総合男性社員の育児休業取得率9割を実現 バリューを徹底し、社員を信頼することで急成長したメルカリ
(聞き手:株式会社natural rights代表取締役 小酒部さやか)
■プロフィール

- 石黒卓弥さん
- 成長期のNTTドコモに新卒入社、ドコモでは営業、人事、新規事業会社立ち上げ、その後に新規サービスの企画運営を担当。2015年より現職。メルカリでは採用を中心とした人事企画を担当。
Twitter:https://twitter.com/takaya_i
なぜ男性社員の育休取得9割を実現できたのか
――貴社の小泉文明社長が2ヵ月の育児休業を取得することが話題になっていますね。また、貴社では育児休業を取得した男性社員の割合が該当者の9割以上になるともうかがっています。
男性で育児休業を取得した人は、昨年だけで26人です。該当者のうち92%以上が育児休業を取得。エンジニアや管理職など、職責にかかわらず幅広い層が取得しています。
――男性社員が育休を取得する際に、仕事の穴埋めはどのように行っているのですか。
弊社は現在、急速に変化している状況なので、必要に応じてプロジェクトの再構成があり、メンバーも柔軟性をもって配置されています。そのため、プロジェクトメンバーにとっては、育休取得者の仕事をフォローするために別のメンバーを再配置したり、新たにメンバーを採用したりすることは自然な変化のひとつです。このような弊社の柔軟な働き方を支えるものとして、全社員がスケジュールをWeb上で共有していることや、チャットを使ってリアルタイムに人の動きがわかることなど、さまざまなツールの活用があげられます。
――育休中の給料を保障する制度があるそうですが、その概要をお聞かせください。また、育休期間はどのくらいですか。
出産・育児・介護を目的として休暇を取得する男性社員の場合、2ヵ月間を目安に給料を保障します。国からの手当は最大6割程度なので、その差額を保障する金額を復帰時に一時手当として支給します。育休の期間は法律通りですが、給料保障期間の2ヵ月がひとつの目安になっていますね。中には、1年間の取得を希望する社員もいます。
――企業によっては、長期間の離職で仕事の能力が下がると考え、育休取得を敬遠する経営者もいます。
弊社では、そのようなことはありません。IT業界は技術の変化がめまぐるしいのは確かですが、キャッチアップはできると考えています。それに、育児や介護に携わることで幅が広がり、成長することができるとも考えています。
――育休が取得しやすく、期間も長期にわたると、会社全体が人手不足になるなど影響は出ませんか。
育休に関係なく、やりたいことが多すぎて常に人手不足です(笑)。それでも、休まれては困る、というメンバーはほとんどいないのではないでしょうか。情報が簡単に共有できるので、誰かが代わりに仕事を遂行できるようになっているからです。また、困難な状況だからこそ楽しもう、と考える人ばかりです。
手厚い支援制度を整えたのは、メルカリの理念に共感し、目的を遂行できる情熱をもった人は貴重で、失いたくないからです。復帰してもらうメリットの方が採用コストと比べても圧倒的に大きく、理にかなっています。
社員を信頼することがメルカリの強みに
――マタハラで問題になるのは、育休取得者の穴埋めが評価に反映されないことで、これを“逆マタハラ”と呼んでいます。貴社のように流動性が高いと逆マタハラは生じにくいと思いますが、一方で、評価は煩雑になりませんか。
弊社ではマネージャーが部下を評価していて、3ヵ月ごとに評価を行い、1on1(面談)を活用しながら目標遂行度を確認しています。たとえ評価に手間がかかるとしても、必要なコミュニケーションの一環ですし、それができる人をマネージャーにしているので、不満が出てくることもありません。

また、目標は設定しますが、数字を達成するためにメルカリのバリューである「Go Bold」「All for One」「Be Professional」を犠牲にすることはありません。これらのバリューが評価軸となり、守られている以上、現場に裁量権を任せても煩雑になることはない、と考えています。ルールを厳格に定めると、そこに意識が行き過ぎてスピードが損なわれ、柔軟な対応ができないことがあります。状況は常に変化しているので、現在の会社の規模はこれが最善の方法だと考えています。
――現場に対する信頼が、貴社の強みになっているのですね。
弊社では上司の決裁のための事前準備はほぼ不要で、それぞれの裁量に任せている部分が多いのですが、社員をそれだけ信頼しているからです。社員への信頼感があるからこそ、トップが全体の素早いかじ取りを行なえるのです。新しい社員が入社した後は、メンターやマネージャーがうまく立ち上がっているかどうかをサポートしますが、その後は始終チェックすることはありません。
また、信頼できる人材を獲得するために、入社段階で丁寧に見極めを行っています。採用をコンスタントに続けているため、かなり多くの人数を採用しているという印象があるかもしれませんが、弊社では必要としている人数よりもずっと少ない採用人数だと思っています。つまり、まだまだ人が足りない状況なのです。
――良い人材がそろうことで求心力が高まり、良い循環に入っているのでしょうね。社内に活気があり、自由で楽しそうです。
実際、みんなが楽しんで仕事していると思います。誰もが委縮することなく、自分らしく仕事をできているのではないでしょうか。ちなみに、自由に働けると言っても、現段階では在宅ワークやリモートワークは基本的に行っていません。これも、メルカリのバリューのひとつである「All for One」という考え方に基づくもの。全員が一丸となるために、顔を合わせることを重視しているのです。
――ここでも理念が徹底されていますね。明確な目標を共有することが、成長し続ける秘訣なのでしょう。本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
