派遣IT分野の派遣「月収100万円」でも集まらず
IT(情報技術)関連職の派遣時給が上昇している。IT投資の増加に加え、IT関連サービスの広がりという構造変化が業界全体の人手不足に拍車をかけており、時給の上昇につながっている。
■「人材が不足」8割超
求人情報大手のリクルートジョブズ(東京・中央)のまとめでは、8月時点のシステムエンジニア(SE)やプログラマー(PG)関連職の募集時平均時給(三大都市圏)は前年同月に比べて8.9%高かった。派遣会社が派遣先から受け取る料金も上昇した。
「月収100万円の条件で求人を出したのに決まらなかった」。大手派遣会社のIT分野担当者は肩を落とす。IT分野の大型投資が増えて、経験と技術を持つ派遣社員の求人は増えているが、派遣先企業が求める条件に合った人材はなかなかみつからない。
募集時の時給も上がっている。リクルートジョブズのまとめでは、システムエンジニアやプログラマー関連の派遣社員の平均時給は募集時で2310円。派遣会社が派遣先から受け取る派遣料金も、足元では1人1時間あたり2550~4400円となり、今春に比べて2%上昇した。技術を持ったシステムエンジニアの場合は「1時間あたり5000円という人も珍しくない」(派遣会社)。
情報処理推進機構(東京・文京)がまとめた「IT人材白書2014」によると、2013年度の調査では、ITの人材が「大幅に不足している」「やや不足している」と答えた企業が約82.2%。12年度に比べて10ポイント、11年度より17.5ポイントそれぞれ上がった。特に「大幅に不足」とした企業の割合が大きく増えた。
「これまで頼りにしていた若手が減少しつつある」(同機構)ことが影響している。システム開発を請け負う企業はもともと、開発コストを抑えるために比較的人件費の低い若手を採用する傾向が強かった。
■活躍の場広がり求人競争激化
開発を請け負う企業は、自社の社員で不足すると派遣社員や業務委託先の社員で補おうとする。だが、派遣社員として働く人は減っている。日本人材派遣協会(東京・千代田)によると、6月に情報処理システム開発関係で働いた派遣社員数は6866人。08年(平均)に比べて17%少ない。
リーマン・ショック後は、大型システム開発のプロジェクト自体が減少した。若手が経験を積むことのできる場所が限られていたため、十分な経験を持つエンジニアの数自体が少なくなっている。
一方、一般企業は足元で社内システムや顧客向けのITシステム・サービスを開発しようと、エンジニアなどを活発に採用する。こうした要素が重なり、派遣社員として働く技術者の数が減少している。
「直接雇用されることを狙って、転職サイトに登録する派遣社員が増えている」とインテリジェンスの担当者は指摘する。
派遣社員を受け入れる企業も、高い時給を提示する分、十分な経験や高い能力を求める傾向が強まっている。将来、正規社員として雇用することも視野に入れ、その人材が「技術だけでなく、会社の雰囲気に合うかを考えるところも多い」(派遣会社)。
IT関連の派遣社員が不足している背景には、活躍の場が広がったことも大きく影響している。1990年代まで、エンジニアによるシステム開発は金融機関や製造業向けが中心だったが、インターネットの普及により一般企業の提供するITサービスが増加した。スマートフォン向けゲームやアプリを開発する企業も増えた。従来型のシステム開発を請け負う企業からみると、人材採用時の競争相手が増えた格好だ。
「スマホ向けなど新サービス開発に携わりたいと考えるエンジニアが増えている」(システム開発を手がけるテックファームの遠藤徳之取締役)。情報処理推進機構の片岡晃イノベーション人材センター長も「やりたいことがあり技能を持つエンジニアほど、会社に所属せず独立してサービス開発を手がけようとする傾向がある」と指摘する。
システム開発を請け負う企業には、従来より年齢の高いエンジニアや女性エンジニアの活用を模索する動きもある。ただ、システム系の人材を求める動きはこうした流れを上回るスピードで進んでおり、IT分野の人手不足は長引きそうだ。

