総合2015年の国内IT市場を揺るがす3つの動き
<1>「第3のプラットフォーム」の浸透はこれからが本番
2015年の国内IT市場はどう動くか。
1つ目は、クラウド、モバイル、ビッグデータとアナリティクス、ソーシャル技術といった4分野の主要技術で形成される「第3のプラットフォーム」をめぐる動きだ。2014年に引き続いて2015年も、この動きは国内IT市場の最大の関心事となりそうだ。
この言葉を提唱したIDCが先頃発表した2015年の国内IT市場予測リポートでは、「第3のプラットフォームはIT産業の枠を超え、全産業において企業のイノベーションと市場拡大を支えるビジネスプラットフォームへと進化を続ける」と明言している。
同リポートによると、2015年は、これまでのクライアント/サーバシステムによる「第2のプラットフォーム」市場が前年比3.9%減少するのに対し、第3のプラットフォーム市場は同4.6%増加するとしている。
まさに時代の節目を感じさせる増減だ。一方で、第3のプラットフォームの中でも要となるクラウドについて、IDCが別の調査で「国内企業のIT投資におけるクラウド比率は、2016~2017年に1割を超える」との推定を示している。これは何を意味しているのか。
「新規商談ではクラウド化の話が必ず出るようになってきた」(ITベンダー首脳)との声も少なくないが、取材を重ねて得た筆者の見立てもIDCの推定と同様に、国内IT市場のクラウド比率の現状はまだ1割未満といったところだ。
ただ、注目すべきは、国内IT市場においてクラウドをはじめとした第3のプラットフォームに関連する分野の伸び率が高いことだ。とりわけ要となるクラウドの“普及率”が現状で1割未満ということは、これからのポテンシャルの大きさを感じずにいられない。そう考えると、企業に第3のプラットフォームが浸透していくのは、まさしくこれからが本番なのではないだろうか。
<2>大規模案件が集中し、IT人材不足が一層深刻に
2つ目は、IT人材不足が一層深刻になるとみられることだ。とりわけ企業の情報システムを開発するSE(システムエンジニア)やプロジェクトマネージャが足りない。理由は、数千億円規模の大規模システム開発案件が複数、2015年にピークを迎えるからだ。
まず、「社会保障と税の共通番号制度(マイナンバー制度)」が2016年1月に始まるのにともない、2015年は全国の地方自治体や政府機関のシステム改修が追い込みを迎える。銀行預金や医療に関する情報もマイナンバーに紐付けられる動きがある。さらに企業も従業員の給与支払いなどのシステムを改修しなければならない。
日本郵政グループは2014年度から2016年度までに4900億円を投じてシステムを刷新する計画で、ピーク時には1万人の開発要員が必要とされる。また、みずほ銀行は2016年12月までに勘定系システムを刷新する。投資規模は3000億円以上で、ピーク時には8000人規模の開発体制をとる構え。2017年からの切り替えに先駆け、2015年は人手のかかる開発とテストの作業が続く見込みだ。
さらに、2016年4月には「電力の小売りが全面自由化」される予定だ。参入を表明している新電力会社は、電気料金の計算や顧客管理などのシステムが必要になる。電力会社から送配電部門を切り離す「発送電分離」など電力改革に伴うIT需要は1兆円に達するとも見られている。
こうした大規模案件の集中に対し、ITベンダー大手各社はグループ会社を結集するなどの対策を急いでいるが、「2015年は手一杯で、新規案件に対応できない可能性がある」(大手ベンダー幹部)との声も聞こえる。こうなると、1つ目の動きに挙げた第3のプラットフォームへの対応にも影響を及ぼしそうだ。
IT業界ではこの人材不足を「ITの2015年問題」ととらえている。ビジネスとしては“うれしい悲鳴”だが、対応できなければ社会問題になる。事はかなり切迫しているようだ。さらに一連の大規模案件に対応した後の反動も懸念されており、国内IT市場の今後の動きとして注視しておく必要がありそうだ。
<3>「Windows Server 2003」サポート終了と経営革新
3つ目は、マイクロソフトのサーバOS「Windows Server 2003」のサポートが2015年7月15日に終了することをめぐる動きだ。サポートが終了すると、セキュリティ更新プログラムが提供されなくなり、セキュリティ上、非常に危険な状態となることから、同OSを搭載したサーバを使用中のユーザー企業は新しい環境へ移行する必要がある。同OSはとくに中堅・中小規模の企業システムに広く利用されていることから、2015年の国内IT市場をめぐる動きとしても大きな関心事である。
IDCの調査によると、同OSを搭載したサーバは2014年末時点で約21万台が国内で稼働中。これは現在国内で稼働中の全PCサーバの8.8%を占めるという。サポート終了までにこの台数を極力減らさないと、相当数の企業システムの安全性が脅かされることになる。
注意すべきなのは、新しい環境への移行にはそれなりに時間がかかることをあらかじめふまえておかなければいけない点だ。移行作業には数カ月から、場合によっては1年を要することもある。その意味では、まさしくタイムリミットが迫っている喫緊の課題である。
ただ、ユーザー企業にとっては、この機会が全社的なIT刷新の好機にもなり得る。移行先となる新しい環境として、これまでのオンプレミス環境だけでなく、さまざまなクラウド環境を選択できるからだ。移行先は柔軟に組み合わせ可能なので、あとでIT面での再調整が必要になっても対応できる。
肝心なのは、こうしたIT刷新を機に、企業としてビジネスやマネジメントにITをどう活用していくかをしっかりと見直す機会にすることだ。
すなわち、今回の移行を「経営革新の好機」ととらえるのである。ITベンダーもユーザー企業に、ぜひそうした経営革新の提案を行ってもらいたい。そうすれば、この動きは中堅・中小企業にとって大いに価値のあるものになるはずである。
