「内定倍率100倍超」という、しょっぱい現実

新卒「内定倍率100倍超」という、しょっぱい現実

大学3年生に取材すると、「先輩は内定をいくつももらっていたので、自分も何とかなるだろう」「3月から説明会に出席すればいい」といった発言を聞くことが多い。

しかし、本当に3年生は容易に内定を取れるのだろうか。人気企業には1万人以上の本エントリーがある。より好みしなければ就職できるだろが、志望企業に入社するのは難しいはずだ。リクルートワークス研究所や就職四季報のデータを基に2016年新卒採用(現3年生)の現実を展望する。

新卒がダメなら中途採用を

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リクルートワークス研究所が民間企業の2016年3月卒の採用見通しを発表した。同研究所の調査によると、2016年卒対象の大学生・大学院生の新卒採用見通しは、「増える」が14.0%、「減る」が5.3%と、「増える」が「減る」を上回った(+8.7ポイント)。2015年卒(+7.8%ポイント)に引き続き、大学生・大学院生の新卒採用数は増加する見通しだ。

業種別に見ると、「減る」が「増える」を上回るのは医薬化粧品業界のみ。薬価引き下げやジェネリック医薬品の利用拡大によって、製薬関連企業は業績が伸び悩むことから採用意欲はあまり高くない。しかし、その他の業界は前年よりも採用数を増やす方針だ。

従業員規模別に見ると、どの従業員規模においても「増える」が「減る」を上回っている。特に従業員の多い大企業の採用意欲が強い。大企業志向の強い就活生に有利な環境だ。

新卒だけでは必要な人員を確保できないことから、中途採用に注力する企業も増えている。2015年度の中途採用見通しは、「増える」が13.0%、「減る」が4.0%と、「増える」が「減る」を上回る(+9.0ポイント)。2014年度(+5.9%ポイント)より増加傾向が一段と高まっていることがわかる。

さらに、大卒を採用できない分の代替として高校生の採用を強化する企業も出てきた。2016年卒対象の高校生の新卒採用見通しは、「増える」(8.4%)が「減る」(2.6%)を上回った(+5.8ポイント)。2015年卒に引き続き、「増える」が「減る」を上回っている。

高卒採用を業種別に見ると前年は製造業と金融業で「減る」が「増える」を上回っていたが、2016年卒ではすべての業種で「増える」が「減る」を上回った。特に、建設業(+8.3ポイント)、運輸(+8.6ポイント)小売業界(+11.6ポイント)、飲食サービス(+20.8ポイント)など人手不足が深刻な業界の採用意欲が強いことがわかる。

人手不足でも採用基準は下げない

こうしたデータを見ていると、2016年3月卒の大卒の就職は簡単そうな感じがするが、はたしてどうなのか。採用見通し調査をまとめたリクルートワークス研究所の戸田淳仁研究員は「採用意欲は強いが基準を下げてまで採用する企業は少ない」という。

バブル期のようにとにかく人数を確保しようとする企業はほとんどない。採用がうまくいかないからといって、採用開始時に定めた採用基準を引き下げることはないのだ。すべての学生の就職が楽になるのではなく、一部の学生に内定が集中し、その他の学生は内定獲得に苦労するという展開になるのではないか。

「今年の3年生はのんびりしすぎている」。多くの大学のキャリアセンター職員が焦りを感じているが、肝心の学生の動きは鈍い。各大学では10月以降、就職関連のさまざまなセミナーを開催しているが学生の出席率が低い。出席率が前年の50%程度というセミナーも珍しくない。

数年前の就職氷河期は企業の採用意欲が低く、内定が取れないというニュース一色だった。しかし、最近は状況が一変して、売り手市場の中で企業が採用に苦労するニュースばかり。さらに、現3年生から就活スケジュールが3カ月後ろ倒しになったことで、「3月から始めればいい」とのんびりしている学生が多い。

リクルートワークス研究所の調査結果などを見ればわかるように、リーマンショックから数年間の就職氷河期に比べれば就職しやすいのは事実。しかし、誰でも簡単に希望通りに就職できるわけではない。

明治2750倍、カゴメ308倍、東レ213倍

就職四季報では本エントリー(正式応募)数と内定者数を基に内定倍率を算出している。プレエントリーではなく本エントリーということは、学生が本気で入社を希望し、苦労してエントリーシートを書き上げたということ。プレエントリーのように、とりあえず出しておくといったものではない。

学生には就職四季報の掲載されている内定倍率を必ず見ていただきたい。のんびりした学生は目が覚めることだろう。2015年新卒採用において、倍率が一番高いのは明治で2750倍。事務系の採用4人に対して約1万1000人が応募した。明治は別格としても、数十倍というにはザラにあり、100倍を超える企業も珍しくない。

就職四季報総合版には「就職人気企業ランキング300社」が掲載されており、その上位企業の倍率を見ると、丸紅82倍、カゴメ308倍、味の素267倍、森永乳業533倍、東レ213倍などとなっている。

現3年生にとって、これから始まる就活は生涯初の過酷で厳しい試験と言ってもいいのではないか。最近の大学生の約半数は附属高校からの推薦やAO入試、指定校推薦など通常の筆記試験を経ないで入学している。ここ一発の真剣勝負の経験が少ない。そして、その真剣勝負に負けたときのダメージに慣れていない。

就活とは落ちるのが当たり前の過酷な試験。すでに12月の中旬となり、のんびりしているヒマはない。業界・企業研究やSPI対策には今からでも取りかかることができる。大学や生協主催の就職セミナーに参加するのも簡単だ。今すぐ行動を開始しよう。