総合「ディズニー流」人材育成法、どんな職場でも3日あれば変わる!
ディズニーのキャストを見て、「なぜあんなにいきいきと働けるのだろう」と思ったことはありませんか?あなたの職場でも、「みんながあんなふうに、楽しく前向きに働けたらいいな」と憧れたことはないでしょうか。
結論から言いましょう。どんな職場であっても、ちょっとしたコツを押さえるだけで、メンバーが「ディズニーキャスト」に変わります。みんながいきいきと働き、成果を上げ、チームとしてより輝くことができるようになります。
私は、大学卒業後に、東京ディズニーランド・ディズニーシーを運営するオリエンタルランドに17年間勤め、人材トレーナーとして10万人以上のキャストをディズニーの表舞台へと送り出してきました。ディズニーで培った経験を生かし、現在はサービス経営やホスピタリティ教育に特化している西武文理大学で、教員をしています。
これまでの人材育成経験から言えるのは、ディズニーには、たんに褒める、叱る、だけではない、「魔法の教え方」があるということです。
ディズニーのキャストは
わずか3日で巣立つ
アトラクションや店舗にもよりますが、ほとんどのキャストはわずか3日間の研修だけでデビューします。ディズニー流育て方の最大の特徴に、「ゴールを見せること」「感動を体験させること」「行動を見守ること」の3つが挙げられます。そして、それらを取り入れたら、どんな職場でも、ディズニーのキャストのように自分で考え、自ら進んで動くような人材を育てることができるのです。
ディズニーキャストの使命は「ゲストにハピネスを提供する」こと。そのゴールに向けて日々仕事をしています。
私が新人時代、研修でパーク内の清掃をしている時でした。10歳くらいの女の子とその傍で佇む父親の姿がふと目にとまりました。女の子の表情は沈みがちで、父親は途方にくれた様子でした。
私は緊張しつつも、思い切って「どうされましたか?」と声をかけてみました。すると父親が「ミッキーに会える場所がわからなくて……」と弱々しく答えました。そこで私は、ミッキーマウスのいるアトラクションへ案内しました。
1時間ほど経過して、その親子がわざわざ私のところまで戻って来てくれました。
女の子の顔は満面の笑みが浮かんでいました。
「お姉ちゃん、ミッキーに会ったよ!」と女の子が元気に私に言いました。父親からも、何度もお礼を言われました。そしてまた、自分たちのことについても話してくれました。父親は娘と離れて暮らしており、その日は大切な面会日であったこと。だからどうしても娘の大好きなミッキーに会わせてたかったこと……等々。親子が心から喜んでいる姿を見て、「ハピネスを提供するとはこういうことなんだ」と初めて実感し、とても温かい気持ちになりました。
その日の研修報告会で、このエピソードを報告する機会を得ました。その時、私は感極まって泣いてしまったのです。他のキャストも共感し、涙を流してくれていました。
こうして本音を語り、素直に泣くことが許される人材育成の場は、今思えばとても素晴らしい職場とも言えます。「こんな素敵なところで働いているんだ!」というお客様との感動エピソードをシェアすることで、個人に起こった卓越した経験を全体で共有することができます。さらにチームメンバー全体の「自己効力感」(*)を高めることにもつながります。
*自己効力感:課題に直面した時、こうやれば上手くいくはずだという期待に対して、自分はそれが実行できるという期待や自信のことをさす
リーダーこそメンバーの
「内発的動機づけ」を意識する
例えば、メンバーに仕事を頼む際に、特に忙しい時は相手に指示だけを伝えて終わらせがちではないでしょうか。もしそこでメンバーが「この作業は何のためですか」と聞いてきても、「とりあえずやろう」などと言ってませんか。
それでは、メンバーはなかなか成長しません。メンバーはそのうち自発的に考えることを止めて指示待ちの人間になるか、あるいは「押しつけられてばかりいる」と不満を持ち、あなたの元を去っていきます。
ディズニーでは、キャストのモチベーションを何よりも大切にしています。だからこそキャストに対し、指示を押しつけたり、頭ごなしに従わせたりするようなことは行いません。では、どうやって指示を出しているかといえば、必ずその行動の裏にある、理由も合わせて伝えるようにしています。
キャストの立ち姿に関しては「肩、腰、膝、くるぶしが一直線になるように立つ」ことが推奨されています。その理由はその姿勢が最も体が疲れず、笑顔でいられるからです。
またパーク内の清掃を担当するカストーディアルキャストは、「チリトリは、腰骨の辺りにつけて持ちましょう」と先輩から教わります。なぜかといえば、走ってきた子どもにチリトリが当たることを防ぐためです。
このようにルールや指示というのは、その裏に必ず理由があるはずです。それを併せて伝えることで、メンバーも納得してそれに従うことができるのです。
アメリカの心理学者エドワード・デシは「リーダーはメンバーの『内発的な欲求』を満たすことがモチベーションアップにつながる」と説いています。
この内発的な欲求を要約すると、次の3つとなります。
(1)「自律性の欲求」
(2)「有能さへの欲求」
(3)「関係性の欲求」
これらを満たすことを意識すると、メンバーのモチベーションをどんどん高めることができるはずです。では、具体的にどのようなことを意識すればいいのでしょうか。
先述したように「指示する時には理由を添える」というのは、本人が納得した上で行動してもらうための手法であり、「自律性の欲求」を満たします。その他にモチベーションアップにつながるノウハウとして、「上手く目標設定を行う」ということがあります。
まず、できるだけ具体的に目標を設定することで、それを達成したいという「有能さへの欲求」が刺激されます。「今期の目標は○○円で、あと○○円で達成できるから、頑張ろう」というように、数字や事実などで明確に伝える必要があります。そこで注意すべきは目標の設定の仕方です。目標は簡単にクリアできるものではなく、能力より少し高めに目標設定すると「有能さへの欲求」がより高まります。
さらに、この目標を本人に定めてもらうように計らうことができれば、「自律性の欲求」を満たすことにつながります。また、目標を仲間の前で予め発表することで「関係性の欲求」も上がります。これらを上手く組み合わせれば、あなたのメンバーもディズニーのキャストのようにモチベーション高く働いてくれるでしょう。
いかがだったでしょうか。いつの時代も、どんな職場でも、仕事をつくるのは「人」であり、人と人との関わりを通じてしか感動は生まれません。
組織の成長のカギを握っているのは、人材育成なのです。実践してもらえれば、きっとあなたの職場の雰囲気は変わり、メンバーがいきいきとして、ハピネスの輪が生まれます。
そうしてチームが輝けば、そのハピネスを受け取ったお客様は必ずまた、あなたに会いに来てくれることでしょう。
(西武文理大学講師、元ディズニーのカリスマ人材トレーナー 櫻井恵里子)
