総合「OJTこそ人を育てる」は、日本企業の盲点だ 成功し、選ばれる人材になるための3つの方法
日経平均株価が15年ぶりに2万円の大台を回復したのに象徴されるように、日本企業の勢いが増してきています。国際的に活躍する企業は攻めの経営を鮮明に、つまりグローバル成長戦略の実行に向けてシフトアップしてきています。
しかし、ここで企業は大きな問題に直面しています。事業の成長を担う人材が圧倒的に足りないのです。海外拠点の幹部、M&A先の企業に送り込める人材、多くの部門や提携先など複雑な利害がからむプロジェクトの推進者、国内の営業部門の構造改革をする参謀人材などなど、成長戦略にとって必要な人材が足りません。
実はここに日本企業の落とし穴があったのだと思います。それは「人材は職場で上司が育てるもの」「OJTこそ人材育成」という思想です。
OJT中心の人材育成は時代遅れに
この思想は、日本が市場として成長し、さらに海外へは高品質の製品を輸出して成功を収めてきた時代にできた思想であり、確かに日本企業の強さを象徴するものでした。しかし、現在は生産拠点を海外に移すだけではもはや難しく、事業のサプライチェーン全体を新興国中心の成長市場に移していかなければなりません。つまり世界中のあらゆるところで「事業経営」をしなければならない時代です。
自前の経営資源だけでは各国の市場拡大と競争相手のスピードに追いつけないと悟った日本企業は、相次いで海外企業の買収に動きました。その結果、連結での財務的成長はできましたが、それは外国人が外国で稼ぎ、そのお金をさらに成長する海外に投資するというサイクルが回り始めただけともいえます。
会社はどんどん成長しているわけですが、日本を中心に働く日本人がそれに合わせて豊かになるわけではありません。社員にとって、「会社は成長しているが、自分が活躍できるフィールドが広がる気がしない。いつかチャンスが巡ってくるという実感がない」というのが素直な感覚ではないでしょうか。
今、企業の人事部は、必死になって社内からタレント人材、将来のリーダーとなるべき人材を発掘しようとしています。例えば売上高4兆円超、従業員数10万人超のある電気機器メーカーでは、重要ポストを担う候補人材を早く見出し、育成する「ファスト(速い)トラック」を構築中です。リストアップされた数十人のメンバー年齢は、最年少は20代後半、最年長が40歳でした。
「優秀であるがゆえにかえって異動しづらく、同じ部門で永らく『塩漬け』状態になっている人材はいないか?」「職場のしがらみで身動きが取れなくなっている人材はいないか?」を必死になって探しています。
ファストトラックでリーダーを探すだけではなく、ある領域の専門家、スペシャリスト人材を発掘したり、キャリア形成の面で先が見えない、という社員に対して、会社は上司とメンバー間で通常行われる目標、評価の面談だけではなく、「キャリア面談」制度を導入したり、キャリアカウンセリング室を新設したりする動きが活発です。
キャリアは人材がつくってきた総面積
キャリアという言葉は、ポストや職種のように誤解されがちですが、そもそも、経験、実績、能力、社内外の人脈、将来への希望、仕事や人間関係面での価値観など、その人材が作ってきたもの全体の総面積です。こうした本質的な意味でのキャリアを作っていくとなれば、自分が経てきた道を定期的に棚卸しして見える化したり、上司や同僚、先輩と対話することが必要になります。
欧米系のグローバル大企業はほぼ100%、「タレントマネジメントシステム」という人材発掘の仕組みを持っています。その人の「職歴」「教育履歴」「資格」「志向」「保有スキル」などをITシステムで一元管理されていて、社員本人にとっては希望する職種やポストに対して、自分はどんなスキルが不足しているかが見える状態になっています。
会社側は、今後必要となるポストの担当者や後継者になりうる「スキル」「志向」「経験」を持った人材を素早く、しかも地域や部門を超えて探しだすことができるようになっているのです。もはや、「AさんはB部長に気に入られている」といったつかみどころのない話ではなくなるのです。このような流れ、つまり人材を会社の「資産」として「見える化」する動きは間違いなくこれからの人事の主流になっていきます。
そんな中で、私達ひとり一人も意識すべきポイントが3つあります。
まず、自分のキャリア・アスピレーションを確立し、適切な機会をとらえて上司やその上の上司に伝えることです。アスピレーション(aspiration)という言葉は、熱望という意味です。単なる異動希望ではなく、自身のやりがいと事業や組織への貢献の方向性を示すのです。
これまでの日本企業では、異動は会社の都合、業務の割り当ては職場の都合、という傾向が強かったため、アスピレーションを表明することに気後れしているかもしれませんが、これからは強くアスピレーションを表明していないと、チャンスを得ることはできません。
普段から自分の経験や実績、周囲にも伝わるように整理して伝えること。面談では、自分の長期、短期両方のキャリア目標を熱く語るべきです。そうした姿勢は必ず周囲に伝わり、目に留まります。
「研修」は会社にとって人材発掘の場でもあります。そのことを意識していない人がとても多いように感じます。考えてみれば、普段は違う仕事をしている人が一堂に会している貴重な場です。会社にとっては人材を一気に観察できる数少ない場でもあるのです。
それなのに「この忙しい時に研修に呼ばれて迷惑だ」というような空気を出している人は、大変勿体ないことをしています。研修の場で目立つことは何も悪いことではなく、個人サイドからのアピール方法として実は大変強力なのです。
研修の中でいい意味で目立つポイントは、「とにかく発言すること」「目に力を込めること」「正論を語ること」「理想を語ること」です。職場のしがらみや嘆き節は飲み会だけにしておきましょう。
こんな人材は必ず講師の目にとまります。特に外部から招聘された講師はその人と初対面です。初対面の相手にインパクトを与える事、これはこれからのビジネスパーソンとしての必須スキルなのですから、臆することなく、そういう態度をもって参加すべきです。
サード・プレイス(第3の場所)とは、スターバックスコーヒーのビジネスコンセプトです。第1の場所は「家」、第2の場所が「職場」。スターバックスは第3の場所というわけです。そう聞くと、NPOへの参加や地域ボランティア、趣味の集まりなど、サード・プレイスをもっている人はたくさんいますが、できればサード・プレイスを社内にも持つべきです。
世界で最もグローバルリーダーを輩出しているといわれるGEでは、リーダーを見極める際に、本業以外にもう一つ本業とは全く異質な社内プロジェクトに参画させるそうです。
リーダーは変化に柔軟で多様性を活かせる人でなければ務まらない、そんな能力は本業以外の組織やチームに貢献するという機会によって開発される、という考え方です。自分の得にはならないことでも、自身の成長、関わる人へ貢献しようとする姿勢を見ているのです。個人にとってもそういう奉仕精神を磨くには絶好の機会です。
自社の中にサード・プレイスたる場所はきっとあるはずですから、ぜひ探して入ってみることをお薦めします。社内で普段遠い位置にいる人たちの中に形成されたその人の印象は、意外とチャンスに直結するものです。
「成功する人」は、煙たがられるほどうるさい
売上高3000億円超、従業員数約2万人のある電気機器メーカーで海外人事畑が長く、これまで数百人の日本人の海外異動を手掛けてきた方に、「海外で成功する人と失敗する人の差は何か?」と尋ねたところ、「成功する人に共通しているのは、多弁で、自分の意見を言う人。職場でどちらかというとうるさがられていたり、煙たがられていたりする人。失敗する人は生真面目でイエスマン」と教えてくれました。
これからはあらゆるビジネスがプロの世界になります。プロはアピールしてチャンスを得るのです。今、人事は過去にないほど真剣にアピールする人材を探しているのです。