「管理職募集、未経験者歓迎」求人って? 変貌する企業の組織体系

総合「管理職募集、未経験者歓迎」求人って? 変貌する企業の組織体系

一定の年齢に達していれば、管理職未経験でもOK?

「管理職にふさわしい年齢のメンバーが不足していて、困っています。どこかにそういう人がいらっしゃったら、ぜひ教えてください」

最近、ある企業の人事担当者に、こんな風に声をかけられたことがあり、私は驚きを隠せませんでした。管理職の経験がある人、というなら理解できます。そうではなく「管理職にふさわしい年齢」?

管理職という仕事に求められる能力は、ある程度の経験を積まないと身につかない、その結果として一定の年齢に達している人、というのは分かります。しかし逆に、ある年齢に達しているからといって、管理職に就くことができるというものではありません。

そのように話すと、その人事担当者も「もちろんそれは分かっています。でも、現場では管理職が足りなくて、火を吹いている状態。管理職経験者を採用することが難しくなっている現状だと、置いておくだけで重石のような存在になる、つまり、一定の年齢に達している人なら誰でもいいのです」とのこと。ウーン……私は唸ってしまいました。先週のコラムで「人が足りなくなる」と書きましたが(参考記事)、どうやら管理職も足りていない、という話を、今日は少し。

管理職を育成しなかったツケが回ってきて職場がゆがんでしまっている

別の企業の人事担当者はこんな風にボヤきます。

「時代時代という表現は大袈裟ですけれども、人事制度にも“はやり廃り”があります。成果主義を掲げて、与えられた目標を達成するために、仕事を細かくして、個人の役割を明確にした時代があったり、コンパクトな組織を目指したり、フラットな職場を標榜(ひょうぼう)したり……。部署の数や組織の形態も、その流れに沿って変わっていきます。結果として、管理職の数も増減するわけです」

ある年代は、典型的な日本企業といわれる年功序列の職場で、上司が部下を責任持って育てる、という風土で育まれている。しかし少し下の世代になると、その仕組みが取り壊されて、自分たちの仕事で手一杯。後輩を育てるという気風はゼロになった……こういう感じで、世代間においても断絶している傾向が見られます。「うちの会社もそうだ」と思う方もいるのではないでしょうか。

仕事の能力は、一定レベル(もしくはある程度の範囲)までは自分一人で身につけることができます。その結果、飛び抜けたハイパフォーマーが、ごく経験の浅い若手の中から登場することも珍しくありません。しかし、仕事はそれだけではできません。周囲と連携する、後輩の面倒を見る、部下を導く――そういう行為が必要のない職場で仕事をし続けてきた人は、当たり前ですが、そういう能力は身についていません。職場も「そういう人は不要、個人が自立性高く、当事者意識を持って仕事をしていれば、管理職などいらない」と決めてしまって、組織の構造に大きく手を入れればいいのですが、そこまでは思い切れないという企業が多いようです。

未来の管理職という意識で、入社してきた人材を育てていなかったから、結果的に足りなくなっている、というだけのことなのですが、現在問題に直面している人事の担当者は、当時そうやって育てていこう、組織を変えようと思い行動した当事者ではないのが、ある意味つらいところです。

誰が組織にとって必要な人材なのか? その見極めが始まる

一方、まったく違うアプローチをし始めている企業もあります。

「優れたパフォーマンスを発揮しているメンバーであっても、周囲との協調性がないという人がいます。その人は少なくとも、従来の管理職という立場に就けるイメージができません。そういう育成の仕方も無意味だと思うのでやるつもりもありません。一方で、そのハイパフォーマーが一人で仕事ができるのかというと、そうではない。周囲の助けが当たり前ですが必要です」

ある企業の人事担当者はこういって、職場の中での人のつながりを、図で書き、説明し始めました。そして、ある人に注目して、赤で丸く囲います。

「この人、個人のパフォーマンスは大したことがありません。落第とは言いませんが、まあ、普通です。しかし、この人の周囲の成績はすごく良い。この人が周囲のモチベーションを高めて、周囲のパフォーマンスを高めている可能性がある。いままで大事だと思っていなかった、もしくは、なんとなく肌感覚では理解していたことを、もう少しきちんと見極めなくてはならない時代に来ているのかも、と実感しています」

ay_sakata02.jpg職場の中の人のつながりに注目する企業が現れ始めている(写真はイメージです)

さらに現状の組織体系では、周囲を育成できない、つまりは管理職になれないハイパフォーマーが加齢していったときに報いる給与の仕組みもないし、パフォーマンスが低いけれども、組織にとってはとても大切な人に対しても、その重要性を反映する仕組みがないことも、頭の痛い課題だといいます。

ただし、少なくとも「いまの立場において、与えられた仕事ができる=優秀な人材である=昇進をさせて、管理職として処遇する」という図式はもう成立しなくなります。考えてみれば当たり前のことですが、最近やっと着手した、という企業が徐々に増えてきているようです。

ごく平凡なビジネスパーソンが生き残る術はあるのか?

働く個人の立場で考えてみると、職場は組織の都合でコロコロと変わる、それによって育成の方針もまったく違ったものになってしまう、結果として、ビジネスパーソンとして必要な資質を獲得する経験したりや教育を受けたりすることなく、ある部分が足りなくなっていたビジネスパーソンになってしまうという怖い話でもあります。とてつもないパフォーマンスを出せる人なら別ですが、多くの人は「どうしたらいいんだ?」という話になりそう。

打ち手としては、個人として磨ける能力は極限まで磨きこんでおくこと、そして、周囲との関係性を良好に保ち、一人で働いているのではなく、組織の一員として働いていると意識しながら行動をする、というくらいしかありません。でも、これもなかなか難しい。さらにそこには「職場風土」という、耳慣れた言葉が邪魔をするのです。この問題も個人ではどうすることもできないこと、にはなるのですが……続きは次週ということで。