労働時間、規制緩和なら…アイデア型企業に追い風

総合労働時間、規制緩和なら…アイデア型企業に追い風

働く時間の長さでなく成果で賃金を払う「ホワイトカラー・エグゼンプション」導入をはじめとする労働時間の規制緩和をテーマに、厚生労働省が労働基準法の改正審議を進めている。だが、同省の調査によると労働時間規制改革を望む企業は少数派にとどまっている。規制緩和を使いこなせる企業とそうでない企業で差が開きそうだ。

サイボウズでは多くの社員がグループウエアを使って連絡を取り合いながら裁量労働制で働いている。
画像の拡大

サイボウズでは多くの社員がグループウエアを使って連絡を取り合いながら裁量労働制で働いている。

「今日はウルトラワークします」。ソフトウエア開発のサイボウズの社員は、主力商品でもあるグループウエアを通じて伝わるそんな連絡に慣れている。ウルトラワークとは、社員が働く場所や時間を一時的に選択できる社内制度のこと。地域活動や子育てのためなど幅広い目的で申請することが認められている。

サイボウズは1997年の創業後、目標管理・成果主義、絶対能力評価など様々な人事制度を試してきた。目まぐるしく制度を変えてきたのは、ソフト開発は長時間働けばよい製品ができるとは限らず、仕事の効率と社員の定着率の向上を両立しなければ大きな成長が難しかったためだ。

 

■離職率が改善

今は仕事重視か生活重視かで選ぶ9種類の人事コースを導入し、ウルトラワークを加えている。企画型・専門型の裁量労働制を軸に制度設計し、1日のみなし労働時間は10時間。「7割の社員が最も仕事重視のコースを選び、計227人が裁量労働制で働いている」と中根弓佳執行役員は説明する。多様な働き方のニーズに応えた結果、最高28%だった年間離職率は4%に低下した。

玩具大手のタカラトミーも2006年の合併以降、主任・係長級約190人全員が裁量労働で働くようになった。みなし労働時間は8.5時間。福元紀哉連結人事室長は裁量労働制の導入理由について「商品アイデアの良しあしは労働時間とは無関係。日本的な長時間残業ばかりでは生き残れない」と話す。以前は月平均45時間あった時間外労働は25時間に減った。

労基法38条に基づく裁量労働制は専門型が88年に、企画型が00年に導入された。ホワイトカラー・エグゼンプションは、労働時間規制自体を外す手法なので裁量労働制とは法的には全く違う。しかし、企業からは同じ労働時間規制の緩和であり裁量労働制の延長線上にあると認識されている。

ところが、厚労省の調査によれば、裁量労働制を導入する企業の比率は13年で専門型が2.2%、企画型が0.8%。同省と労働政策研究・研修機構が、導入済みの1614事業場に労働時間管理で今後望む方策を尋ねた調査でもホワイトカラー・エグゼンプションに当たる「労働時間規制が適用されない新制度」は13.2%にとどまった。

なぜ反応が鈍いのか。人事コンサルティング会社、リクルートマネジメントソリューションズの山田義一エグゼクティブコンサルタントは「大企業を中心に仕事の単位をメンバー全体から個人に移すと競争力が失われると考えるため」とみる。

ホワイトカラー・エグゼンプション導入には、個人の役割ごとに詳細なジョブディスクリプション(職務記述書)を整え、それを基に成果を評価する必要がある。個人単位になる反作用として、メンバーで協力する仕事に対する熱意が失われることを警戒している。

一方、サイボウズとタカラトミーは個人のアイデアが収益に直結しやすく、従業員も300~500人規模。創業や合併からさほど長い年数を経ておらず、働き方のシステムを変えたいという経営層の思いを浸透させやすかった。サイボウズの中根氏も労働時間規制が緩和されても「(社内の仕組みは)あまり変わらない」と自信を示す。

 

■納得感が必要

仮にホワイトカラー・エグゼンプションが法制化されても大企業の多くが制度を生かすには、まず社員の健康や生活に配慮すると同時に、対象者が納得のいく職務記述書を整えることが必要になる。そのうえで、社員がチーム全体の成果を追求する姿勢が薄れないよう、経営者が人事評価システムがきちんと運用されているか、常に気を配ることが不可欠だ。