総合主要100社 ベースアップ検討大幅増
来月から春闘が本格化する前に、NHKが主要な企業100社を対象にアンケートを行った結果、賃上げを検討している企業は71社に上ることが分かりました。
このうち、基本給を一律に引き上げる「ベースアップ」を検討している企業の数は去年より大幅に増えています。
NHKは、今月中旬、主要な企業100社を対象に景気や賃金に関するアンケートを行い、すべての企業から回答を得ました。
まず、景気の現状について尋ねたところ、「回復している」が1社、「緩やかに回復している」が62社となった一方、「緩やかに悪化している」と「悪化している」は合わせて2社にとどまり、多くの企業が景気は回復傾向にあると見ていることが分かりました。
次に、何らかの形で賃上げを検討するかどうか尋ねたところ、「検討する」と答えたのは71社で、去年のこの時期に行った同様のアンケートと同じでした。
その理由を複数回答で尋ねたところ、「優秀な人材を確保するため」が37社と最も多く、「業績が回復しているから」が32社で続き、「他社の間で賃上げの動きが広がっているから」や「政府の賃上げ要請を受けて」などの回答が目立ちました。
さらに、賃上げの具体的な方法について複数回答で尋ねたところ、「定期昇給」が最も多く46社、次いで、「賞与・一時金の引き上げ」が25社となりました。
また、基本給を一律に引き上げる「ベースアップ」について検討している企業は23社となり、若手社員など特定層を対象にした「ベースアップ」を検討する企業は17社となりました。
去年は「ベースアップ」を検討すると答えた企業は9社だったことから、ことしは「ベースアップ」に積極的に取り組む企業が目立って増えていることが明らかになりました。
賃上げに動く証券会社
大手証券会社の「大和証券グループ」は新年度から原則として、国内すべての社員を対象に毎月の給与を平均で2%程度、引き上げる方針です。
国内すべての社員を対象にした賃金の引き上げは2年連続で、会社では堅調な業績を受けて、若手から管理職を含めたベテランまで幅広い層を対象に賃上げを実施することで、社員の意欲を高めるとともに優秀な人材の確保につなげたいとしています。
賃上げは原則として国内すべての社員、1万1000人余りが対象で、毎月の給与を平均で2%程度、金額にしておよそ1万円、引き上げる方向で検討しています。
20歳代の女性社員は「夫とおいしいものを食べに行く時間を増やしたいし、自分たちへのご褒美として、使いたい」と話していました。
また、20歳代の男性社員は「子どもが3か月前に生まれたので心強いです。基本給ベースでの賃上げは賞与と違って、一時的なものではないので、将来の生活設計もしやすくなると思います」と話していました。
大和証券グループの日比野隆司社長は「数年前とは様変わりして、失業率は低下し、求人倍率は非常に高い水準になっており、人材の獲得競争は、だんだんと激しさを増している。そうした状況のなかで、競争力の強化に向けた人材の確保やモチベーションのアップが賃上げの基本的なねらいだ」と話しています。
証券業界では、最大手の「野村証券」もことし4月から若手を中心に全体の30%程度にあたる社員を対象として毎月の給与を平均でおよそ2.3%引き上げることを決めています。
電機業界では
東芝は、ことしの春闘でベースアップも選択肢の1つとして賃上げを検討する方針です。
半導体や発電システムなどの事業が好調なことに加えて円安の効果もあり、ことし3月期の決算で本業のもうけを示す営業利益が過去最高を更新する見通しです。
先週、春闘の交渉課題を確認するため経営側の担当者が打ち合わせを行いました。
この中では、経済の好循環を続けるために賃金の引き上げを前向きに検討すべきではないかという意見が出ました。
ただ、この会社では去年、2000円のベースアップを実施したところ人件費の総額が50億円増えたということです。
このため、将来的に固定費が増えるベースアップには慎重にならざるをえないという指摘もありました。
東芝の牛尾文昭上席常務は「経済の好循環を継続させるためにも、個別企業ができる範囲で賃上げについては検討する必要があると思っている。ただ、ベースアップについては慎重に検討する必要がある」と話していました。
電機業界では、今年度の決算で過去最高益を更新する見通しを示している「日立製作所」も賃上げに前向きに取り組む方針ですが、賃金を一律に引き上げるベースアップについては慎重に検討する姿勢を示しています。
一方、今年度、過去最高益を更新する見通しを示している電子部品大手の「日本電産」はこの春にベースアップを実施する方針を明らかにし、具体的な方法を検討しています。
専門家「中小企業への広がり必要」
ことしの春闘について、日本総合研究所の山田久調査部長は、「大企業は、円安や原油価格の下落などで、業績のよいところが多く、賃上げの率が去年より上がる可能性がある。しかし、その一方で、国内市場を中心に展開している中小企業は、円安のメリットをあまり受けられていないところも多い」と指摘しました。
そのうえで、「デフレ脱却に向けて消費を盛り上げるためには、去年から変わり始めた賃上げのトレンドを持続させるとともに、大企業よりも数が多い中小企業の労働者にまで賃上げが広がっていくことが必要だ。そのために、中小企業からの仕入れ価格の値上げを大企業が受け入れるなど、中小企業が賃上げを行えるような取り組みが重要だ」と話していました。