新卒志望してない学生を口説くのがニトリの伝統 「通年採用」で優秀な人材を獲得する
2018年4月入社の内定式が10月1日(2日)に行われたかと思えば、既に2019年入社の採用活動が始まっている。では、各社が求めている人材像とは?──本連載では各業種の人気企業を対象に、新卒採用担当者のインタビュー記事を連載していく。
今回は、「お、ねだん以上。」でおなじみのニトリ。2017年2月期決算では、30期連続増収増益を達成。今年6月には念願であった東京・渋谷への出店も果たした。今後は海外での展開も加速させる。
まさに快進撃を続けるニトリ。支えるのは、独自に作り上げてきたSPA「製造物流小売業」という事業モデルだ。商品企画や材料調達、製造、物流、販売など、すべての工程を自社で行っている。この徹底した「自前主義」が、コストダウンを実現させ、消費者ニーズにあった商品を次々と生み出してきた。
「ニトリというと店舗のイメージが強いが、実はそれは氷山の一角。その裏側には実に様々な仕事がある。学生にはそれを知ってもらいたい」と話すのは、人財採用部の永島寛之マネージャーだ。「ニトリを志望していない学生に来てもらいたい」と語るその真意とは。

エントリーシートの段階で、1万5000人からの応募があるようですね。
永島:そうですね。そこから8割くらいが面接に進みます。1万人くらいですね。
1万人ですか。相当な人数ですね。どのように対応しているのですか。
永島:実は、新卒採用チームには40人が所属しています。学生とは1対1で40分ほど話します。1次面接から最終面接まですべての面接でそうです。
40人も新卒採用チームに配置して、1対1で面接する。会社が採用に相当力を入れていることの表れですよね。
永島:創業者である似鳥昭雄会長自身、採用で会社をつくってきたという思いがありますから、その部分への投資は惜しまないのでしょうね。
まだニトリが北海道の小さな家具店だったころ、新卒を採用するのにとても苦労していました。似鳥会長は大学に行って、学生に学食をおごり、「食べている間だけでいいから話を聞いてくれ」と口説いたのです。そのときに、似鳥会長に共感して入社したのが、今の白井俊之社長だったり、専務取締役の池田匡紀だったりするわけです。
どのような人材を求めているのですか。
永島:ニトリを志望していない学生ですね。金融に行きたいとかメーカーに行きたいとか、そういう人を採用してこそ当社の成長はあると思います。
「ニトリを志望していない学生がほしい」というのは驚きですね。全国に店舗がありますから、学生の方も消費者としてニトリにはなじみがあるわけですよね。ファンもいると思います。あえてニトリを志望していない人を採用したいと思うのはなぜなのでしょうか。
永島:それはやはり、ここ数年間で当社の事業が変化しているからだと思います。2017年2月期で売上高5000億円を超えました。でも、既存ビジネスだけでは限界があります。だから、雑貨類メーンの都市型店舗「デコホーム」の展開や、海外進出など、新しい方向に事業領域を広げようとしています。
我々は、「2032年に年間売上高3兆円、3000店舗」を目標に掲げました。その目標を達成するには、異分野を志望していたような考えがまったく違う人を採用することが大切なのです。成長の原動力になりますから。
他業界を志望しているような学生をどのようにして振り向かせるのですか。
永島:学生の皆さんはだいたい、金融、商社、メーカーといったように、まず業界で選んでいると思います。一度商社を志望してしまうと、小売業のイメージが強いニトリは選択肢として浮かびません。
実はニトリは、商品開発から製造、物流、販売まですべて自前で行っています。世界中で原材料を調達していますが、これも自社の社員が行っています。知られていないだけで、ニトリには様々な職種があります。このことを就職活動の初期の段階で知ってもらいたい。志望業界が固まる前に、「ニトリという選択肢もあるんだ」と思ってもらいたいのです。
採用活動では、初期段階でどのような打ち込みができるのかを非常に考えています。
具体的にはどのようなことをしているのですか。

永島:就職活動の初期段階で知ってもらうために、広報活動にはとくに力を入れています。どうやったら学生にニトリのことを知ってもらえるかを考え、様々なアプローチに挑戦しています。
例えば、合同説明会では表面にフローチャートを描いた袋を配布しています。「旅行は計画を立てる時間が1番好き」「流行に流されない」などの項目にYES、NOで答えていくと、向いている仕事として、「商品開発」「グローバル・新規事業」「広告宣伝」などにたどり着くものです。そして、これらの仕事はすべてニトリでできる、とアピールするのですね。
広報活動と言えば、インターンシップも大きな広報活動になりますよね。
永島:もちろんインターンシップにも力を入れています。
当社のインターンシップは全3回で行われます。3回目は一部の学生を対象に商品開発合宿を実施しています。ニトリでの商品開発を疑似体験してもらうものです。
店舗の仕事は、実際に見ることができるので学生にも分かりやすいと思います。でもそれは氷山の一角です。それ以外の見えていない90%を、できるだけ早い段階で知ってもらいたい。

「ニトリって結構おもしろそう」と思ってもらうため、とにかく先手を打つのですね。
永島:そうですね。初期の段階では、志望動機はあまり重視していません。2019年卒のエントリーシート(ES)では、志望動機の欄も設けません。志望していない人に志望動機を語れと言っても仕方ないからです。面接の中で志望動機が出来上がっていけばよいと思っています。でもさすがに最終面接の段階では志望動機が固まっていてほしいので、面接の回数を増やすこともあります。
人によって、面接の回数を増やすのですか。
永島:基本は3回ですが、ニトリのロマンとビジョンと学生のロマンとビジョンが重なるまで徹底的に1対1で話します。そのため面接の回数が増える人もいれば、減る人もいます。優秀だけれども志望度が低い、でも当社にはまだ興味を持っている、というような学生であれば、面接担当者を変えてさらに面接を重ねることもあります。話をして、志望動機を固めてもらうためです。
「この学生が欲しい」と思ったらそこまでするのですね。
永島:当社の面接は、面接というより1対1の説明会のような感じです。相手のやりたいことを聞いて、「それならニトリにはこういう仕事があるよ」というふうに話していきます。当社の場合、早い段階から面接をしているので、練習で受けに来ている学生もいます。でも私はそれでもよいと思っています。
学生を選ぶというより、口説く。この面接スタイルはニトリの伝統なのだと思います。創業間もないころ似鳥会長が学生だった白井社長を口説いて入社を決意させたときのように、1対1でじっくり話します。
当社のことを知ってもらい、学生のことも知る。面接慣れしていなくても構いません。緊張してボロボロの学生もいます。そういうときは、「まず落ち着いて」と。普通の面接なら落ちてしまうような学生でも、落ち着かせてじっくり話を聞いてみると、とても魅力的だったりするのです。
小手先のテクニックではなく、その人が20年以上かけて培ってきた人間力を見る、という感じでしょうか。
永島:そうですね。人間力というとざっくりしていますが、求める人物像というのは、似鳥会長の言っている「成功の5原則」に行きつくと思います。「ロマン・ビジョン・意欲・執念・好奇心」です。成果を出す執念や意欲、あるいは何かにチャレンジする好奇心といったものが垣間見えるかどうか。特別な経験をしていなくても構いませんが、この5つがあるかどうかを見ています。
ニトリは通年で採用しています
内定者に対してはどのようなことをしていますか。内定者は約500人と伺いましたが、それだけの学生をつなぎとめる工夫はありますか。
永島:早期に決めてくれた学生に対しては、当社が毎年実施しているアメリカセミナーの一部に連れていきます。また、ベトナムに自社工場があるので、その見学に連れていくこともあります。工場見学は、特に理系の学生にウケがよいです。将来的に生産管理をやるにしても、最初は皆店舗勤務からスタートするので、「先の姿をきちんと見せられるか」がポイントになります。
当社は、「全社で採用する」という考え方を持っています。週に2回といったペースで自由参加のイベントを開いているのですが、そこに商品企画など各担当者を呼び、話をしてもらっています。
あとは、「未来会議」で学生に提案をしてもらうこともあります。未来会議は、中堅社員が白井社長に事業提案するものなのですが、これを学生にやってもらいます。理系の学生だと、IoT家具といった、私たちと少し目線の違った提案をしてくれることがあり、面白いですね。白井社長は学生たちとの未来会議をとても楽しそうにやっていて、真剣に向き合っています。
理系の学生の採用も増えているのですか。

永島:内定者のうち10%ほどは理系です。割合は数年前とあまり変わっていませんが、「どのような研究をやってきたか」を具体的に見るようになりました。昔はとにかく理系を増やそうとしたこともあったのですが、今は数を追うというよりも、やってきた研究が将来ニトリで生きるのかを見るようにしています。
ベトナムでまた新しい工場をつくり、もっと材料の段階から扱おうとしているので、高分子化学を勉強しているような人は欲しいですね。メーカーに技術職として入るような人を採用しています。
もちろん、ニトリとは直接関係なさそうな研究をしていた人も採用しています。サメの歯を研究していました、キウイの種を研究していました、というような人もいて面白いですよ。
理系の学生にはどのようにアプローチをしているのですか。理系の学生にとっては、ニトリは選択肢として思い浮かびにくい気がします。
永島:生産管理や開発といった分野は、理系の学生になじみがあります。
あとは、「ニトリって実はロジックを大切にしているんだよ」というのを打ち出すと響きますね。例えば、新宿タカシマヤタイムズスクエア店を見てもらうと、いかにもきれいにコーディネートされていて、インテリアコーディネーターが感性で店舗をつくっているように見えます。
でも実は、あらゆるところに「ロジック」が走っているのです。どうやったら店内を大きく回ってもらえるか、といった理論です。「感性とロジックのバランスがあるから、ああいうお店ができる」というような話をしていくと興味を持ってもらえます。
白井社長も理系出身ですね。
永島:そうです。白井社長も入社を決めたのは、「今ないものをつくる」という似鳥会長の言葉だったそうです。理系の人は、まだ見えていない新しいものをつくる、ということを面白いと思ってくれることが多いです。
当社は、2032年までに年間売上高3兆円を目標にしています。現在は約5000億円ですから、あと2兆5000億円はまだ見えていない部分なのです。今ないもので作っていくしかありません。それを「面白い、乗ろうかな」、と思ってくれるかだと思います。
外国人留学生も採用しているのですか。
永島:ここ4~5年、力を入れています。5年前は10名でしたが、昨年は89名になりました。内定者の2割が外国人留学生です。
日本に留学している学生を採用する場合と、中国に帰りたいという留学生をニトリチャイナで採用する場合があります。ニトリチャイナでは300人の採用を予定していて、そのうちの100人は日本に留学している学生で採用したいと考えています。
あとは、海外に留学している日本人学生の採用にも力を入れたいですね。ボストンキャリアフォーラムにも関心があります。今年の10月には、3人の社員をアメリカに派遣してアメリカの大学10校くらいを回って説明会を開きました。
話を聞いていると、かなり柔軟に対応している印象ですね。
永島:そうですね。採用も通年で行っています。7月の段階で目標人数は達成していますが、それ以降も採用は続けています。留学から帰ってきた学生や、公務員を志望していた学生など、優秀な学生はたくさんいますから。「いつでも来てください」ということです。
