総合創業経営者の部下として心得ておくべきこと
大手家具販売会社の“お家騒動”が話題になっているが、今回は、創業経営者の下で部下として仕える時、心得ておくべきことを紹介したい。今回、挙げた5つの心得は、私がここ20年ほど取材してきた経験から感じとっているものであり、確かなデータがあるわけではない。だが、いずれも多くの創業経営者がいる企業に当てはまることだ。ここでいう「創業経営者」とは、会社を創業してゼロから経営を始め、現在、社員数が数人から数百人以下までの規模の会社の社長を意味する。その経営者の下で働く部下は、少なくとも創業者について以下の5つのことを心得ておかないと、会社員人生をムダにし、トラブルに巻き込まれる可能性がある。新卒や中途の採用試験で会社を選ぶ際の参考にしてほしい。
1.超個性的である
会社の経営をゼロから始め、業績を伸ばしてきたということは、すさまじいエネルギーや情熱、タフネスさを持っている人が多い。そんな人物の、内に秘めた闘志や負けん気は、相当強いはずだ。ビジネスのセンスやビジネスモデルを作る発想などは、平々凡々とした会社員とは全く違う。いつの時代も「いつか会社を経営したい」と思う人はいるが、創業経営者として会社を立ち上げ、数年でも経営を維持できる人は少ない。ましてや、数年以内に業績を拡大し、10~30人と社員を増やしていく人はもっと少ない。
それだけに、成功している創業経営者には個性的な人が多い。部下として、その想像を超えるほど、個性的であることを心得ておきたい。もしかすると、部下たちを怒鳴りつけたり、当たり散らすようなことがあるかもしれない。しかし、それらも「創業経営者だから、ある程度は仕方がない」と割り切るべきだ。あまりにもパワハラが激しいようなら、退職することも考えたほうがいいかもしれない。事実、創業経営者が小さな会社(正社員が50名以下、年商が10~20億円以下)を経営している場合、20~30代の社員の離職率は、中堅企業や大企業よりはるかに高い。
2.“サラリーマン経営者”ではない
創業経営者とサラリーマン経営者の考え方や思想、生き方などは大きく異なる。双方の共通点をみつけるのが、難しいくらいだ。サラリーマン経営者は、通常、課長、部長、役員などを経て、社長に昇りつめた人たちだ。私が取材で接する限り、ほとんどのサラリーマン経営者の話す内容はまさに会社員であり、そつがない。常識的な回答が多く、悪くいえば、面白味がなく、没個性的だ。それに、多くの大企業の場合、サラリーマン経営者は数年以内に退任するケースが多い。その間に、多くの社員の記憶に残るような実績を残すことは少ない。
だが、創業経営者は、良くも悪くも個性的である。例えば、インタビューの時、タバコを吸い始めたり、携帯電話で取引先などと、大きな声で話し始める人もいる。名指しで、他社のことを激しく批判したり、自社の社員のことをバカ呼ばわりすることもある。もちろんこれらはけっして許されないことだろうが、取材中に、管理職を呼びつけて、私の目の前でビンタをした人もいる。一方で、亡くなった部下のことを思い、泣き始めた人もいた。他にも、部下に数万円のお金を貸す人もいた。これらがいいことなのか悪いことなのかはとておき、そもそもサラリーマン経営者とは考え方が大きく異なるということは、認識しておいたほうがいい。
3.じつは様々なハンディを抱えている
会社を創業する時は、資金や社員のレベルなどの面で、中堅企業や大企業に遅れをとっている場合がほとんどだ。会社の知名度は低く、業績も慢性的に不安定。常に、資金繰りや、取引先や社員への賃金の支払いなどを考えざるを得ない。金融機関からお金を借りる機会も大企業よりは多くなるだろう。当然、人材の確保についても苦労をする。会社のブランド力が弱く、求人広告などに多くのお金を使うことも難しい。ハンディが本当に多いのだ。
しかも、創業経営者は会社の株式などを大量に保有する場合がほとんどで、会社員では想像できないようなリスクを背負っている。こういう背景があると、ほとんどの経営者は少々のことでも過敏に反応し、短気になりやすい。だが、これもやむをえないように思う。また、きちんと稼ぐことができない社員や仕事を覚えることが遅い社員に対し、厳しい姿勢で臨むことも、仕方のないことだ。もちろん、これらすべてが創業経営者に該当することではないが、ひとつの傾向としてあるということを覚えておきたい。
4.常に孤独である
会社を創業する時に、共同で出資する役員がいる場合がある。これが「創業メンバー」といわれるものだが、数年以内に仲間割れや意見の相違から離れていくことが少なくない。会社の進んでいく方向性や事業戦略に始まり、組織の作り方、採用のあり方、資金繰りなど「創業メンバー」の考えや思いはバラバラになりやすい。中には、裁判などになることすらある。
理想をいうと、創業経営者が全社員をまとめていくべきなのだが、「1」「2」「3」を踏まえると、なかなか難しい。創業経営者はサラリーマン経営者ではないし、平々凡々とした会社員でもない。大きなハンディやリスクを常に抱え込んでいるのだ。じっくりと時間をかけて、みんなで意見を1つにまとめるような、スピード感のない仕事をしていると、会社の経営はいよいよ危なくなるだろう。創業経営者が自分の考えに従わない「創業メンバー」を追放することはよく起っており、結果として、孤独になりがちなのだ。
5.たくさんの苦労をしてきた過去を持つ
創業経営者を取材していると、その多くが一般社員のような「平和な日々」を送ってきたわけではないことに気づく。例えば、勤務先で上司らとぶつかった挙げ句、独立をしたり、リストラなどで辞めていかざるを得なかった人もいる。つまりは“不本意な退職”である。子どもや10代の多感な時期に、様々な事情によって恵まれない状況で育ち、お金や社会的な地位などに強い執着心を持つ人も少なくない。公にされないことが多いが、現在の家族との間で問題を抱え、裁判などをしている人もいる。会社員の中にもこういう人はいるだろうが、決して多数ではないだろう。
恵まれない過去や私生活は、創業経営者には“必要悪”なものかもしれない。一部から批判はあるが、大きなハンディを乗り越え、会社を経営しているのだから、普通の生き方や考えしかも持っていなければ、まず成功することなどない。創業経営者には、「かつての上司たちを見返してやる」とか、「今にみていろ!あっと言わせてやる」ぐらいの覚悟がないと、一定のペースで会社を成長させることはできなかったはずだ。
部下として大事なことは、創業経営者に会社員やサラリーマン経営者と同じものを一切、求めないこと。求めたところで、創業経営者は簡単に考えを変えることはしない。会社員の立場でみると、理解ができないことや怒りを覚えることが多いのかもしれない。だが、「うちの社長は、創業経営者で、個性的だ」と割り切ると、ストレスが多少減る。ただし、そのストレスが限度を超えそうなら、思い切って辞めたほうがいいかもしれない。激しいいじめやパワハラを受けるようなら、その職場に残る理由はない。そんな経営者とは、縁を切るべきだ。