友人の紹介で転職する人が陥りかねない「想定外の落とし穴」

総合友人の紹介で転職する人が陥りかねない「想定外の落とし穴」

友人・知人から「うちの会社へ来ない?」
安心感の一方でうまくいかないケースも

深刻な人手不足を背景に最近、とみに増えているのがリファラル採用です。これは企業が自社の社員に友人や知人、昔の同僚などを紹介してもらい採用するという手法で、力を入れる企業が目立つようになりました。

声をかけられた候補者にとっては自分を知っている人に「一緒に働こう」と声をかけられる名誉と、知人が勤務している会社という安心感からいいことずくめのように感じられます。しかし、実際は期待通りの結果を得られず、再び転職活動を始める人もいます。

当社でも、候補者の方がA社の転職活動を当社で、B社をリファラル採用で、と並行して進めるようなケースがあります。そしてB社への入社を決断し、残念ながら当社にお断りの連絡があった半年くらい後、また当社へご相談に訪れる人がいます。リファラル採用がうまくいかなかったというわけです。

当社の紹介した企業ではなくリファラル採用の会社を選んだ候補者で、「あの人、戻ってくるんじゃないかな」とうわさをしていると、実際に戻ってくるケースもあります。もちろんリファラル採用で順調にいっている人は再び当社には来ないので、うまくいかなかった人が我々の印象に残りやすいというバイアスはかかっているのですが、注意しておくべき点があるのは確かです。

友人だからこそやりにくい
お金や条件の交渉

採用企業の立場から考えると、リファラル転職はいいことずくめです。基本的に活躍している社員が連れてくる候補者は、類は友を呼ぶので良い人材であることが多い。イマイチだと思っている友人や知人なら連れてこないでしょう。

そもそも社員が自分の人脈に声をかけて連れてくるのは「この会社を伸ばすにはこういう人材が必要だから」、あるいは「あなたにはぜひ当社に入社して、一緒に会社を伸ばしてほしい」といった愛社精神に基づく行動なので、会社としては非常にありがたいものです。コストもかかりません。

一方、採用される側にとってはいくつか落とし穴があります。その最たるものは友人からの紹介という安心感から大事な事項を確認せず、あるいは知人であるが故に条件を確認しにくいため、詳細を詰めずにそのまま入社したら「話が違った」というケースです。

特にお金の話は友人同士ではしにくいので、年収の話は後回しになることがあります。実際にあったケースでは、候補者が「現在の年収は1000万円」と伝えたところ、相手からは「ではうちもそのくらいで」との返答で、あいまいな口約束のまま入社したところ1000万円にはほど遠い給与しか支払われなかったことがありました。

ただし、このような口約束だけで入社するケースは最近では考えにくくなっています。職業安定所(職安)の指導が厳しくなったからです。それでも細かい条件面などで「友人だから聞きにくい」ことは残るので、事前にきちんと自分の知りたいことを確認しましょう。転職プロセスがある程度まで進めば人事が出てくるはずですが、出てこない場合はつないでもらって条件を詰め、必ず労働条件通知書をもらうことが大切です。

誘ってくれた知人が
入社早々に退職するケースも

リファラル採用で入社前にきちんと話を詰めて、労働条件通知書をもらっても、入社後に困った事態を迎えることがあります。それは紹介してくれた友人、知人が入社間もない時期に退職してしまうケースです。

最近あったのは、前職の上司に引っ張られて転職したのに、その上司が2ヵ月後に退職してしまったケースです。「その上司とはどういう人ですか」と尋ねたところ、「良い人なんですが以前からそういう軽いところがあって、私が入社した時点では辞める気はなく悪気はなかったようですが……」とのことでした。

深刻なものでは、あるプロジェクトの構想を描いた知人から「ぜひ弊社でキーマンになって活躍してほしい」と頼まれて入社したのに、その知人がプロジェクトを放り出してすぐ辞めてしまったケースがありました。世の中には無責任な人もいるのです。

また、「お前が辞めるのはいいが、代わりになる人を連れてきてくれ」と頼まれて声をかけてくるケースもありますし、知人を紹介するとインセンティブが支払われる会社もあるようです。要するに、あなたに声をかけるのはあくまで向こうの都合であって、必ずしも善意だけで動いているとは限らないということです。

ですからリファラル採用では「知人から声をかけてもらった」といううれしい気持ちは抑えつつ、後でトラブルが起こる可能性があることも頭に入れた上で余計な感情を入れず油断せず、ある意味事務的に声をかけてきた会社をこちらがジャッジし条件を詰めていくことが大切です。

なお、リファラル採用を行う企業が知人を紹介してくれた社員に金銭でインセンティブを支払うことは、職業安定法に抵触する可能性がありますからご注意ください。