女性雇用30年堂々巡り?女性管理職が増えないワケ 繰り返される「過去のトラウマ」
いつになれば、成果が出るのでしょうか。男性が大半を占める企業の管理職における男女「格差解消」のことです。
1986年に男女雇用機会均等法が施行されから約30年が経過しました。これは、職場における男女の差別を禁止し、募集・採用などで男女とも平等に扱うことを定めた法律です。当方にとっては就職活動をしていた時期と重なるため、より印象深いものがあります。確かにその後、採用面の表記などでは男女平等が前提となりましたが、入社後に管理職になる(なれる)女性は増えていません。
リクルートとの違いに愕然
女性管理職の登用に関して、厚生労働省は「ポジティブアクション(女性活躍推進)」と命名して企業の自主的な取り組みを促しています。HPを見ると、女性の管理職が増え、業績向上にも大きく寄与した個別企業の事例がいくつも紹介されています。
ただ、厚生労働省が2014年に発表した雇用均等基本調査によると、課長相当職以上(役員含む)に占める女性の割合は6.6%。これは2011年に比べ0.2ポイントダウンしています。さらに、部長相当職でも0.9ポイント減らし3.6%。依然、女性管理職は希少な存在であることと言えます。
かつて当方が勤務していたリクルートでは女性管理職が全体の2割近くいたので、こうした状況には愕然とするものがあります。もっと、女性管理職が増えてしかるべきでしょう。さもないと、グローバルにおける競争力はさらに低下。少子化の時代に管理職候補の不足が会社の成長を妨げるのも明らかです。
それへの危機感から、安倍政権の政府は数値目標を掲げて、これまで以上の前向きな姿勢を示し始めました。経済界に対し「指導的地位に女性が占める割合が2020年で30%」を要請。こうした女性の活躍推進の取り組みは、成長戦略の基本的な考え方に位置づけられ、進みつつありますが、とはいえそれは成果につながるのでしょうか。
ひとりだけ登用するのは簡単だが……
女性管理職をひとりだけ抜擢するのは簡単です。本社の広報・宣伝など女性らしさが生かせる部署で登用すればいい。いわゆるIR、PR、HR、CSRといった「R」のつく仕事です。ところが、社内で管理職を2~3割まで増やすとなると、実現にはそうとうな壁があります。そもそも、会社サイドが
「昇進意欲が低いので、管理職に登用しにくい」
など、女性管理職の登用にネガティブな意見の場合が多いのも実情です。
NTTデータ経営研究所の調査によれば、女性社員の約6割が「マネジメントをする立場ではなく、気楽な立場で仕事がしたい」と回答。約3割が「自分の知識や技術が生かせるスペシャリストとして力を発揮したい」と答えています。管理職になりたい女性社員はごくごくまれ。
当方が取材した会社でも、こうしたデータに近い志向が見られました。管理職になどなりたくないと言っているのに、世の中の流れで作為的に管理職を作り出すのはいかがなものか、と考えている会社も少なくありません。おまけに“過去のトラウマ”も多くの会社に残っているのです。
男女雇用機会均等法が施行されてから約30年。時流に乗るべきと女性管理職を登用して痛い目に遭った会社は少なくありません。取材した中堅広告代理店のD社は、10年前に女性社員から管理職への登用を推進。3年で15人を女性管理職に抜擢しましたが、その直後から大混乱が起きました。
「私が管理職になりたいと言ったことが、一度でもありましたでしょうか?」
と詰め寄り、辞退を申し出る女性社員。あるいは、激務である営業部門での管理職は無理だと分野を限定する人。また、年上の男性部下は勘弁してほしいと言い出すなど、周囲からすれば勝手と言われても仕方のない要望がいくつも出てきたのです。
その会社は周囲に理想(ロールモデル)となる女性管理職がいないのが原因ではないかと判断。会社としてバックアップするという姿勢を示すためにも、極力、女性たちの要望に応える形で管理職の仕事をしてもらえるよう環境整備をしました。
ところが、それからほんの2年以内で大半の女性管理職から「自分には無理」「気軽に仕事がしたい」と、一般社員への職種変更や退職の要望が出て、3年後には女性管理職はゼロに。
中には、一般社員として社内で貴重な人材が、管理職への登用をきっかけに退職してしまった……と後悔の念を口にする役員もいたようです。このような結果になれば、
「女性の活躍推進など当社では無理」
と女性管理職の登用も当面は凍結状態になるのは、致し方ないかもしれません。
“トラウマ”から抜け出すすべはあるのか?
このように、女性登用にトラウマのある会社は意外と多いのではないでしょうか。ただ、すべての会社で女性管理職の登用は無理なのでしょうか? ここからは、女性管理職を増やすためのヒントをみなさんと考えていきたいと思います。
男性は外で仕事をし、女性は家庭を支える……などと役割分業をステレオタイプに考える時代ではなくなりました。女性たちも必ずしも家庭にいる人生を望んではいません。NTTコム リサーチによると、「いつまで働きたいか」との質問に対して、「働けるうちはいつまでも働きたい」と回答した女性社員は男性と大きな差はありません。
ただ、管理職に登用されて、仕事に没頭する時期の働き方に障害があります。
そもそも、日本の女性の労働力率は「25~29歳」(77.2%)と「45~49歳」(75.7%)を左右のピークとし、「35~39歳」を底とするM字型カーブを描きます。結婚・出産期に当たる年代にがくんと低下し、育児が落ち着いた時期に再び上昇するのです。
このM字の底のタイミングこそ、管理職に登用されて、多忙な仕事を任されるタイミングです。自分の仕事だけなら、終われば「お先に失礼します」と早めの帰社も可能。ところが管理職になれば部下の指導や会議で、勤務時間を職場の都合に合わせなければなりません。管理職の仕事自体が嫌なわけではなく、そうした働き方が物理的に不可能であるために、避ける、断るという結果になるのではないでしょうか。
当方が取材した、調査会社勤務のSさん(既婚・女性)は育児が一段落するまで時短勤務で仕事をしました。現在は20代の時期と同じように残業もする通常勤務に戻しましたが、
「そもそも時短勤務を認めてもらえなければ、会社を辞めていました」
と語ってくれました。ちなみにSさんは40歳にして管理職になり、若手部下のマネジメントを担当。社内では頼れる姉さんと呼ばれ、貴重な存在となっています。
固辞するのは、職場環境にも要因がある
一方、広告代理店で営業職にあるDさん(既婚・女性)。社内で優秀な成績を収めており、上司から管理職への昇進を打診されましたが、固辞しました。
「将来的に出産・育児をすることを考えれば、勤務している職場で管理職を続けることは不可能です。だから、管理職になることをあきらめました」
と回答してくれました。ちなみに、もし残業ゼロの職場であればどう回答したか尋ねてみたところ、「それなら管理職になっていた」と本音を教えてくれました。
管理職になれないのは女性自身に理由があるだけでなく、職場環境にも大きな要因があったのです。女性の活躍推進と同様に、日本は長時間労働という問題を抱えています。勤務時間の長さが解消できないために、女性管理職が増えないという面があるのです。「管理職でも残業ゼロ」が実現できれば、女性を管理職登用できる可能性は、飛躍的に高まるかもしれません。