新卒もう建前はいらない!「採用直結型インターン」の何が悪いのか?
本年4月に、大学側と経団連の間で通年採用への移行が合意された。「ようやく形骸化したルールに縛られることがなくなり、本音と建て前の使い分けをする必要が一つなくなると思うと大きな前進だ」と新卒採用に特化したSNSを展開している企業・EDGE株式会社の佐原資寛氏は言う。
それほどまでに、新卒採用の現場には「建前」があふれていたのだろうか。佐原氏は、一つの例として「インターンシップ」の位置づけを挙げ、それがいかに学生を戸惑わせてきたのか、解説してくれた。
そもそも、就活は悪者か?
近年の就活の流れを振り返るために、少し前の話から始めさせていただく。
2019年3月、これまで経団連が進めてきた「採用選考に関する指針」に代わるものとして、政府が経済団体や業界団体に向けて「就活ルール」として要請を出した。その中には採用直結型インターンシップの自粛も盛り込まれている。
そもそも、これまでは経団連が主導する形で指針を定めてきたが、それが廃止されることに伴う措置だ。

就活のスタート時期に縛りができたのは、就活の早期化、長期化によって学業に影響がでるということらしいが、就活だけを悪者にする議論の起点が間違っているのではないか。
実際に授業に出ない、学業を疎かにするという現状は、例えばアルバイトやサークル活動に起因することの方がよっぽど影響が大きいように感じる。大学側の授業も学生を惹きつけるような工夫が十分と言えるだろうか。
断っておくが大学教職員の中でも、本質的な問題解決に努力をし、学生のサポートに奔走している方は大勢いる。しかし、それはあくまで各現場での努力であって、総論で考えた時に、やはり今の就活だけを取り上げて論じる形に違和感しか感じないのである。
以下、学生を指導するキャリアセンター、採用担当者の声を紹介するが、議論の起点がずれてしまっているが故に、実態とルールが乖離し、就活に関わる全ての人にとって不利益しか生まない現状になっていることがよくわかる。
キャリアセンターの声「学生をお客様扱いしないで」
とあるキャリアセンターの方と話をした際に、インターンシップの話題が出た。大学側としても、大学要請で後ろ倒しになった採用スケジュールを大学が自ら破る訳には行かないようだ。
その一方で、就職先や就職率といった指標は当然に注目されるため、学生にはちゃんと就活をして就職先を見つけて欲しいと言う。実際にこの大学でも、広報解禁(大学3年の3月)を待たずして、企業人事と学生がコミュニケーションをとるイベントを実施している。

名目はあくまで就活の場ではなく、「業界研究会」としている。この手の話はすでに多くの大学で聞く話で、歪みの一端を見るようだ。
インターンシップに関しても、学生には、できるだけ参加するよう指導はしているものの、売り手市場であることと、企業側の母集団形成につなげたい思惑もあいまって、学生はお客様扱いされる。
さらには選考直結型ではないという点で安心しているのか、「こんなもんなら、就活本番も余裕だ」とロクに準備もせずに就活に臨み、短期間で複数社に落ちてパニックになるらしい。
大学キャリアセンター職員も企業が採用と切り離したインターンシップをメリットもなくコストをかけて、わざわざやる訳ないということは重々わかっている。しかし、ある意味「ルール」として報道される「採用直結ではないインターンシップ」という言葉だけが学生をミスリードしていると言う。
採用担当者の声「インターンシップは大事な接点」
インターンシップを新卒採用における重要なプロセスと捉える機運は年々高まっている。売り手市場が加速する中で、学業優先という大義名分のもと、会社側が就活生に対して「採用」の名目で広報を開始できる時期は後ろ倒しになった。このままでは優秀な学生を目標数採用しきれないという焦りが生じた。
採用広報前から学生と接点を持てる機会はインターンシップしかない。インターンシップの接点から採用につなげていくという手法が徐々に浸透してきている。
ある新卒採用担当者は、採用に何かしら繋がらなければ、インターンシップをやる意味はないという。昔、採用に関する指針で選考開始を6月と定めた時、これまでのように優秀な学生が指針の影響範囲外の外資系企業やスタートアップ企業に行ってしまうのではないかという懸念から、大手企業はこぞって「内々々定」を出した。

内定は正式な内定通知があるもので10月の内定式に出される。その内定を内定するものとして「内々定」というものがあるが、これも実質選考が始まる6月より前に出すと叩かれる可能性があるため、その内々定を内定するという意味で「内々々定」という言い方になる。
いまでは指針が形骸化しており、このようにコソコソしなくとも良くなったが、本音と建て前が常に共存し続けるのが新卒採用の現場なのだろう。
先の新卒採用担当者も、学生から「このインターンシップは採用選考と関係ありますか?」という質問に対しては、「採用直結型ではないので、関係ありません」と回答すると言う。
今はネットに何でも書かれる時代。イチ採用担当者の発言でもネットに晒されてすぐに炎上する。企業名に傷がつかぬよう回答には細心の注意を払っているのだ。それにインターンシップの中で全員の本選考の合否を決めているわけではないので、嘘ではないのだろう。
一方で、インターンシップに参加した学生には別の選考フローがあったり、通常より先行して説明会の枠を設けるといったことは当たり前に行われている。
1Dayインターンシップの解禁で何が変わった?
2017年には、それまで「5日間以上」としていたインターンシップの日数規定がなくなった。2018年度に卒業(入社)する学生向けに1Dayインターンシップが解禁されたのだ。

それまではプレサイト(大手就職ナビサイトが運営する、インターンシップ情報を掲載するためのサイト)に情報を掲載する上で、選考へ直結を匂わすものや日数が少ないものは修正を求められてきたが、これも1Dayインターンシップ解禁に伴ってかなり甘くなった。
以前は、無料で掲載できていたプレサイトも、今では実質有料化して、運営する各社も企業にとって価値のあるプレサイトでマネタイズしようという方向性が見えてきている。ここまで状況が変わってもなお、「採用直結型インターンシップ自粛」というのは、ルールとは何か?と言いたくなる。
企業側の動きとしては、2017年の1Dayインターンシップの解禁に合わせて、夏休みなどの学生が動きやすい時期に、1日のイベント型インターンシップを開催する企業が増えた。
しかし、夏休みに1Dayインターンシップを実施しても翌年3月の広報解禁(実質的な選考開始)まで接点を継続することが難しく、1Dayインターンシップ乱立で学生側も複数のインターンシップに参加するため、自社の印象が消えてしまって結局母集団につながらないと、2018年は冬の時期(12月~2月)に説明会型イベントを実施し、実質的な広報解禁を3月から数ヶ月前倒すことで他の企業を出し抜こうと考えた。
ただ、この時期にインターン実施企業が集中してしまい、学生が思った以上に集まらないという企業が多数あり、結局2019年は夏のインターンシップを実施した上で、広報解禁時期(翌年の3月)まで接点継続の工夫をしようという企業が増えている。
我々はこれまで、新卒の内定者が入社時に感じるギャップを埋めるために、内定期間中にスマートフォンアプリを通じて先輩の情報を動画で配信し、会社の様子を知ることができ、不安があれば、人事や社員に直接質問ができるエアリーフレッシャーズクラウドを4,000社以上に提供してきた。
本サービスをインターンシップに参加してくれた学生向けに、スマホアプリを通じて、インターンシップ後の継続的な情報発信、情報提供に活用する企業が前年比4割増と急増していることも、先に書いた夏のインターンシップ実施と、その後の接点継続に苦心する採用担当者の実情を如実に表している。
結局、正直な企業がうまくいく
企業視点で、採用成功というのは、「自社にとって優秀な人財が入社した」という単純なものにとどまらない。本質的には、採用した人財が定着し、活躍している状態が実現できて、はじめて採用が成功したと言えるものだろう。

本来の姿を目指すなら、新卒採用においても正直であった方が成功しやすい。色々と大人の事情で本音と建て前を使い分けると、それが入社後のギャップや不信感につながってしまう。採用担当者が優秀で、そこに惹きつけられて優秀な学生を採用できたが、いざ現場に配属されると期待していたこととあまりにも違うと定着しないという企業は山ほど見てきた。
そうならないためにも、インターンシップは「採用に直結しない」という建て前は捨て、「インターンシップも新卒採用におけるプロセスとして考えている。じっくり自社のことを見て、入社に値する会社かどうか見極めてほしい。そのための情報提供は惜しまない」と言ってしまった方が、回り回って学生にとっての心象も良く、入社後のミスマッチも減らすことができるはずである。
採用がうまくいった企業の多くは、やはりインターンシップで接点を持った学生の入社割合が多い。これはお互いに見極める時間がしっかり持てている学生を中心に選考しているからに違いない。
もはや、採用成功にインターンシップは欠かせない。完全に採用活動の一部なのだ。意味のない本音と建て前を使い分けて、批判のそしりを受けない企業より、本音で情報をオープンにしている企業の方がよっぽど潔く信頼できる。