総合「出世に興味ない」若者部下をヤル気にさせる手はあるか
ドクターシーラボなどで社長を経験し、現在はコンサルタントとして多くの企業の上場・成長に貢献し「成長請負人」と呼ばれる池本克之氏が、このたび著書『「いまどき部下」を動かす39のしかけ』を出版した。今の若者の言動がまったく理解できないと悩むマネジャー諸氏に、池本氏が「いまどき部下」の動かし方を伝授する。
草食系のいまどき部下に
あなたならどう対応する?
現在私は、組織学習経営コンサルタントとして、大企業からベンチャー企業まで多くの企業にアドバイスをしています。なお、組織学習経営とは私が開発した、自律した個人が学びながら成長し続ける組織を形成するためのメソッドです。それに基づいて、「社員が育たない」「部下が自発的に動いてくれない」といった問題を解決する手助けをしています。
これは私がコンサルティングをしている、とある運送会社での話です。
みなさんだったらどう対応するか考えてみてください。
運送業は力仕事ということもあり、その会社は高卒の社員を多く採用していました。高卒の社員を直接指導するのは、30代の中堅社員です。
以前は、高卒の社員にはやんちゃな人が多く、彼らに仕事を叩き込むという感じで、毎日上司の罵声が飛び交う職場だったそうです。
けれども、「最近の若者は草食系だ」といわれるように、入ってくる高卒の社員はだんだんおとなしくなっていきました。
その結果、いろいろと困ったことが起こるようになりました。
報告するよう指示しておいても
いっこうに報告に来ない
たとえば、こんなことがあったそうです。倉庫での仕事をさせるにあたり、上司は新入社員たちに「この仕事を、こうやるように」と指示を出し、「終わったら、次の仕事を教えるから報告に来るように」と伝えました。
ところが、その後、誰も報告しに来ません。1時間ほど経って、簡単な作業だからさすがに終わっているはずだが……と見に行くと、やはりとっくに作業は終わっていたようで、みんなスマホをいじっています。
上司が、「終わっているなら、どうして報告に来ないんだ?」と聞くと、「はい……」と蚊の鳴くような返事が返ってきます。上司は怒鳴りつけたいのをグッとこらえて、次の作業を指示しました。
そして、「終わったら、次はちゃんと報告に来るんだよ」と念押ししたところ、新入社員たちは素直にうなずいたそうです。
しかし、そのあともやはり、誰も報告しに来ません。「まさか……」と倉庫に見に行くと、作業は終わっていて、またさっきと同じように新入社員たちはスマホをいじっています。
「一体なぜこいつらは報告しに来ないのか」――さすがに上司は堪忍袋の緒が切れてしまい、「どうして報告に来ないんだ!」と新入社員たちを叱責しました。すると、なんと「一応、報告しに行ったんですけれど、忙しそうだったから、話しかけづらくて……」とビクビクしながら答えたのです。
さて、あなたがこの上司だったら、このあと、どうするでしょうか?
(1)報告に来なかったことを徹底的に責め、報告の重要性をわからせる
(2)話しかけづらそうなオーラを漂わせていたことを反省し、今後は話しかけやすいオーラを出すように心がける
(3)新入社員たちの中でリーダーを決めて報告させるようにする
それぞれの選択のシミュレーションをしてみましょう。
厳しく教え込んだほうがいいか
優しく親しげに接するべきか
(1)の場合、現場は大混乱するでしょう。
じつは、この会社の上司は、(1)を選択しました。上司は仕事を叩き込まれた世代なので、自分がされたように報告の重要性を厳しく教え込もうとしました。「報告に来いっていわれたら必ず来るんだ!」と新入社員たちを責め立てたのです。
しかし……。いまどきの若者は叱られることに慣れていません。
彼ら、彼女らはすっかり萎縮してしまいました。
そして、なんと「報告に行きたくないから、上司が見に来るまで仕事を終わらせず、ゆっくりと作業をしよう」と考え、それを実行したのです。
それを知った上司は、さらに激しく叱りましたが、まったく効果はなし。それどころか、会社に来なくなる社員もいました。
(2)の場合、話しかけやすいオーラを出すよう努めても、結局、部下は報告しに来ないでしょう。
なぜなら、いまの若者は、人に対して必要以上に遠慮する傾向があり、ちょっとでも「忙しそう」だと感じたらもう話しかけるのをためらうのです。いついかなるときもニコニコしてウェルカムムードを醸し出す上司になるなんて無理です。
となると、ベターなのは、(3)の選択肢といえます。もっとも合理的なマネジメント法だと思います。
しかし、誰かをリーダーに決めようとすると、そこで混乱が起きる可能性もあります。いまはただ報告をするだけのことであっても嫌がる若者が多く、もし上司が強制的に決めたら、辞めてしまったりするのです。
(3)のような任せ方も通用しないぐらい、いまはマネジメントの転換点に来ているといえます。
ただ、私は若者の行動の中にも光はあるのだと思います。「上司に迷惑をかけたくない」という思いから言い出すことができなかったのなら、それはそれで気を遣える証拠であり、彼ら、彼女らなりの優しさや思いやりの表れでもあります。そういったことがわかれば対処法も考えられます。
いまどきの部下の考えや特徴をよく知る。
やはりそれが重要です。
6割の若手社員が
出世を望んでいない
株式会社クロス・マーケティングが2015年に実施した「若手社員の出世・昇進意識に関する調査」によると、今後出世をしたいか、という問いに対して、「出世はしたくないと思っている」と答えたのが15.8%、「出世にはあまりこだわっていない」が43.4%。じつに6割の若手社員が出世を望んでいないのです。
出世したくない理由の1位~3位は、
1位「ワークライフバランスのとれた生活をしたいから」
2位「責任の範囲が広がるのが嫌だから」
3位「出世をしても給与・年収がそれほど上がらないから」
です。
やはり、責任を取るのを避けているのです。
これは若者が現実を見据えている、ということでもあります。プライベートを犠牲にして働いたとしてもさほど給与は上がらず、その中で出世しても責任だけが重くなるという世の中の現状を見て「割に合わない」と感じているのです。
このことは、「いまどき部下の動かし方」を考えるうえで重要な要素になってくるでしょう。
いままでのように、「真面目にコツコツ働いていたら、いつか報われるときが来る」と諭しても、いまの若者たちには響きません。精神論では若者を動かせなくなったのです。