう。記入が負担になるようなら、選択式にする手もあります。いずれにしても、フィードバックはとってつけたような内容や、ポイントのぼけたものではなく、リアルな内容であることが大切です。
3.よい聞き手としての面接官
面接官は応募者の合否を判断する役割を担っています。ですから、応募者自身をよく理解し、ジャッジできるだけの情報を把握する必要があります。矢継ぎ早に鋭い質問をするのもいいですが、相手の本当の姿を引き出さなければ意味がありません。そのためには、よい質問者であるとともに、よい聞き手にならねばなりません。
4.志望動機を聞くことにはやっぱり意味がある
「どうせ、うちが第一志望の学生なんていないし」「志望動機なんか聞いても、通り一遍のことをいうだけだから」。志望動機の質問は採用面接の定番ですが、意味のなさを指摘する声も少なくありません。でも本当にそうなのでしょうか。
志望動機を聞くことによって、仕事へのスタンスを見ることができます。志望動機をきちんと語れる学生は、予習する力を持っている学生です。予習する力は、大切な仕事の基礎力の1つです。初めての顧客に訪問する際は、どこまでその会社のことを調べてきたかで、商談の成功率が左右されます。どんな予習が求められるか仮説を立て、それを適切に実行する、そんな力です。その人なりの見地でフィット感のある志望動機を語れるようであれば、「そこそこ仕事ができそうだ」と期待できます。
5.思っている以上に私たちは見られている
先日、自分が面接をした学生と話す機会があったのですが、「私が〇〇と答えた時に、少し目を落とされましたよね。失敗したかなぁと思ってあわてたのですが、やっぱりまずかったでしょうか」と聞かれました。私としては、そんな意識はまったくなく、第一、記憶にもありません。でも、彼ら彼女らはそれほど注意深く面接官の動きを見ており、気にしているのです。ですから面接ではすべての言動、所作に気を配らねばなりません。
見られているのは、面接官や採用担当者だけではありません。廊下ですれ違う社員、トイレで出会う社員、誰もが見られています。それだけに、平素からの立ち居振る舞いが問われます。
6.動きのある面接もいい
弊社の最終面接では時々、ホワイトボードに「いきいきチャート」を描いてもらいます。横軸を時間軸、縦軸を自分の「いきいき度」とし、「上がり下がりをグラフ化してもらうのです。たとえば「大学受験で失敗して『いきいき度』は最低に、でも充実したサークル活動を送ることで徐々に『いきいき度』が上がった」といったグラフです。チャートの屈折点を聞いていくと、応募者の大学生活が見て取れますし、どういう時、どういう行動をとるかも推察できます。
この手法の面白い点は、描き方にその人らしさが反映されるところです。几帳面に折れ線グラフを描く人、大雑把にフリーハンドで描く人、常にモチベーションが高い方が評価が上がる、と思うのがずっと最高値に張り付いたチャートを描く人、考え込んでなかなか描けない人、描いては消しを繰り返す人――多種多様です。質問への回答以上に、その人らしさを把握することができます。
7.質疑応答は何よりも大切
多くの面接では、学生からの質問は最後に一応受け付けるだけ。まるで、おまけのように扱われています。しかし、実は質問はとても大切です。その応募者の興味の対象がわかるからです。
面接官は質問に回答するだけでなく、逆質問をすることもできます。例えば、「〇〇という質問ですね。ちなみに、あなたはどう考えているのですか?」などです。学生が単に自分をアピールするため質問している場合はこの問に詰まります。また、本当に興味を持ったうえでの質問であれば、回答から応募者の価値観が伝わってきます。
相手の質問から「どうしてそれが気になるのですか」などと掘り下げる質問もよいでしょう。ここから結構、深い展開になることも少なくありません。ただ、選考要素に入れられると嫌なので、面接の場では本当に聞きたいことを質問しにくいという応募者はいるでしょう。その場合、控室など、面接前に採用担当者とコミュニケーションできる場をつくることも効果的です。
8.選考の場で面接のレベルを高める
多くの企業では面接シーズンの前に面接官教育を行っています。しかし、大切なのは実際の面接の場です。面接のレベルを高め、面接官による質のばらつきを減らすために、実際の選考の場でもいろいろな工夫ができます。
例えば、面接官が複数の場合、さまざまな組み合わせの面接官ペアを意図的につくると効果的です。面接がうまいなぁと思う面接官と、駆け出しの面接官をベアにするのです。このあたりは採用担当者の腕の見せどころでしょう。また、合否判定会議などには、できるだけたくさんの面接官に出席してもらいます。
一次面接官と最終面接官の双方が参加し、意見を総合して合否を決める手法もあります。最終面接官は気になったところをその場で一次面接官に確認するなどしてもよいでしょう。時には最終面接官が一次面接に入ってみると、一次面接官が評価をする際の気持ちや傾向が理解できます。
9.チーム意識で固める
「オワハラ」という新しい言葉ができました。長引く採用活動の中で、なかなか内定承諾をしない学生に対して、耐えきれずに採用担当者が就職活動を終わらせることを強要する行為です。気持ちはとてもよくわかるのですが、まったく意味のないことではないでしょうか。厳しくすれば厳しくするほど、相手は心を閉ざし、嘘をつき続けます。その結果、企業の側は、最終的に何人が入社するか読めなくなってしまいます。北風と太陽ではありませんが、強要するのではなく、じわりとその気にさせることが大切です。
代表的な手法は、内定者同士のネットワークを早期につくることでしょう。そして、そこに採用担当者が適切に介入していくことです。上手に「よい仲間意識」をつくることができれば、そこに帰属心理が生まれます。これは新入社員研修以降でもプラスに作用しますので、内定時期に意識すべきことといえます。
10.アルバイトに巻き込もう
内定を出した学生からよく聞かれる質問に「入社までに何をしておけばいいでしょうか」というものがあります。「じゃあ、もううちの会社に入っちゃう?」と言いたいところですが、そうも言えないので、自社でのアルバイトを薦める会社はよく見受けられます。
内定者アルバイトのメリットは、リアリティ・ショックを段階的に体験できること、社内の状況を早期に理解できるので入社後の“立ち上がり”が早いことなどです。内定辞退防止にも役立ちます。ただし、大学生活の最後をどうデザインするかは、とても大切なテーマなので、強要は好ましくありません。
日々のモヤモヤが
翌年の企画ネタになる!
どっぶりと採用の実務に浸っている超多忙のときこそ、じつは最もいい企画ネタが生まれるときでもあります。「こんな苦労はもう嫌だ」「もっとああやっておけばよかった」「あの会社やるな!負けた!」「この部分は仕込み不足だった」など、頭の中でいろいろな思い(=企画ネタ)がよぎっているのではないでしょうか。
問題意識の強い採用担当者は、採用シーズンのピーク時が終わったときには、すでに次年度の企画の骨子をつくりあげているものです。目の前のことに真剣に対峙しながらも、その先にある翌年を意識することが大切です。