キリン人事改革、管理職に示された3つの道

総合キリン人事改革、管理職に示された3つの道

転籍か、その場に止まるか、それとも会社を去るか――。

キリンホールディングス(HD)が2015年1月から人事制度改革に踏み切ることがわかった。新たな制度の対象になるのは、グループ傘下のキリンビール、キリンビバレッジ、メルシャンの国内3事業会社に籍を置く管理職だ。

これら事業会社の管理職に対し、全国の事業所で今後のキャリアに関する説明会が行われたのは今年4月のこと。そこで示されたのが「3つの選択肢」だった。1つは、キリンHDの傘下で国内飲料事業を統括するキリン社に転籍する、もう1つが、現在籍を置く会社で今後のキャリアをまっとうする、最後の1つが、早期退職制度を利用して会社を去る(対象は45歳以上の管理職)。キリングループの人事関係者は「管理職全員に重い選択を投げかけた」と話す。

 片道切符に”魅力”はあるか

キリン社への転籍を選んだ場合、古巣の事業会社には戻れない。いわば片道切符だ。今回の人事制度改革の大きなポイントは、キリン社で年功序列を廃止し成果主義を導入すること。同社は、国内飲料事業を統括する立場であるため、転籍する管理職は、キリン社を通じてビールやワイン、清涼飲料などさまざまな事業に携わる。国内に限らず海外へ異動する可能性もあるという。この選択は、自分の能力に自信があり、いろいろな事業で力を発揮したいと考える人に向いているのかもしれない。

キリン社は、キリンビールなど事業会社を束ねる中間持ち株会社として13年1月に設立された。新しい人事制度の導入を進めており、15年度入社の新卒採用から、従来の事業会社ごとの形式を改め、キリン社一括採用に切り替えたこともその一貫だ。同社の磯崎功典社長は自社の採用サイトで、会社設立の目的について「事業やカテゴリーの枠を超え、資金や人員を機能的かつ柔軟に配分することができる」と述べている。新制度導入で管理職においても人材の流動性を高め、いっそうの活性化を図る狙いがあると考えられる。

新制度の対象となる管理職が3事業会社でどれくらいいるかは不明だが、関係者によれば3社合計で800人がキリン社への転籍を決めた。このタイミングで成果主義を導入することについて、前出の人事関係者は「厳しい事業環境でわれわれのビジョンを体現するためには、もっと個人が頑張らなくてはいけない。新制度はモチベーション向上につながる」と話す。

第2の選択で、事業会社に止まることを選択した場合、従来通りの年功序列型の給与体系が適用される。転籍者と比べてグループをまたぐ異動も少なく、収入が大きく変動することもない。だが、成果主義を導入するキリン社の社員と共に働く以上、これまでと何も変わらず現状維持というわけにはいかないだろう。一方、退職という第3の選択肢について、早期退職を希望する人には、通常よりも2割多い退職金を支払う措置をとった。退職を選んだのは数十人程度だという。

3つの選択肢の効用

キリン社とキリンビール社長も務める磯崎氏。キリンはどう変わるのか

2014年12月期のキリンHDの業績は売上高がほぼ前期並みの2兆2600億円、営業利益は前期比2%減の1400億円を計画しており、2期連続の減益となる見通し。しかも、ライバルのサントリーが巨額買収で米蒸留酒大手のビーム社を取り込んだことで一気に規模が拡大。その結果、今年度は売上高でサントリーが追い抜くという、キリンにとっては“屈辱の年”となりそうだ。

上半期(1~6月)のビール類の課税出荷数量では、大手4社の中でキリンだけが前年割れとなった。7月の戦略説明会の場で、キリンビールの社長も務める磯崎氏は、下半期の挽回策について「キリンの『行儀良さ』から脱し、戦う集団となるべく営業の意識改革を行う」と熱い意気込みを見せていた。酒類に限らず飲料市場の競争環境が厳しくなる中、モチベーションの向上を狙った成果主義の導入は、キリングループ全体にどのような効果をもたらすのか。新制度が動き出す来年はキリンにとって節目ともいうべき年になるだろう。