総合なぜグーグルでは推薦した人が入社するとボーナスが出るか
片や小集団型組織で終身雇用。片やフラット型組織で成果主義。どこまでも対極的なトヨタとグーグルだが、共通点が1つある。働く社員たちがみな、仕事への誇りを持っていることだ。

「入社して1日目、最初に上司から、この部分に問題があるので、そこを改善してほしいといきなり言われました。そのときは、えっ、ちょっとそれは、とかなり驚きました」
こう語るのは、日本市場向けの検索機能の開発を担当しているソフトウェアエンジニアの大倉務氏。大倉氏は東京大学大学院出身の新卒採用。新卒でも日本企業のようなポテンシャル採用ではなく、即戦力採用がグーグル流だ。
グーグルの採用基準は知識、分析力、リーダーシップ、グーグルらしさ――の4つ。同社のアジアパシフィック・ピープルオペレーションヘッドのサラ・ロブ氏は前の3つをこう説明する。
「知識とは今までの経歴から判断し、物事を解析する力があるかどうかを評価基準にしたがって判断します。また、リーダーシップとは、管理する能力ではなく、与えられた責任以上の課題を目指し、それによって変革を起こすような影響力を行使し、自分の道を切り開いていくことを意味します」
最も重視しているのがグーグルらしさ。同社の人材像といってもよく、知識、経験、人脈が豊富な人、あらかじめ定まっていないキャリアパスを自ら切り開く力を持った人、同僚と協力しながらプロジェクトを遂行するうえで大事な謙虚さを示す。
採用されるにはこの4つの基準をクリアする必要があるが、審査は極めて厳格だ。「まず、リクルーターが採用候補者に関する様々なデータを用意する。採用のための会議を開催し、この人物ははたして自分たちが探している仕事にふさわしい適材の人材であるのか、つまり4つの基準をクリアしているのか客観的に判断しています」(サラ・ロブ氏)。
この仕組みは世界共通だ。製品開発本部長の徳生健太郎氏は「職位の異なる複数の人間が候補者にインタビューし、その評価をオンライン上で書き、その評価を見て会議で採用の可否を決定する。エンジニアは実際に仕事をやらせて評価しますし、プロジェクトマネージャーの場合は、過去の経験や戦略的な話をする。そのうえで同じ職種の世界中におけるグーグルの社員と比べて、ちゃんとものになるとなれば採用することになる」と語る。
もちろん新卒の採用プロセスも同じだ。サラ・ロブ氏は「高いスキルが求められる職責については経験者を優先するが、経験があまりない人にやってもらいたい仕事もたくさんあり、その仕事にふさわしい新卒の採用も積極的に行っている」と語る。

グーグルのリクルーターは多くの大学とコネクションを持っており、それを利用して学生と接触し、採用につなげる。採用ルートは大学だけではない。同社の社員自ら人材の獲得に動き、採用に結びついた場合は報償金が出る仕組みもある。
「社員が優秀な人材を獲得した場合、ボーナスが出る制度があります。金額はマーケットによって違うと思いますが、一般の社員自らリクルーティングを行っています」(徳生氏)
あらゆるツールを使い報償金まで出すというのは、それだけ優秀な人材を獲得したいという思いが強いからだ。
また、日本の新卒は大卒、大学院卒と学歴で一律の初任給であるが、グーグルは経験も加味して給与を決めている。サラ・ロブ氏は「大学卒や修士号など学位によっても給与は違うし、大学院に通いながら実務上の経験を積んでいる人もいる。学位と経験のレベルを考慮しながら決めている」と指摘する。
一律の給与ではなく、個人の能力に応じて支払う給与を決めるということは、優秀な人材を獲得する王道である。しかし、優秀であるからこそ、キャリアアップを目指して転職する人が多いのも事実だ。とくにIT業界の離職率は高く、日本では10%程度と言われる。だが、サラ・ロブ氏は「離職率は極めて低い。数字は言えないが、10%よりかなり低い」と胸を張る。