女性雇用女子大もキャリア教育、「良妻賢母」はもう古い?
女子大がキャリア教育に力を入れている。女性リーダーを求める機運の高まりと少子化を背景に、良妻賢母を育む場としてのかつての女子大像から転換し、ビジネスを志向する人材が育ち始めている。
福岡女子大学(福岡市)にこの春入学した野中智恵さん(18)と亀谷緑さん(19)は、中国からの留学生、熊昭玉希(ユウ・ショウギョクキ)さん(21)と同室で生活している。同大の1年生は全員、留学生と同じ部屋で1年間寮生活する。今年度の日本人の1年生は約220人。学内にはアジアや欧米からの留学生が常時100人ほどいる。
「台所に鳥の足があってぎょっとした」(亀谷さん)こともある。価値観や生活習慣も違う。異文化に触れ、学生は視野を広げる。「入学当初は教職につきたかったけど、いろいろ見て考え直し始めた」(野中さん)
■寮で異文化に触れ、リーダーシップ学ぶ
3年前、文学部などを統合して「国際文理学部」を新設した。「国際感覚を持った女性リーダーを育成する」(梶山千里学長)という方向性を鮮明にするため、留学生と同室の全寮制を採用した。英語の授業をほぼ毎日設定。留学も推奨、学生の6割が留学を経験する。
結果は就職実績に表れ始めた。来春の新学部初の卒業生の就職率は、9月中旬時点で前年を10ポイントも上回っている。
女子大にキャリア形成をうたった学部が増え始めたのは2000年代に入ってから。文学部や家政学部などが中心の女子大学で、学部を改廃して生まれたケースが多い。大学進学適齢期の女性人口(14年時点で58万3千人)はこの20年で3割以上減っており、学生確保の狙いもある。
老舗女子大もキャリア教育の拡大に動く。お茶の水女子大学(東京・文京)は昨年度から、学生が女性起業家を訪問し、働き方を学ぶ「シャドーインターン」を授業に取り入れている。2~3人で起業家の元に何度か足を運んで話を聞く。
| 大学名 (所在地) |
学部名 | 学部設立 |
|---|---|---|
| 群馬県立女子大学
(群馬県玉村町)
|
国際コミュニケーション学部 | 2005年 |
| 跡見学園女子大学
(東京・文京)
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マネジメント学部 | 2002年 |
| 昭和女子大学
(東京・世田谷)
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グローバルビジネス学部 | 2013年 |
| 京都光華女子大学
(京都市)
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キャリア形成学部 | 2010年 |
| 安田女子大学
(広島市)
|
現代ビジネス学部 | 2003年 |
| 福岡女子大学
(福岡市)
|
国際文理学部 | 2011年 |
| 福岡女学院大学
(福岡市)
|
国際キャリア学部 | 2014年 |
「自らの生き方の中に、働くということをいかに位置づけるかを考えてほしい」(望月由起准教授)。リーダーシップ育成には、社会で活躍する女性を体感できるプログラムが必要と考えた。
生活科学部4年の吉田修子さん(22)は、アクセサリー製造会社の創業社長を訪問。アイデアを盗まれるなどトラブルを幾つも乗り越えて活躍する姿に触れ、就職感が変わった。「ものづくりでがんばる人を守る労務に携わりたい」。公務員志望から一転、まずはものづくりを知ろうと、女性総合職の採用実績のない大手鉄鋼メーカーの子会社に就職を決めた。
福島悠菜さん(22)は食品メーカーの創業者を知る中で「就職のレールに乗るだけが選択肢ではない」と感じた。社長が社員に会社の方針を浸透させている姿をみて、女性の活躍機会の広がりを体感。IT企業への就職を決めたが「就活は失敗できない」という呪縛が解けたという。
跡見学園女子大学(東京・文京)は、マネジメント学部の2年生全員に企業や自治体などへのインターンシップを課している。大野二朗学部長は「インターンに行くと、学生は『このままでは社会で通用しない』とわかる。3年生からの学びが変わってくる」。働き方も多様な選択肢があるなかで、気付きの場として機能しているという。
昨年、グローバルビジネス学部を設置した昭和女子大学(東京・世田谷)は、2000年代前半に大きく志願者数を減らしていた。07年に就任した坂東真理子学長は「かつての『良妻賢母』教育ではパイは広がらない」として短期大学部を廃止して、新学部を創設。志願者数は2.5倍になった。
■社会人も語らい、自分を磨く
キャリア教育は学生だけにとどまらない。昭和女子大は今年から社会人向けの講座を開始。年度前期は起業家向けの教育講座を設けた。講座修了後も自主的に勉強会を開いている。
9月中旬、都内の飲食店に集まり起業計画について講座の担当教員らと議論した。子どもの送迎サービスで起業を目指す木苗まさみさん(39)は「起業に関わる現場にいる人の生の声や情報を聞けたのは非常に良かった」。講座で出会った起業志望者との連携も進んでいる。女子大で芽吹いたつながりが新たな起業をアシストしている。
お茶の水女子大も今年度から「女性ビジネスリーダー育成塾」を設けた。企業の女性管理職を養成するのが狙いだ。5、6月に受講した吉沢恵子さん(37)は保険会社で課長代理を勤める。「管理職を前に心理的な壁を感じていた。女性に焦点を絞った講座で自分の心にドライブをかけた」
明治期、男性のものとされていた教育を女性にも広げようと、各地に設立された女子大には共学校にはない女性教育の歴史がある。女性の活躍の場は家庭から社会に、さらに世界へと広がっている。新たな役割を担う女性が増える中で、女子大の底力が試されている。

