総合「威張る上司はいない」 サイバー藤田氏の人材活用法
サイバーエージェントの藤田晋社長は1990年代半ばのインターネットブームで頭角を現した経営者。いまアベマTVで注目を集めている。20代半ばで自分の会社を起こし、人材の確保・育成の課題に常に向き合ってきた。今では同社で育った人材が他社でも活躍しており、人材育成の面でも評価されている。人づくりのポイントは何か、藤田氏に聞いた。
■いきなり新卒7人採用
――会社を立ち上げた時はどうやって人材を集めましたか。
「起業する前にインテリジェンス(現パーソルキャリア)という人材派遣会社で営業をしていました。いい求人広告を出しても人気がない会社には優秀な人材はやってこないということを実感した。だから自分の会社では人材確保こそ一番大事だと確信し、創業から半年後には新卒の求人募集を出しました」
「当時はインターネットが普及し始めたばかり。ネット関連というだけで怪しげな会社と思われた。経験者を中途採用してもいい人材は採れないから最初から新卒を採りにいったんです。初年度に採用したのは7人。今は全員退社しましたが、2年目に採用した人からは役員も育っています」
――サイバーエージェントも当初は何の会社かよく分からないイメージがありました。
「『インターネット総合企業』というイメージで売り出しました。最初に軌道に乗ったのは、実際にクリックされた回数に応じて課金する『クリック保証型』の広告でした。バナー広告やメール広告で展開し、その後、他社広告の取り扱いにも手を広げ、現在でも当社の売上高の半分程度は広告関連が占めています」
「広告産業は人気業種で文系の比較的優秀な学生が希望することが多い。人気のある電通や博報堂は志望者も多いが落とされる人も多いんです。『インターネット総合企業』という看板で、そうした広告志望やネット、IT(情報技術)の人材をとって戦力化していきました」
――採用されて、いきなり広告営業をできるのですか。
■若手を放置、勝手に伸びる
「1990年代半ばから2000年代にかけてはネット市場が急成長していました。客先を回っていれば、何かしら受注できたいい時代でした。できて日の浅い若い企業だから、社内には教えてくれる先輩もいない。だから放置して、勝手に伸びていってもらった。会社として、社員に自分で目標を決め、自主性を持って動いてもらう仕掛けを色々工夫しました」
――どんな風に若手の「やる気スイッチ」を入れるのですか。
「例えば当社には半年に1回、部署ごとの目標を決め、社内報にしてその出来を競わせるコンテストがあります。部署全員で目標を決めることで意思統一が図れます。仲間と一緒に社内報を作りながら自分を見つめていると『目標を達成したい』という気持ちになってくる。そういうやる気を引き出すのが一番の狙いです」
「全社員が対象の表彰式もやります。新人賞など、いくつかの賞を用意し、やる気をさらに高めます。ただ、過度に会社側が演出するようだと表彰台に上がった社員は『会社にのせられている』と感じて一気に熱が冷めてしまう。そのあんばいが大事ですね」
――サイバーエージェントには、上昇志向が高い人材が集まり、猛烈に働くというイメージがあります。
「社風をひと言で表すと、大学生のサークル活動のようにワイワイがやがやとがんばっている感じです。むやみに威張り散らす上司はおらず、上の圧力で働かされているという感覚を持つ人もいないでしょう。自分の成長機会が会社の中にあると思っている人が多いと思います」
「私自身、社長は役割の一つだと思っているから、社員に偉そうに言ったり、威圧的な態度を取ったりすることはありません。少なくともパワハラ系ではないと思います(笑)」
■渋谷の近くに住んで
――会社へのロイヤルティー(忠誠心)を高めるため、ほかにはどんな工夫をしていますか。
「会社は渋谷ですが、近くに住むような工夫をしています。当社には『2駅ルール』という規則があり、会社から2駅以内の近距離に住む社員には、月3万円の住居手当てを支給します」
「5年経過すれば、どこに住んでも5万円支給するようになるんですが、若い人は会社の近くに住んでいる人が多いです。社員が近所付き合いや友達づきあいの延長で仲良くなるので、かっこわるいことはできないという気持ちが自然にわきます。これが倫理観を形作り、不正防止にも役立つ」
――社内結婚が多いと話題になりました。
「男女の比率はほぼ半々で、20代後半の社員がすごく多いですからね。会社が好きな人間が多いから、仕事でつながっているうちに自然とそうなるケースもあるのでしょう。まあ、責任はちゃんととれよというムードもありますしね(笑)」
――意欲が高い人が報われる社風で社内の競争も激しそうですね。
「会社が大好きで、仕事で成功したいと考えている人は確かに多いでしょうね。会社もそうした一生懸命やっている人材を応援します。例えば『これは』と見込んだ社員を選抜し、合宿で今後の会社の戦略を考える『あした会議』があります。役員がそれぞれ5人ほど有望な人材を指名し、色々議論します」
「社長である私が個人的に食事に誘って業績達成のお祝いをしたりすることもしょっちゅうある。皆を平等に処遇するというより、がんばる人を応援する会社です」
■関連会社は100社近く、若手にお任せ
――サイバーエージェントは創業当初から子会社を多く設立し、若手に経営を任せることも多いですね。
「かれこれ100近くの関連子会社をつくり、若手に経営を任せています。めぼしい人材はすぐトップに抜てきします。中には採用内定の段階で社長にした例もあります。こうして取り組んだ新事業の成功率は6割程度。社内ベンチャーでは高い確率だと思います」
「変化の速いネットビジネスでは経営モデルをああでもないこうでもないと考えているうちに陳腐化する。私自身が経営をやりながら覚えたから、若手にも『自分でなんとかしろ』と言って、私が手取り足取り面倒を見ません。若手はもがきながらビジネスをなんとか形にしていくのです」
――管理職にはどういう人を選びますか。
「チームリーダーは、年次や実績よりも人格、人柄で選びます。器が大きく、人の力を引き出せる人物です。能力があっても下の人間をつぶしてしまう人を高く評価することはありません」
