総合AI時代になっても転職市場で求められる「営業」の条件
営業職の募集が減少している理由
近年、とみに減ったと感じるのが飛び込み営業です。当社のオフィスには今でもたまに来ますが、以前と比べたら激減しました。
当社の人材紹介実績においても営業の決定数は減少しています。ただしそれは営業の価値が低下したというより、モノやサービスを売る方法が変化、多様化していることの影響が大きいのではないかと考えています。
例えば、かつて飛び込み営業一辺倒だった会社がホームページを活用し、見込み客をリストアップしてメールや電話で営業をかけるようになった、というような方法です。いわゆるインサイドセールスへの転換で営業の効率化をはかっているのですが、そうした会社では当然、インサイドセールス要員が増やされる一方で飛び込み営業要員が大幅に削減され、全体として営業職は減少するわけです。
こうした営業活動に関するポジションや仕事内容のバリエーションがたくさん出てくるようになったため、昔のくくりでいう営業職の募集が減ったと考えられます。
実際、以前なら我々に顧客企業から「営業が欲しい」と依頼があったとき、そこで想定されている「営業」のイメージはお互いにほぼ同じだったのでお客様の意図はすぐに共有することができました。しかし、現在は「御社の営業活動はどのように行っていますか」と、こちらから細かく確認していく必要があります。
お客様に細かくヒアリングしていくと、「それは営業というより渉外担当というほうがよいですね」、「営業ではなくマーケティングとして募集をかけるべきです」といったことが起こるときがあるのです。
このような状況を踏まえつつ、本稿では今後どのような「営業」が求められていくかを考えてみましょう。
転職市場で引き合いが多い営業の能力とは
顧客企業から引き合いの多い営業人材の1つは、営業の「仕組み」を構築し、運用できる人です。「営業を科学する」とよく言われますが、顧客のニーズや課題を把握、分析し、どのような戦略、営業プロセスでアプローチするのが効果的かを検討し、組織的な仕組みに仕立てあげて回せる人は非常に重宝されます。
もっと言えば、さらにその人自身もプレーイングマネージャーとして仕組みを回す一端を担いながら、改善点を発見しブラッシュアップしていける人です。
営業なのでモノやサービスを売ることはもちろん大事。そして、それだけにとどまらずモノやサービスを売る仕組みを構築し、改善していけることが重要になっています。そこではネットやIT、データ等を活用できる能力も必要になります。
一方で価値ある人的ネットワークを築いていて、企業の看板を超え個人で仕事ができる人も需要があります。すぐに成果を出せる可能性が高いからです。
これは普通の人にはまねのしようがない事例ですが、ある名家出身で実家が大地主という営業マンがいました。もともと日本の上流階級につながる名家同士の強力なネットワークを持っていて、かつ社交的で面倒見がよく周囲から慕われる人柄だったので、ビジネスの世界でも素晴らしい人的ネットワークを構築していました。
この人は転職した途端、前職とは異なる商品を扱ったのにもかかわらず、トップセールスに躍り出ました。商品に関係なく、自分の知り合いに売るだけでトップになったのです。ただしその仕事ぶりを見ていると、単にモノを売るというより人と人とをつないだり、A社とB社の間を取り持ってアライアンスに発展させたりと、いわゆる営業の枠内だけにはとどまっていませんでした。
スケールの程度はあるでしょうが、こうした価値ある人的ネットワークを持っている、もしくは人的ネットワークを構築する能力に長けている営業の人気も高いと言えます。
転職市場の動きを見ていると以上のように営業の仕組みをつくれるか、もしくは価値ある人的ネットワークをつくれるかが今後、求められる営業の能力といえます。
AI時代になってもなくならない営業とはどういうものか
私くらいの世代だと「営業は足で稼ぐもの」「営業は気合と根性だ!」と刷り込まれてきました。もちろんそれらも重要な要素ではあり続けるでしょうが、それだけで生き残ることは難しいと思います。
ただ、プッシュ型営業からプル型営業へ、ネットやITの活用による効率化など、営業の形が以前とは変化してはいますが、営業職そのものがなくなることはないでしょう。
とくに顧客が購入するか否かの意思決定を行うラストワンマイルに介在し、お客様の相談に乗って納得性や満足感を高めてモノを売る。あるいは当初、買う気はなかったお客様とコミュニケーションをとって潜在的なニーズを顕在化させ、購入を決断させるといった役割はなかなか機械には代替が難しく、人間にしかできない領域だと思います。
そうした役割を担える営業人材になるには、商品やサービスを売りたいと強く思う軸と、それによってお客様の役に立ちたいと強く思う軸の両方を兼ね備えていることが基本になるでしょう。
基本、ということで付け加えておくと、営業にはセルフマネジメント能力が必須です。
リクルート創業者の江副浩正さんは「成績を伸ばすのはセルフマネジメントができている営業マン」と言っていました。例えば、月の売り上げ目標を達成し遊んでいても文句を言われない状況になっても、遊ばずに翌月、翌々月のために準備できるかどうか。そこで大きな差が生まれるのです。