総合会社が社員を「管理」することで、社員の働くモチベーションが向上する時代?
前回このコラムで“「企業が従業員の管理をする」、その「管理」に対する考え方が変わってきた”と最後に書きました(参考記事)。「管理」という言葉に抵抗を持つ人も少なくないと思います。辞書によれば、その意味は「組織を取りしきったり、施設をよい状態に維持したりすること」とあります。取りしきられるという言葉に、なにやら堅苦しく嫌な感じを持ってしまうのかもしれません。
しかし管理する立場(企業)からすると、文字通り「よい状態を維持する」必要があるのです。そのための手法が今年は少し変わりそうだ、という話を。
今まで多くの企業は組織を管理できていなかった?
「そんなことはないだろう」と思われるかもしれませんが、いままで多くの企業は、働く個人をうまく管理できていませんでした。もちろん何もしていなかったわけではなく、さまざまな数字を設定して、その数字をベースにいろいろなことを判断してきました。勤怠管理などは典型例ですし、業績評価などを細かく設定している企業などは、従業員の業務・業績管理ができないと昇格・昇進の管理もできません。なので、正しく言い直せば、多くの企業では「管理はしていたが、うまく活用できていなかった」のです。
例えば、ある企業が新卒を採用したとします。その採用基準は、いままでの従業員の活躍した度合いや、学歴を中心としたその経歴、身についていた能力などとひも付けて設定するのが理想的です。しかし、そもそも新卒採用後の従業員について、その振り返りをしている企業は、それほど多くありません。
最近でこそ、入社後3年目あたりまで追跡をしている、という企業も出てきていますが、ほとんどの企業はいわば「採ったら採りっぱなし」。採用時点では「採用基準に基づいて選考したデータ」が残るのですが、その後の活躍とひも付けられることがないため、結果的に管理しているデータが活用されることはないのです。
業績についても同様です。ある従業員が設定した目標に対して、どの程度できたかというデータは管理されています。しかし、どういう能力やスキルを持った従業員がその業績を上げているのか、ということまでは管理されていません。いや、データそのものを持っているケースは多いのですが、その関係性を整理した状態になっているという企業は、ほとんどないのが現状です。
したがって「どういう従業員が活躍するのか」ということは分からないまま。ある従業員が業績を上げた、もしくは上げなかった、ということは分かる。けれども、それ以上のことについてはお手上げ、ということなのです。
能力についてはまだあります。規模の小さな企業なら、従業員それぞれがどんなスキルを持っていて、どんなことが得意分野で、資格を持っているかどうかなどを相互に把握できています。が、ある程度のサイズ以上の企業になると、当然分からなくなる。あるプロジェクトが発足したとして、必要とされる能力がハッキリして、その能力を持っている人物をアサインする必要があるのに、社内で見つけられない(本当は社内にいるにもかかわらず)、というケースも。
人事部がデータベースとして持っている可能性はあるのですが、そのデータにアクセスできる人は限られる、もしくは、データベースそのものがアップデートされていなくて、結果的に使い物にならない……と、こういう事例は少なくありません。あなたの身の回りでもそうしたことが起きていませんか?
極限まで無駄を省くための「管理」が求められる
例えば、早期離職する人が「なぜ退職するのか」という原因が分かれば、企業はその人を採用する「無駄な行為」をしないでしょう。しかし今までは、退職する原因は、ケースバイケースだと(勝手に)思い込んでしまっていて、手を打ってこなかった。しかし、企業の中の多くの部分が可視化できれば、その原因が見えるかもしれません。
例えば、採用時の広告のクリエイティブと早期離職には、関係があるかもしれない。上司のタイプによって、その従業員の学歴によって、配属された職場の人間関係によって……理由はいくつも考えられるはずです。そういうデータをすべて取って整理することによって、早期退職が発生した「意外な理由」が見えてくる可能性は高いのです。
職場にストレスを感じてメンタルヘルスが不調になり、結果的に働けなくなる人たちも、その従業員個人と周囲の数人の関係に原因を求めてしまうのは簡単ですが、もっと別の要因があるかもしれない。必要なスキルを備えた人を採用して配属したはずなのに、期待するパフォーマンスを発揮しないというケースでも、その従業員に能力がなかったという以外の原因も考えられます。しかし、いまの管理の仕組みでは、その原因がなかなか見つけ出せない。
数多くのデータを集めて、企業という組織がどのようになっているのかを可視化することで、その組織に向いていない人は採用しない、採用した人を有効に活用する適材適所な配属ができる、結果として無駄を極限まで省くことができる、そんな可能性がかいま見えるのです。
新しい「管理」の形で、個人が幸せに働ける時代が来るかもしれない
「自分には能力があるのに、組織がうまく活用してくれない」という従業員が抱えているジレンマは、企業には分かりません。上司に訴えたとしても、現状、それに対処する仕組みはないですし、訴えたところで「今の場所で頑張れ」という、使い古されたフレーズの励ましが返ってくるのが関の山。今いる場所で、与えられた役割を全力で果たすことももちろん大切ですが、企業サイドから見れば、文字通り宝の持ち腐れですし、従業員にしてみればモチベーションが維持できない可能性が低くありません。
今いる組織に順応できない場合でも、その従業員に問題があるとは必ずしも限らない。しかし組織内の人のつながりや、相性が可視化され、管理されている状態だと「すべての人と仲良くするのも仕事のうちだ」という、現実には難しいことを我慢しなくて済む……そんな可能性も出てきます。「相性」という言葉があるくらいですから、その組織の中で相性の良い組み合わせを探し出し、最大限の能力を発揮できる環境を、企業は整えるために管理する――という考えも出てくるでしょう。
企業で行われている研修も、その効果が厳密に測定されるようになったら、慣習として実施されていたけれども、意味のないものはなくなるでしょうし、評価にしても、上司の評価を評価する(評価者が正しい評価をしているのかというテストは、もうすでに存在します)仕組みがきちんと行き届けば、不公平感はなくなり、働くモチベーションは向上するかもしれません。
まあ、すべてが上手くいくとはとても思えませんし、組織の中でデータを取る、可視化するという仕組みがシンプルにならないと、働く人の負担が増えて本末転倒になりそうです。しかし「管理」という一見ネガティブな言葉が、2015年に”会社のオキテ”を新しくするキーワードになるだろう。そう私は思っています。

