成長戦略、雇用・女性活用で対決 規制緩和は温度差

総合成長戦略、雇用・女性活用で対決 規制緩和は温度差

衆院選が2日公示され、安倍政権の経済政策「アベノミクス」を継続するか転換するかを軸に各党の政策論争は本番に入った。景気の足踏みが続く日本経済。成長戦略、税財政、社会保障、エネルギー、安全保障など日本を取り巻く重要課題に政治は確かな処方箋を提示できるか。与野党ともに問われている。

デフレから脱却して経済は成長し、皆さんの生活が豊かになる。これがアベノミクスだ」。公示日の2日、被災地の福島県相馬市で首相は第一声を放った。衆院選では企業収益を伸ばして雇用・所得を増やす経済成長戦略を争点の柱に打ち立てた。

政府統計では企業などで働く雇用者の数は1年10カ月続けて前年実績を上回り、1人あたり賃金も8カ月続けて増えている。安倍政権はこうした2年間の実績をもとに経済政策の継続を訴える。

 

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自民党は企業の稼ぐ力を高めることが、雇用の拡大や賃上げの起点になるとの立場だ。内閣府の試算では日本経済の巡航速度にあたる潜在成長率は0.6%にとどまる。この成長力を引き上げ、賃上げという形で家計が果実を受け取れるようにする。法人実効税率を数年で20%台まで下げることが政策の柱となる。

ただ民主党の海江田万里代表は2日、福島県いわき市で「安倍さんは景気が良くなったと言うが本当に一握りの人たちの話だ」と批判した。7~9月に増えた雇用者のうち8割は非正規社員。賃金の伸びは物価に追いつかず、購買力にあたる「実質賃金」は1年4カ月続けて前年割れだ。

 

成長戦略をめぐる各党の公約
自 民 「3本の矢」を強力に推進し、経済の好循環をさらに拡大
民 主 国民生活に十分留意した柔軟な金融政策を日銀に求める
維 新 新規参入規制の撤廃・緩和など競争政策3点セットを徹底
公 明 簡素な給付措置拡大で中低所得世帯を支援
次世代 農業や医療への新規参入促進
共 産 大企業の内部留保を活用し、大幅賃上げと安定した雇用増
生 活 子育て応援券や高校無償化で可処分所得増
社 民 労働法制改悪を阻止し労働者保護ルールを強化
改 革 法人実効税率を25%まで引き下げ

民主党や生活の党は、非正規社員の待遇改善を目指して「同一労働・同一賃金」の法制化を訴える。正規雇用の拡大を重視し、社民党や共産党とともに安倍政権が進める労働規制の緩和には反対の立場だ。維新の党は年功給を廃止して職務給に変え、同一労働・同一賃金を目指すと主張する。

自民党も企業優遇との批判をかわすため「正社員実現加速プロジェクト」として、勤務地や時間が限られる「限定正社員」の導入企業への助成などを検討する。ただ共産党は「限定正社員は解雇しやすく低賃金に押さえ込むだけ」と批判する。

成長力の底上げには規制を緩めて企業活動を後押しする必要がある。もっとも各党とも具体策には乏しい。自民は「2年間で農業・雇用・医療・エネルギーなどのあらゆる岩盤規制を打ち抜く」としたものの、焦点の農協改革について首相は「業界団体を説得して了解してもらいながら前に進めていきたい」と慎重に言葉を選ぶ。

維新の党の江田憲司共同代表は2日、横浜市で「自民党の農政では成長産業にならない」と批判した。次世代の党は企業による医療・農業の新規参入規制を原則撤廃すると打ち出した。新党改革は法人実効税率を25%まで下げると踏み込んだ。

各党が力を入れるのは女性の活動支援だ。産業界には人手不足感があり、女性の労働参加が経済成長に欠かせない。子育て期にあたる30~34歳の女性の就業率は10月時点で67%と、25~29歳に比べて9.1ポイントも低いままだ。女性が働きながら子育てできる環境作りが急務だ。

公明は子育てや介護と仕事の両立を支援する制度を充実するとした。就学前3年間の幼児教育を無償化すると提案。自民、民主など各党ともに、子育て期の負担を和らげ、希望する数の子供を持てるように配慮する。女性の働く意欲をそぐとされる個人所得税の配偶者控除見直しなどは、保守層の反発を恐れてためらいがちだ。自民党も「働き方に中立的な税制・社会保障制度等について総合的に検討」と書きぶりは抽象的だ。

前回衆院選で議論となった金融政策は、焦点が脱デフレから円安の評価に移った。民主は輸入資材の値上がりに苦しむ中小企業を念頭に「国民生活に十分留意した柔軟な金融政策」を主張し、足元の金融緩和は行き過ぎとする。しかし「物価安定目標2%の早期達成に向け、大胆な金融政策を引き続き推進」とした自民への分かりやすい対案にはなっていない。

成長戦略が争点となるものの、与野党ともに今回の公約では数値目標や施策の裏付けと考える財源を明確に示していない。日本総合研究所の湯元健治副理事長は「美辞麗句が並び、実行できるかどうかの評価が難しい」と厳しく指摘する。