新卒中小の採用、職場実習に活路 低い知名度、深刻な人手不足
景気回復により企業の採用意欲が高まり、人手不足が鮮明になってきた。求人倍率が改善して売り手市場となり、就職希望者はますます大手志向を強めている。そのしわ寄せを受けているのが、知名度に劣る中小企業。来春卒業予定者の採用にも苦戦しており、採用難に相変わらず悩んでいる。中小企業経営者の焦りは募るばかりだが、中小企業庁などが中小の人材確保のために取り組むプロジェクトに注目、活路を見いだそうとしている。
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「5人の学生に内々定を出したが、全員が辞退した」(医療福祉関連の機器レンタル・販売業)、「内々定を出したが、学生が承諾してくれない。今後、辞退となる可能性を危惧しており、不安な状態が続いている」(情報通信業)。
リーマン・ショック後の「氷河期」から様変わりした今年の就職戦線。景気回復で採用者数を増やす大手への就職を目指す学生が増え、知名度が低い中小は人材確保にめどが立たず、苦戦を強いられている。
説明会に4人
ただ「内々定を出せるだけでもうらやましい」との声も聞こえてくる。情報通信会社(東京都渋谷区)の人事担当者は「コストをかけて求人広告を出したが、エントリー数は昨年の同時期に比べ半減。採用の見通しが立たない」と頭を抱える。業容拡大に手応えを感じ、新卒採用に意欲を示すが、このままでは就活生との最初の接点となる説明の機会すら生かせない。
機械加工メーカー(同目黒区)幹部は「会社説明会に申し込んだ学生20人のうち参加したのは4人だった」と表情を曇らせる。昨年の出席率は7割だったが、今年は3~4割に激減しているという。
大手が内々定をほぼ出し終えた今、中小による限られた就活生の奪い合いも激しい。合同企業説明会に例年参加している建物総合管理業(同文京区)は「今年は昨年より参加企業が多い。規模の小さな当社のブースには訪れてくれない」と嘆く。
リクルートワークス研究所の来年3月卒業予定者を対象とした大卒求人倍率調査によると、求人倍率は1.61倍。しかし従業員規模別では、5000人以上で0.55倍、1000人以上5000人未満で0.84倍と、大手にとっては人手不足どころか買い手市場となっている。一方、300人以上1000人未満は1.19倍、300人未満は4.52倍と事業規模が小さくなるほど人手不足が明らかになっている。
こうした中、中小企業庁と全国中小企業団体中央会が主催している「新卒者就職応援プロジェクト」が成果を上げている。職場実習を通して採用実績を積み上げているからだ。
実績積み重ね
その一つがシステム開発のシステムシェアード(千葉県松戸市)。サービス事業部主任の諸石大地さん(28)は卒業後、広告代理店で営業職として働いていたが、休日出勤と長時間労働が続き、先行きが不安になり1年弱で離職。その後、同プロジェクトを知り2012年に同社の職場実習に参加した。「何としてでもここでやっていきたい」という強い気持ちで研修に取り組みながら同じ実習生同士のまとめ役のような立場になる。
その様子を見ていた採用担当の中野雄介総務部長が「新規事業の営業担当にうってつけだ」と判断、営業職として採用を決めた。同社は企業向けプログラミング研修を受託する事業を立ち上げ、収益源に成長させようとしていたのだ。そのメンバーの一員となった諸石さんは今や欠かせない戦力に成長した。
■参加者4割就職 親身な対応を評価
新卒者就職応援プロジェクトは今期で5年目となる。応援対象は来春卒業予定の新卒者だけでなく、第2新卒も含まれる。
同プロジェクトの説明会に参加した都内私立大4年生の女子学生(21)は「本当は大企業に行きたいが、自分には無理だろうと思い参加した」と本音を吐露。職場実習で就活生を受け入れる側の経営者は「私も就職する立場であれば、待遇が良く安定している大手企業に行くだろう」と漏らす。
待遇面や安定性で優位に立つ大手が採用で先行するのはやむを得ず、新卒を含め求職者は事業内容が分からない中小に関心が向かわない。それだけ採用は難しく人手不足状態から抜け出せずにいる。
ただ同プロジェクトに参加する企業の8割から「職場実習生を受け入れてよかった」「再度参加したい」と高い評価を得ている。職場実習に参加した就活生のうち就職した人は約4割に達する。仕事内容を把握できる職場実習での親身な対応が受け入れられており、早期離職を防ぐことにもつながる。中小に目を向けさせる重要なポイントが見えてくる。(佐竹一秀)
