Listening:<物価と暮らし>労働力、高齢者・主婦頼み

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モスバーガーで働く高齢者を意味する「モスジーバー」。親しみを込めて客からそう呼ばれている高齢者が、東京・五反田のハンバーガー店で働いている。

「ポテトはLサイズになさいますか」。「モスバーガー五反田東口店」で土屋美津子さん(73)が、丁寧な口調で注文を受けている。店のアルバイトの2割、10人が60歳以上の高齢者だ。土屋さんは勤続18年、56歳から働き始めた。当初は野菜を切る仕込みをしていたが、今は負担の軽いレジを担当する。「79歳の方もいますし、健康のためにも長く働きたい」と意欲的だ。

18年間モスバーガーで働く土屋美津子さん=東京都品川区の五反田東口店で、工藤昭久撮影

 

モスバーガーは昨年秋、食材価格の高騰などを受けてハンバーガーなど一部の商品を値上げした。ただ、人件費の上昇については企業努力で吸収し、価格には転嫁させない方針。高齢者も給与体系は若者と一緒だが「高齢者は定着すれば比較的長く働いてくれる」(モスフードサービスの柳好美執行役員)ので、短期間で入れ替わる学生に比べ、採用や研修のコストが少なくて済む。高齢者の活躍が、価格抑制を側面支援する。

主婦への期待も高まる。外食大手「すかいらーく」はパート・アルバイトの約3割が主婦で、店舗運営に不可欠になっている。同社は「少子化で学生の確保が難しくなっていく。主婦はもっと増えていく」(桜井功執行役員)と見ている。人手不足が深刻化する中、日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁は「高齢者と女性の活用が日本経済の強化につながる」と訴える。

背景にあるのは、少子高齢化に伴う労働力人口の減少だ。15歳以上の労働力人口は1998年をピークに、2013年までに200万人以上減った。ただ、年代と性別でみると対照的な動きを見せる。15〜59歳が減る一方、60歳以上は増加。男性は減ったが、女性は増えている。高齢者や女性の活躍なしに労働力人口の維持は難しい状況だ。土屋さんが「結婚した当初は、子育てが終わった後、働くことは想像もしなかった」と振り返るかつてと違い、女性が働くことへの理解も進んだ。

高齢者や女性の労働市場参入は、企業の人件費抑制の一助にもなっている。

高齢者に仕事をあっせんするシルバー人材センターには、民間企業から高齢者の求人の問い合わせが増えている。23区内では、マンションの清掃や事務作業などの求人の問い合わせが増加。東京都全体でここ10年で受託件数が1・5倍増えた。全国シルバー人材センター事業協会の担当者は「景気回復に加え、元気な高齢者が増えていることから全国的にも求人は増えている」と話す。民間の人材派遣会社よりもシルバーに依頼する方が賃金を安く抑えられる場合が多いことも人気につながっているようだ。

だが、50年には日本の人口は1億人を切り、女性の人口も今より1500万人減る見通し。60歳以上の人口増は190万人で、高齢者らをいくら活用しても、人口の減り方には遠く及ばない。東短リサーチの加藤出(いずる)チーフエコノミストは「高齢者らは人材供給源の一つにはなるが、決め手ではない。企業は省力化や海外移転をさらに進めるだろう」と指摘。さらに「人手不足による人件費上昇は内需型産業の話。内需の力強さが続かなければ、物価を押し上げる力は限定的になる」と予想する。【工藤昭久、写真も】