ファナックがIT人材を100人中途採用するワケ

総合ファナックがIT人材を100人中途採用するワケ

ファナックが100人に上るソフトウエア技術者の中途採用に動いている。同社はロボットや工作機械の頭脳となるNC(数値制御)の世界大手メーカー。高い競争力の半面、「孤高」ともいわれる研究開発姿勢を貫いてきたファナックがこれだけの規模で中途採用を活発化するのは異例だ。知見を持つ外部の人材を積極的に取り込むことで、製造現場におけるIoT(モノのインターネット化)で絶対に負けないという覚悟を示している。

ファナックが募集しているのはIT(情報技術)分野などでの勤務経験を持つソフトウエアの開発者だ。中途採用の募集要項によると、想定年収は440万から1100万円とある。勤務地は山梨県忍野村の本社。サイトでは山梨の住環境や子育て環境のよさ、富士山麓に広がる職・住一体型の51万坪もの会社敷地内にあるジムやカルチャーセンターなど充実した厚生施設が紹介されている。

国内最大の見本市「CEATEC(シーテック)」へ初出展

ロボットメーカーであるファナックがなぜソフト技術者の一括大量採用に踏み切るのか。

その理由は10月2日にファナックがサービスを開始した「フィールドシステム」にあるといえるだろう。ファナックは同システムをIoTのプラットフォームと位置づけており、AI(人工知能)を活用することで、ネットワーク化した製造現場の様々なロボットや工作機械などを運用・管理する中枢機能を果たすという。

10月に開かれた家電・ITの国内最大の見本市「CEATEC(シーテック)」にも初出展するなど、アピールを強化している。

外部と連携しつつ、中途組で戦力補強

ファナックが考える製造業のIoT化についての説明はこうだ。①工作機械・ロボット・産業機械等が自ら学習し自立的に動く。②人が気付けない変化に気付く。③機械同士が協調する。④熟練者のスキルを学ぶ。これだけの機能を発揮できれば賢い工場の実現を力強くけん引するだろう。

だが、ファナックはITシステムの開発会社ではない。そこでフィールドシステムの開始にあたり、米シスコシステムズやNTTグループなど内外の有力専門企業と提携した。引き続き、その都度、提携企業に実務の多くを委ねるという選択肢もあり得るが、ファナックは自社のIT部門強化を並行して進める方針のようだ。

確かにIoT化はまだ始まったばかり。外部企業と提携するにせよ、継続的にシステム改善やサービス拡充などの開発作業をファナックが主導権を握って進めるのであれば、中途組による即効的な自社の戦力向上は重要な意義がある。

素早い対応は創業家のトップダウン

ただ、IoT化の流れの中でIT技術者の争奪戦は人材マーケットで激化している。ファナックが思い通りの人材を獲得できるかは分からない。それでもファナックが100人規模もの一括採用を表明したのはIoT化に乗り遅れれば、従前の競争力を維持していけないという強い危機感の象徴といえる。

このスピード感は創業家ゆえのトップダウンの利点といえるだろう。稲葉善治会長兼CEO(最高経営責任者)はかつて日経ビジネスのインタビューで「短期的な収益見通しには一喜一憂せず、将来を考えた研究開発や設備投資を躊躇しない」と語った。

スタッフを急増させれば費用負担が先行するといった影響は避けられないが、方向性さえ間違っていなければ、いずれ大きなリターンが見込める。一般的に、創業家によるマネジメントには賛否両論あるが、この長期的な視野は創業家の強みの1つだ。短期的な通信簿にこだわるサラリーマン経営者ではなかなか難しい。健全な危機感とトップダウンがうまく組み合わされば、変化対応に成功する可能性も高まりそうだ。