ジョブ型雇用の米国企業は、学歴で年収が何倍も違う知的階級社会だ

総合ジョブ型雇用の米国企業は、学歴で年収が何倍も違う知的階級社会だ

日本の昔ながらの雇用制度は崩壊し、アメリカ型のジョブ型雇用がついに日本でも始まる。弁護士で国際経営コンサルタントの植田統氏の新著『2040年「仕事とキャリア」年表』からの抜粋で、日本でも今後浸透していくであろうジョブ型雇用とはどういったシステムかを解説していく。前回に続き、アメリカ企業のジョブ型雇用に厳然と存在するヒエラルキーの実態について解説する。

学歴によって
地位も処遇も大きく変わる

アメリカのジョブ型雇用では、会社に上級職員で入るか、中級職員で入るか、現場労働者として入るかにより、給与も大きく違ってきます。

中級職員、現場労働者は、かなり狭いレンジの地位と報酬しか与えられませんが、上級職員の中では、どのレベルで入るかにより、地位も処遇も大きく変わります。

そして、その入り口の処遇は、学歴、資格等の教育によって決められています。

たとえば、私が勤務していた経営コンサルティング業界では、大学卒でもコンサルタントの中で一番下のリサーチャーという職務に就くことはできるのですが、その上のアソシエイトにはMBA卒でないと原則的に就くことはできませんでした。高給取りで有名な投資銀行でも、大学卒はアナリスト、MBAはアソシエイトというのが原則でした。

高学歴の人ほど
高収入が得られる知的階級社会

どれぐらい待遇が違うかというと、戦略系のコンサルティング会社なら、リサーチャーは年収5.5万~9.5万ドル(600万~1000万円)、アソシエイトなら年収11万~15万ドル(1200万~1600万円)程ですから、リサーチャーはアソシエイトに昇進するのを目標とします。

ですから、大学卒で入社したアメリカ人の社員はリサーチャーやアナリストを2、3年経験後、MBAに入学し、卒業後にアソシエイトとして戻ってくるというルートができていました。

  これが研究職となると、もっと高い学歴が要求されます。

大手製薬会社の研究職では、博士(PhD)保有者がほとんどで、修士や学士では仕事を見つけるのも難しいようです。その代わり、博士号を取れば、就職しやすく、また、就職後は高い給与がもらえるというご褒美があります。

アメリカ統計局の2020年のデータによれば、最も高い給与を得ることができるのが、MD(医学博士)やJD(法務博士)のような専門職博士号取得者とPhD(博士号)取得者です。その次が、修士号取得者、その次が学士号取得者というように、学歴によって所得差が生じています。

アメリカでは「学歴」と「年収」が比例する

前ページの図からわかるように、MDやJD、PhDの所得者の週間賃金が約1900ドル(20万円)ですから、年収で言うと、約10万ドル(1100万円)ということになります。これは平均値ですから、腕のよい外科医、腕のよい企業弁護士、グローバルIT企業のトップエンジニアともなれば、2、3億円取る人はざらにいます。

つまり、大きな奨学金債務を負担し高額な大学院教育を受ければ、生涯年収も上がるという仕組みになっています。それに加えて、失業率も低くなるという傾向が明らかです。

 前回説明しましたように、給与が高いのは上級職員だけです。そして、上級職員に加わるためには、大学院卒の肩書が必須です。学歴への大きな投資が必要となるのです。

名門私立大学院の
高い授業料は未来への投資

皆さんもご存じのように、アメリカの大学院の授業料は天文学的です。

アイビーリーグ等の有名私立大学の大学院に行けば、年間授業料は約5.4万ドル(600万円)。ほとんどの学生は、独身寮に住むことになるので、それも加えれば、年間約9万ドル(1000万円)近いお金がかかります。

ですから、アメリカでは奨学金制度が発達していて、多くの学生は奨学金を受け、大学院に通っています。ある程度裕福な家庭でも、アメリカでは大学に入ったら、親が学費を出すのではなく、子どもが自分で奨学金を借りてやっていくのが常識です。それが大学院ともなれば、親がかりという学生は、ほとんどいないものと思います。

上級職員を目指すアメリカの若者は、大きな借金を背負って、自分の未来に投資しているのです。

アメリカでは
定年制は憲法違反になる

アメリカという国では、法の下の平等が徹底しています。年齢による差別は禁止されているのです。

したがって、年齢による一律定年制は憲法違反となります。

 日本で、60歳、65歳定年制が普及しているのと比較すると、かなりの違和感があります。

ですから、アメリカの会社では、70歳の営業マンがいたりします。元々ジョブ型雇用を取っているのですから、そのジョブが要求するスキルを持ち、実績を出しているなら、年齢など問わないのです。

また、働いている労働者も年齢が上なら偉いという年功序列意識はありませんから、こうしたことが可能になるのです。

元々、優秀なら若くてもどんどん出世し、大きな会社のCEOに40代の人がついても問題になりません。70歳の営業マンが35歳の営業部長の部下として働いていても何の違和感もないのです。

一方で、20代、30代の若手社員だからといって、多少ミスを重ねても、若いから許してやろうという発想はありません。同じジョブに就いたなら、若くても、年を取っていても、同じパフォーマンスを出すことが期待されるのです。

ですから、一流大学を出た30歳の若手社員も、実績を上げられなければ、先で見てきたEmployment At Will(任意に基づく雇用) でバッサリと首を切られてしまいます。