社内で「修羅場体験」を積み成長するにはどう動けばいいか

総合社内で「修羅場体験」を積み成長するにはどう動けばいいか

プロジェクトに参加して
積極的に修羅場を体験してみる

前回から「修羅場体験」について語っています。今回は皆さんが企業の中にいて、いかに「修羅場体験」を積むべきかについて考えてみたいと思います。

最初にお断りしておかなければいけないことがあります。「修羅場体験」は自らに負荷をかけます。ストレスも感じるでしょうし、体力も使います。今、巷で流行りの「働き方改革」とは逆行しかねません。それでもなお、キャリアにとって修羅場体験は必要だと思います。

さて、企業、特にある程度の規模以上の企業で一般的な修羅場体験を味わえる機会としては、定常業務以外のプロジェクトがあります。これは、会社にいながら今までと全く異なる体験をする、またとないチャンスです。ところが、多くの人はプロジェクトにあまり積極的に手を挙げた経験がないようです。

確かに、多くのプロジェクトは企業側が人選をします。自分の意思と関係なく、任命された人が参加するというイメージでしょう。

しかし、社員の誰かが積極的に手を挙げてきたら、誰だって好意的に思うものです。様々な事情があるでしょうから、必ずしもその人がメンバーに加えられるとは限らないのですが、可能性は十分にあると思います。

だから、公募に限らずとも、自分に興味のあるプロジェクトが立ち上がったことを知ったら、積極的に手を挙げてみることをお勧めします。

もちろん、経営陣の一員でもない限り、プロジェクトの発足前から知っているということは少ないかもしれません。それでも臆せず、手を挙げる。たとえ結果が「NO」であっても、簡単には諦めずに食い下がる。「何が足りないのか」「どうすればいいのか」などをヒアリングしながら、自分がどれだけその分野、その仕事に想いを持っているのかをアピールし、「下働きでもいいから参加させてほしい」と頼むべきでしょう。

多くのプロジェクトは本業との兼務になります。修羅場体験は、これまでにも何度も説明してきたように、短い時間で急速に経験し学ぶことを想定していますから、人事異動を伴うものではそもそもないほうがいいのです。ちなみに、修羅場体験としても有効だと思う人事異動は、海外赴任でしょう。

大企業であれば、プロジェクトはたくさんあります。その中から自分の興味や関心、磨きたい方向性を吟味して手を挙げてください。通常の学習とは違います。あくまでもアクションラーニングですから、全くできない分野、大事そうだけど興味のない分野を選んではいけません。そのプロジェクトに入ることで、能力を伸ばしたい分野を見定めて手を挙げてください。

プロジェクトで目立っても
本業がおろそかになったらアウト

これは、ある化粧品会社の話です。その会社では戦略的OJT研修と呼ばれるアクションラーニングを行っていました。OJTをする側とされる側の人間がペアで受講する研修です。しかも、OJTをされる側も、新人などではなく、若手でも課長一歩手前の等級の人材を、まさにさらに一皮剥けるための研修、そのために仕組みとして修羅場を与えるという研修でした。

その事例を紹介しましょう。その方(OJTをされる側)は男性で、宣伝部に在籍していて、すでに国内宣伝のエキスパートでした。ただ本人としては海外志向が高く、特に中国での宣伝業務に携わりたいという希望がありました。

たとえ国内宣伝のエキスパートであったとしても、一度も経験のない海外宣伝の事業には、手を挙げてもそう簡単には受け入れてはもらえません。つまり、いきなりの人事異動は難しいということです。

そこで彼は、たまたま戦略的OJT研修の対象者に選ばれたこの機会を利用して、自分の夢を実現させようと考えたのです。上司であるOJTトレーナーとともに、実現の方法を探りました。結果、OJTトレーナーの尽力により中国室に席を一つ用意してもらったのです。もちろん最初から宣伝業務を任されたわけではありません。手弁当での業務見習いといった立場でした。

さらに彼は、Off-JTとして、中国語講座に通い始めました。

ここまでくると、「こいつは本気だな」と周りが思い始めます。そしてOJTが終わった半年後に、彼は中国における化粧品宣伝に関する自身の考察をまとめあげていたのです。自分に課した、ワンマンプロジェクトです。それだけの熱意を形にしてみせた社員を普通会社は放ってはおきません。結果、彼は夢が叶って、この場合は人事異動にまで結びつきました。

彼のように制度を利用できればいいのですが、そうした制度がない場合はどうしたらいいのでしょうか。それは徹底した人脈づくりと発信=働きかけです。後者は自己PRと言ってもいいでしょう。そうやって、修羅場を買う準備をするわけです。

ここで注意すべきは、先ばかりを見ないで、足元もちゃんと見なければいけないということです。

通常、プロジェクトは兼務です。そのプロジェクトに真面目に取り組まなければいけないのは当然ですが、だからといって本業をおろそかにしてはいけません。その覚悟と努力が必要だからこそ、修羅場なのです。

非公式なコミュニケーションが
自分の未来を決するかもしれない

「発信」という意味で、社内で重視したいのは斜めの関係のコミュニケーションです。

直属上司とのコミュニケーションは当然重要ですが、上司にしてみると本人のチャレンジを認めれば、大切な戦力を失うといったマイナスの利害が生じる可能性があります。そうなると、部下のキャリアは大切にしたいが、さりとて異動されても困るといったジレンマに陥ることになります。

結果、本人に思いとどまらせるといった行動に出ることも考えられます。その点、斜め上の上司は直接的な利害がありません。いい意味で、無責任にアドバイスすることもできますし、影で協力をしてくれるかもしれません。

 そのため、自分がどういう方向に行きたいのか、どんなことを考えているのかについて、日頃から積極的にアピールしておくと、何かチャンスが巡ってきた時に声をかけてくれるかもしれません。そんな付き合いも大切です。そうしたアピールは会議などの正式な場ではない場合がほとんどです。ノンルーチンの仕事は意外と立ち話や無駄話から始まり、進むものなのです。

つまり、斜め上の上司との会話のような、非公式なコミュニケーションこそが、キャリア形成上に大きな効用をもたらせてくれるものだというわけです。アメリカの社会学者、スタンフォード大学のマーク・グラノヴェッター教授が言う「弱い紐帯(ちゅうたい)」の重要性です。緊密なつながりよりも、弱い結びつきの関係性からむしろキャリア形成に直接結びつく情報が多く得られるという研究です。

そうした斜め上の上司との関係に近いものとして、お客様や取引先との関係もあります。外部の方ですからあまり不用意なことを言ってしまうと、「あいつ転職したがっているぞ」といったあらぬ噂が立ってしまって窮地に陥る危険性もありますが、「こんな仕事にチャレンジしてみたいんですよね」といったポジティブな表現で発信しておくと、ここからも偶然の輪が広がる可能性があります。

自分の考えを広く発信することで、ぜひ偶然を味方につけてください。