組織・制度「ぶらぶら総務」がポイント? 社員が行きたくなるオフィスの条件
オミクロン株の猛威が止まらない。「ステルスオミクロン」といった言葉も出てきており、まだまだコロナ禍が終息するめどが立たない状況だ。いったん感染拡大が落ち着いたかに見えた2021年の秋から徐々に出社率を高めた企業も、再び出社率を下げているようだ。
相も変わらず、ガラガラのオフィス。総務としては、どこに照準を合わせてオフィスを作りこめばいいのか、多くの担当者が迷っているのではないだろうか。
月刊総務で21年11月に行ったWebアンケートの結果では、オフィスの見直しを既に実施した企業が、次のようなポイントを改革したことが分かった。ちなみにカッコ内は、20年8月に行ったアンケート結果である。
- レイアウトの変更:79.3%(前回調査時未実施)
- 専有面積の縮小:35.9%(30.9%)
- コワーキングスペースやレンタルオフィスの契約:25.0%(14.8%)
- 拠点の集約:17.4%(12.3%)
- 規模縮小のための移転:14.1%(4.9%)
- 拠点の分散化:8.7%(14.8%)
- 本社機能の廃止:0%(1.2%)
- 地方への移転:0%(0%)
- その他:12.0%(43.2%)
一方、これから見直しを検討している項目になると、以下の通りである。
- レイアウトの変更:82.4%(前回調査未実施)
- 専有面積の縮小:42.6%(56.2%)
- コワーキングスペースやレンタルオフィスの契約:20.6%(3.6%)
- 拠点の集約:14.7%(14.9%)
- 規模縮小のための移転:13.2%(14.0%)
- 拠点の分散化:7.4%(21.5%)
- 本社機能の廃止:0%(2.5%)
- 地方への移転:0%(1.7%)
- その他:2.9%(23.1%)
まずはこの調査結果と、筆者が各企業への取材を通じて得た情報から何が読み取れるか見ていくことにしよう。
「オフィス縮小」「地方移転」の現状は
コロナ禍によりリモートワークが広がって以降、有名企業が大胆にオフィス面積を縮小しているというマスコミ報道を目にすることが多い。しかし、アンケート結果を見るに、それが大勢であるわけでもない。
むしろ、駅に近い大型ビルでは空室率も下げ止まり、さらにそれらのビルの家賃が下がったことにより、これを好機と捉え、積極的に拡張移転している企業も多いと聞く。また、本社機能を地方に移転するといった、インパクトのある報道がされたが、それもごく一部にとどまっているようである。依然として、ほとんどの企業は都心を中心にオフィス戦略を考えているようだ。
一方で、サードプレースが拡大基調であり、当面はこのトレンドが続き、どこかのタイミングで乱立しているサードプレースの運営企業が集約されるとの見立てだ。サードプレースはオフィス変革における一種「調整弁」としての役割を担っており、オフィス面積を縮小した分、それを補う形で契約し、結果、床面積は同一に保つ、そのような使い方もされているようだ。郊外型のサードプレースも増えてきており、従業員の居住地も鑑みながら、契約が進んでいくとみられる。
オフィスを考える視点
オフィスのあるべき姿を考える際に、視点として考えられるのが、「経営としての視点」「総務としての視点」そして「従業員としての視点」の3点だ。
まず、経営としての視点を考えると、自社の業績拡大もさることながら、組織運営の維持、強化がオフィスに課せられる役割だ。その延長で経営理念、ビジョン浸透の場としても位置付けられるだろう。
次に、総務としての視点を考えてみよう。コロナ禍により、働く場が分散され、コミュニケーションの希薄化、つながり感の低下、エンゲージメントの低下、そしてメンタル不全と、組織の維持に幅広い悪影響が生じていることを目の当たりにした総務担当者としては、コロナ以前の活気のあるオフィスを再現したいと考えているのではないだろうか。感染対策のため、無理に出社する必要はないが、コロナが落ち着いたら、できればオフィスで仕事をしてほしい――このような考えを持ってオフィス改革を進めている担当者も多いはずだ。
こうした総務の傾向は、調査結果でも明らかになっている。先ほど引用したものと同じ調査内における、これからのオフィスの役割を聞いた設問では、次のような結果となった。
- 社内コミュニケーションの場:86.3%(80.5%)
- チームで作業をする場:69.8%(76.2%)
- 社風・文化を醸成する場:48.1%(55.8%)
- 教育・OJTの場:44.3%(44.2%)
- 社外コミュニケーションの場:29.7%(25.1%)
- 経営理念・ビジョンを浸透させる場:27.8%(35.6%)
- 自社ブランドを体現する場:17.9%(30.0%)
- 1人で作業をする場:4.7%(5.0%)
- その他:2.4%(3.6%)
集団での交わりの場として、コラボレーションの場としてオフィスを捉えている総務担当者が多いことがよく分かる。集中を要するような業務、あるいは1人でサクッとこなしたいような業務であれば、わざわざオフィスに来ずとも、在宅やサードプレースでも十分こなせる、であればオフィスでこなすべきはコミュニケーションではないか――という発想であろう。
ただ、総務がよかれと思いコミュニケーションの場としてオフィスを整えたとしても、現場がオフィスに必要とする機能が違う、そうしたケースも十分あり得るのが悩ましいところだ。
実際、従業員としての視点では、働く場の選択肢が増えてきた現在において、働く場を選ぶポイントとして、最も成果が上がる場所がどこか、という点が重要になる。つまり、オフィスに行く場合は、そこにこそ行く意味がある場合に限る。このニーズは千差万別でもあり、履き違えてしまえば行きたくなるオフィスとはならず、結果として、組織の維持強化もおぼつかなくなるだろう。
では、どういうときに従業員は行きたくなるのだろうか。
従業員が行きたくなるようなオフィスの条件を具体的に考えると、次のようなポイントが想定される。
- 特定の社員に会いたいから:話・雑談・相談を直接したい人がいる
- 協力する仕事があるから:ブレスト、教育、協働作業をしたい
- オフィスの立地や環境がよいから:飲食・福利厚生施設があり快適、近隣においしいランチを出す店がある
この中で総務が積極的にかかわれるのが、「協力する仕事があるから」というポイントだ。従業員がオフィスに来る要因として、チーム活動、コラボレーション活動が魅力的になるような仕掛けを作ってみよう。
例えば、オンライン会議をする際、リモートで3人、オフィスから3人が参加するのであれば、オフィスにいる人は各自のPCから参加するのではなく、1つのディスプレイから参加してみる。このひと工夫だけで、いつもと違う会議体験ができる。
また、オフィスをあまり作りこまないのもよいだろう。ファシリティの移動ができないような仕立てではなく、各自が自由に場所を選べて、必要に応じてファシリティを自由に動かせるフレキシブルなオフィスにするなども考えられる。とにかく、従業員にとってチーム活動がより魅力的になり、「集まって仕事をするならオフィスが最適」という認識になれば、組織維持強化も図れ、経営・総務・従業員の三方よしなオフィスにもつながるはずだ。
「ぶらぶら総務」で現場に寄り添う
オフィスとそれ以外の場所を柔軟に組み合わせて働くハイブリッドワークは、今後間違いなく定着していく。そうなると、企業は従業員に最大限の選択肢を提供する必要が生じる。選択肢が少ないと、優秀な人材が確保できない、あるいは、離れていってしまうリスクがある。
また、選択肢もやみくもに作るのではなく、どれだけ従業員の意向に沿って提供できるかを考えると、現場に足を運んでぶらぶらしながら課題を見つけられる「ぶらぶら総務」が重要となってくる。従業員とコミュニケーションしながら、志向性を把握して先回りして選択肢を用意していくのだ。そして各選択肢の利用率を見ながら、取捨選択をしていき、最適化に持っていく。従業員の仕事を理解し、それに寄り添いながら、どうすれば成果が上がるのか、成果達成のためのオフィスを目指すのである。
従業員の意向に寄り添いながら、チーム活動のサポートをし続け、その集積により、組織の維持と強化を図る。そんな三方よしが実現できるオフィスこそ、総務が今、目指すべきオフィスだと思う。

