総合就活に違和感…「アウトロー採用」 企業と本音トーク
みんなで黒いスーツを着て会話まで練習して臨む就職活動には、ついていけない。そんな既卒者を中心にした若者と企業を取り持つプログラムがある。「就活アウトロー採用」。普段着で時間をかけて向き合うスタイルは、画一的な採用からの脱却を目指す企業からも歓迎されている。
5月21日、大阪市内にあるビルの貸し会議室。Tシャツや短パン姿の「なんとなく世界をブラブラしてきた」若者たちが集まった。「就活アウトロー採用」の参加者たちだ。グループに分かれ、持ち寄ったお菓子を並べた机を囲んだフリートークに、参加企業の担当者が加わる。
「したくない生き方」について真剣に語り合ったり、「旅先でおいしかったもの」で盛り上がったり。結婚後も仲良くするコツを聞かれた経営者が「毎朝僕が起こすねん。っていうか、なんでこんな話せなあかんの」と言うと、座は笑いに包まれた。
企業は社名を、若者は出身大学を明かさないのが決まり。トークは延々約3時間続いた。企業担当者は30分ごとに席を移動し、最後に社名と事業内容を紹介した。
参加した27歳の男性は「多様性を受け入れてくれる企業の人が多いと感じた。楽しかった」と笑顔を見せた。高校の非常勤講師を1年務めてから海外44カ国を放浪した。帰国後、第二新卒(卒業後、数年内に転職や就職を志す人)向けの合同説明会に私服姿で行くと、「だいぶ浮いてた」という。
こうしたアウトローな若者と、多彩な人材を求める企業を結びつけるプログラムを手掛けるのは、NPO法人「キャリア解放区」(東京都)。昨年度に始めた。29歳までなら既卒でも中退でも可。エントリーシートは不要で、服装も自由だ。代表の納富順一代表(38)は「企業が上、学生が下という関係ではなく、居酒屋で隣り合って話すようなイメージ」を目指す。
本音を語ってもらうために、3月から若者だけで計5回集まった。「日本社会は生きづらいのか」などをテーマに、時にはお酒を飲みながら話し合い、関係を深めてから、企業関係者が加わる形をとった。
東京で実施した昨年は若者102人、中小企業を中心に24社が参加し、41人が採用された。「旅人編」と銘打った今年は東京と大阪で計89人、企業28社が参加している。28日現在、個別の面接やインターンを経て5人が内定を得たという。
■採用担当者「ここでは素直に語ってくれる」
屋外広告物などを扱う「gCストーリー」(東京都江東区)は、昨年に続く参加。採用担当の安部孝之さん(34)は「普通の就活で出会う学生は『旅から得たもの』を話す。ここでは、旅で感じたことを素直に語ってくれる。単純におもしろいんです」。
今春、アウトロー採用で同社に入社した男性(29)は「自分を偽らずにすむのが大きかった」と話す。専門学校を出てライターをしたり、介護の仕事をしながら通信制大学で学んだりしてきた。人材紹介会社から「企業の求めることを答えるように」と助言を受けたが、「無理して入っても続かないのに」と違和感を感じていた。今は営業担当。「誰かの『困った』を解決する仕事は楽しい」と話す。
昨年は外資系コンサル大手のアクセンチュアも参加し、4人を契約社員として採用した。坂本啓介シニア・マネジャー(38)は「求めている多様性が、ここにはあった」と話す。
昨年の参加者の中からは「コミュニケーション障害で面接がうまくいかない」という女性や、海外生活が長く「思ったことをはっきり言って集団面接で別室に移された」という男性も、採用された。
納富さんは「器用さばかりが評価されるが、既存の枠組みに入らない子の可能性を信じている。キャリアは偶然の積み重ね。自分をさらけ出し、意気投合したところで腹をくくって働けばいい」と話す。
「就活『後ろ倒し』の衝撃」の著者で、人材研究所社長の曽和利光さんは「既卒組は『就職をする気がない』と偏見を持たれ、中小企業は『大手よりひとつ落ちる』と思われている。両者が人と人として出会い、偏見が無いところからスタートするのが素晴らしい」と評価する。