派遣派遣法改正によるIT業界への影響
労働者派遣法の改正案を巡り、衆議院厚生労働委員会の理事懇談会が断続的に開かれていましたが、本日、衆議院厚生労働委員会で労働者派遣法改正案が可決されました。
そこで今回HRogでは、改正によって影響が大きいといわれているIT業界と派遣法の関係についてまとめてみました。
派遣法改正によって人材不足が懸念されるIT業界
みずほ銀行のシステム刷新やマイナンバー制度のシステム開発などの大型案件を背景にIT業界の技術者の人材不足が問題視されています。そのため、企業は即戦力としてスキルの高いエンジニアを求めているため、技術者の派遣労働者数は年々増加しています。
今回の改正ポイント
専門26業務の撤廃
これまで、専門性を必要としない一般業務については、最長3年までしか働くことができませんでした。一方で、ソフトウェア開発や秘書、通訳や財務処理等の専門的な知識が必須となる職種については、「専門26業務」として扱われ、派遣期間の制限は原則としてありませんでした。
今回の改正案では、この26業務が撤廃され、全ての業務で「派遣労働者個人単位の期間制限において、3年を上限」となります(無期雇用契約等の例外を除く)。
今回の改正は、3年ごとに労働者が新たな勤務先を探さなくてはならないデメリットがあります。そこで、「無期雇用」の契約を派遣会社と派遣労働者が結んでいる場合は、派遣期間の制限をしない法案になっています。現状では無期雇用の契約を結んでいる派遣労働者は全体の2割程度となっており、改正によって無期雇用が増えることが期待されます。
特定労働者派遣事業の撤廃
派遣事業には一般労働者派遣事業(以下、一般派遣事業)と、特定派遣事業(以下、特定派遣事業)の2種類が存在しますが、今回の改正案では特定派遣事業の廃止が予定されています。
特定IT業界の派遣は主に特定派遣事業タイプのもので、直接的な影響があると考えられています。
厚生労働省のデータによると、平成26年時点で一般労働者派遣事業の業務に従事した技術派遣労働者は44,119人であるのに対し、特定労働者派遣事業の業務に従事した技術派遣労働者は74,781人と約2倍の労働者が働いている事が分かります。
特定労働者派遣事業とは
常用雇用労働者のみを扱う労働者派遣事業です。労働者が派遣元に常に雇用されているため、一般労働者派遣事業と違って安定しています。そのため、厚生労働大臣へ届出を提出するのみで、派遣事業を営む事ができます。
しかし手続きが簡単なことから、届出を出している特定派遣事業の中には劣悪なものもあり、ブラック企業化が問題視されています。
一般労働者派遣事業とは
登録社員のみ、又は登録社員と常用社員の混在により労働者派遣を行なう事業です。
登録している労働者の場合、派遣先が決定した際に派遣会社との雇用契約が発生します。
この場合、常時雇用の特定労働者派遣事業とは違い、労働者に雇用の保証がないため厳しい要件を満たし、厚生労働大臣の許可を得ないと事業を開始することができません。
派遣法改正によるIT業界への影響
- 派遣事業から撤退する企業が増加する
特定派遣事業が廃止された場合、特定派遣事業者が派遣事業を続けるには一般派遣事業の許可を取得する必要があります。
一般派遣事業の許可を得るには、「基準資産額2,000万円×事業所数」、「現金・預金1,500万円×事業所数」、「基準資産額が負債総額の7分の1以上」、「管理責任者講習の受講義務」、「5年ごとの更新」等の厳しい条件があるため、許可を得られない事業者が多くあると予想されます。
そのような事業者は「準委任契約」を用いて、受け入れ会社に労働者を出向させることが予想されるため、偽装請負が増加する可能性が問題視されています。
また、一般派遣事業者がIT分野に、より介入してくることも予想されます。
- 派遣技術者が交代する事によるシステムの開発への支障
同一労働者が同一勤務先で働けるのが最長3年となるため、期間が終わる度に新たな派遣労働者を交代させなければならず、技術者がシステムの中身をわからないままの業務になる恐れや、技術者の習熟度が低下する恐れがあります。
改正をきっかけに
取引している特定派遣事業者・ITベンダーが一般派遣事業の許可を取得するのか、またはできるのか、確認を行ったうえで、正社員と派遣労働者の役割を明確に決めていく必要があります。
また、派遣事業者にとっては、無期雇用のIT技術者のニーズが高まることが予想されます。ただ、事業をつづける上で無期雇用はコストが上がるなどのリスクも考えられます。
そうした状況を踏まえ、無期雇用を増やしていくのか、3年縛りをキャリア開発の機会としてうまく利用していくのか、改正後の派遣業界の動向が気になる所です。



