総合部下が退職を決める前に、マネジャーが問うべき5つの質
従業員が退職を決意した後で面談を行い、本人の希望や組織の問題点を確認する会社は多い。しかし、その時点ではもはや手遅れであり、優秀な人材を引き留めることなどできない。部下の退職を防ぐには、常日頃から、従業員エンゲージメントを向上させる施策が必要だ。本稿では、マネジャーが定期的に尋ねるべき5つの質問を紹介する。
退職を決めた従業員のサラは、人事部長の向かいに座り、退職面談を受けた。金融サービス会社のマーケティング部門で幹部を務める彼女は、5年勤めた会社を辞めてフィンテックスタートアップのCMOに就任することになった。
人事部長が「あなたに残ってもらうために、私たちに何かできたことはありますか」と尋ねると、サラは間を置いてこう言った。「はい。私のキャリアのゴールや成長の機会について、話し合えればよかったです」
このような会話は、優秀な人材がすでに退職しようとしている時に行われるので、遅すぎることが多い。
「大退職時代」(グレート・レジグネーション)が到来し、会社を辞める人の数が増え続ける中、人事担当者は社内で何が起きているかを明確に把握したいと考え、退職間近の従業員と面談の機会を設ける。その際、マネジャーが気づいてなかった問題を知ることが少なくない。
人材マネジメント協会のナレッジアドバイザーを務めるユレッタ・プリングルによれば、退職面談によって「その従業員が退職する動機となった出来事がどのように起きているのか、あるいは起きていたのかを知る」ことができるという。
しかし、上記の例が示すように、このような会話は不十分かつ遅すぎかもしれない。ギャラップの最近の調査では、調査対象の従業員の半数以上が、退職前の3カ月間に自分の役割についてどう感じているか、マネジャーを含めて誰も尋ねなかったと答えている。また、退職する従業員の52%は、マネジャーや組織が何らかの行動を取れば自分は退職しなかったはずだと強調している。
筆者は、10年以上にわたり何百人もの従業員の転職を指導する中で、これらの調査結果が正しいと立証できる。数え切れないほどのクライアントが、退職する「前」に、雇用主が自分の成長をうながすような質問をしてくれればよかったと話す。そのような質問は人事部が後付けで行うのではなく、マネジャーが率先して行うことを彼らは望んでいた。
だが、マネジャーとして質問をする前に、従業員が組織に留まるモチベーションは何か、そして、その理由はなぜかを知ることが重要だ。ギャラップの調査によると、従業員エンゲージメントを向上させるために、マネジャーが満たすべき12のニーズがある。以下はそれらに含まれる。
・従業員の能力開発を優先する
・目的意識を持たせる
・従業員に気を配る
・従業員の意見を考慮する
・従業員の強みに着目する
この5つの指標は、最近『ハーバード・ビジネス・レビュー』に掲載された、従業員のリテンション(維持)を高める戦略に関する調査結果と一致している。これら5つのニーズを念頭に置き、直属の部下と行う定期的なチェックインに、以下の質問を取り入れてほしい。従業員が、自分が辞める前に尋ねてほしいと思っていることを聞き出せるからだ。
(1)この組織でどのように成長したいか
キャリア開発は、ギャラップの調査で示された要素の中でも最も重要であり、階層に関係なく3分の2の人が、キャリア開発の機会がないことを理由に退職している。
このことを念頭に置き、スポンサーシップ、コーチング、メンタリング、ビジビリティ(可視性)、挑戦的な仕事の割り当てといった、各従業員に最適な能力開発を実現するうえで、どのような機会が必要かを把握することが重要だ。
その答えを導き出すために、「(存在するかどうかは別にして)どのような役割を果たしたいか、この会社であなたの成長をうながすために、自分は上司として何ができるか」と聞くこともできる。
(2)仕事に目的意識を持てているか
サラは、退職した金融サービス会社で働いていた5年間、自分の仕事が人々の生活に有意義な影響を与えていると感じたことがなかった。
そして、金融サービスを十分に受けていない人たちに、アクセシビリティとアフォーダビリティの向上を目指すフィンテック企業に加わることで、自分のマーケティング活動が、資本へのアクセスを必要とする人々の生活に変化をもたらすことができると期待した。
サラの元雇用主とマネジャーは、マーケティングが果たす役割に対して、彼女が抱いている情熱と目的意識を活用する機会を逃してしまったのだ。
マネジャーは、従業員が自分の役割は組織の広範なミッションにどう貢献しているかを理解するうえで、重要な役割を果たすことができる。しかし、従業員に目的意識を持たせるためには、それに留まらず、彼らが仕事で何を目的としているかを把握し、彼ら自身の価値観と結び付ける必要がある。
(3)あなたが最高の仕事をするために、私に何をしてほしいか
有能なマネジャーは従業員を尊重し、彼らに気を配っている。従業員を個人として理解し、彼らの成果を認め、パフォーマンスについて話し合い、正式な評価を行っているのだ。このような支援行動が、従業員が安心して新しいアイデアを試し、情報を共有して、開発の機会を模索し、互いにサポートし合える職場環境をつくる。
従業員が最高の仕事をするうえで何が必要かを知るために、次のように質問することも可能だ。「あなたの最大のフラストレーションは何か、それに対処するために私は何ができるか。あなたが私に伝えようとしていることで、私が耳を傾けていなかったことは何か。あなたはどのように認められたいか」
(4)会社がいま取り組んでいないことで、やるべきだと思うことは何か
最高のマネジャーは、オープンな対話を促進し、従業員の意見や提案に対して率直なフィードバックを行い、優れたアイデアを支持し、実現不可能なアイデアに対処することで、従業員の意見が重要であることを彼らに伝える。
個々のチームメンバーに、会社が改善できる活動は何か、会社が見落としている可能性がある市場機会は何か、会社のリソースをより効果的に活用するにはどうしたらよいかを尋ねることで、彼らの考えが重要であると示すことができる。
次のような質問もできる。「会社の現在の在宅勤務やハイブリッドワークの方針に満足しているか。満足していないなら、何を変えるべきだと思うか。リモートワークの際、同僚とのコミュニケーションに使用しているツールに、どの程度満足しているか」
(5)自分の強みを活かす機会が毎日あるか
マーケティングの仕事をしていたサラが主に取り組んでいたのは、データ分析だった。顧客の利活用データを分析する方法を学んだものの、それが自分の強みであると思ったことはなかった。
新しい仕事では、自分が喜びを覚え、得意とするブランディングやオーディエンスの獲得に集中することができる。この点でも元雇用主は、サラが新しい会社と彼女の優れた才能を結びつけようとする前に、その才能を最大限に活かす機会を逃してしまったのだ。
従業員が自分の強みに集中できているかどうかを判断するために、こう質問しよう。「あなたの仕事の一番よいところは何か。いまの役割で活用できていない、あなたの能力は何か。可能ならばなくしたい仕事は何か」
マネジャーがこの5つの質問を含むチェックインを従業員と定期的に行うことで、従業員は自分が見られている、評価されていると感じることができる。そして、マネジャーが個々のチームメンバーにそう感じさせることができれば、どれだけ会社に留まるかにかかわらず、部署や組織の支持者となった従業員から恩恵を得る可能性が高まる。