総合「仕事はどう?」―職場に広がる「パルスサーベイ」
米ボストンの通信関連会社メティス・コミュニケーションズは最近、従業員のレベッカ・ジョイナーさんにある質問を投げかけた。上司はきちんと自分の話を聞いているか(ジョイナーさんの答えはイエス)。先週、何をやり遂げたことを誇りに思うか(マーケティング・プロジェクトの企画立案に関わった)。子供の頃、恥ずかしい髪型にしたことがあるか(1987年にパーマで失敗)。
こうした質問は週に3回、ジョイナーさんや他の同僚たちのパソコン画面に現れる。米企業では多くの従業員にとって、上司から定期的に送られてくるこうした簡易調査は現代のオフィスライフの特徴になった。
頻繁に情報がアップデートされ、即座にフィードバックが得られるこの時代にあって、いわゆる「パルスサーベイ(意識調査)」は職場でも流行しつつある。企業経営者によると、毎月もしくは毎週、あるいは毎日行われる調査――質問が1回に1項目だけのこともある――は従業員が実際にどう感じているかに関するデータを得ることができ、問題が悪化する前にそれを捉えることが可能になるという。頻繁に調査を行えば、年に一度の従業員調査が不要になる場合もあると経営者は指摘する。グーグルなどはどちらの調査も行っている。
この傾向は仕事をとりまく環境が「データ重視」の方向に移行する、より大きな潮流の一環だ。この流れの中では、企業戦略といった大きな問題から、社内ピザパーティでどのトッピングを選ぶかといった些細な問題にいたるまで、管理職はデータを活用して決断することが期待されている。今ではモバイル用のアプリ(応用ソフト)や、より迅速な分析法の登場で、中小企業でさえも洗練された調査方法を導入できるようになった。
パルスサーベイに必要な費用は従業員1人当たり月50ドル(約6000円)程度だ。よく知られている調査会社のギャロップや新興企業の「ノウユアカンパニー・ドット・コム」などは同15ドル~100ドルでサービスを提供している。
米人材マネジメント協会(SHRM)のデータによると、従業員の意識調査を行っている企業は8割に上る。年一度の実施というのがほとんどだが、質問事項が多くなり、時間がかかる年次調査に愛想を尽かす従業員が増えているようだ。また、人材コンサルティングを手がけるエーオンヒューイットが欧州企業を対象に2011年に実施した調査によると、自分たちの意識調査の結果が実際に何らかの対応につながると回答した従業員は20%を下回った。
短くて簡単な意識調査が役立つかどうかは不明だ。だが、管理職は「プリンスとマイケル・ジャクソン」のどちらを選ぶかといった質問は従業員同士の仲間意識を高めると主張する。また従業員は、自分たちのキャリアをリスクにさらすことなしに問題提起することを好むと話す。
メティスのジョイナーさんは、この簡単な調査が社内の対話の発端となり、何らかの対応につながったと話す。例えば、職場の椅子に満足しているかどうかを聞かれたときには、2週間以内に立ったままで使えるデスクが2卓ほど職場に設置されたと言う。
アイオワ大学のビジネススクールで従業員エンゲージメントを研究するクロフォード教授は、あまりに多くの質問が会社側から送られてくると、従業員は調査疲れを感じるかもしれないうえ、自分たちの素早いフィードバックに対してタイムリーに対応が得られないと幻滅を覚えるかもしれないと指摘する。こうした調査は「対話を始めるきっかけであり、これ自体が最も重要なわけではない」と言う。