来年の春、社会人になる学生の皆さん。10月になって、企業の内定式に出席した人も多いと思います。会社の印象はどうでしたか?人事担当の皆さん。少子化、人手不足が進む中、どんな思いで学生を迎えましたか? 就職活動は、学生に有利な「売手市場」が続いているといいます。各地の内定式を取材しました。(経済部記者 豊田太、福島放送局記者 樽野章)
データで見る売手市場
来年の春、大学などを卒業する学生の就職・採用活動。経団連が学生に「正式」に内定を出すのは10月1日から、と解禁日を設定しているため、週明けの2日、多くの企業で内定式が行われました。
学生に有利ないわゆる“売手市場”。人材サービス大手「リクルートキャリア」が大学生およそ1400人を対象に行った調査で見ると…
9月1日の時点で内定を得ていた学生は88.4%。去年の同じ時期を1.8ポイント上回っています。2社以上の企業から内定を得た学生は66.2%。内定を得た会社の数は、平均で2.47社。これが今の売手市場の実態です。「売手市場は一過性ではない。労働人口が減少していくことが見えている中で、若者の確保が大きな課題になっている。企業は採用への危機感を強めている」と分析しています。
採用担当者のホンネは…
内定式を開いた企業の採用担当の人たちに話を聞いたところ、同じようなコメントが。
損害保険ジャパン日本興亜の担当者は、働きやすい環境を意識してアピールしたといいます。「優秀な学生は多くの内定をもらっていて売手市場を実感している。いかに自分の会社に振り向いてもらえるかを意識した」と話していました。内定式に出席した女子学生は「女性の働きやすさが入社を決めた理由」だと教えてくれました。
食用油の大手メーカー昭和産業は、内定の学生たちが主力商品の食用油と天ぷら粉を使って天ぷらづくりをするユニーク内定式を行いました。34人の内定者は、エビやしいたけなどの定番の食材のほか、アボカドやバナナ、食パンといった変わり種の天ぷらづくりにも挑戦。会社の役員からは、「売手市場で学生にも選択権がある。来年春の入社まで、まだ時間があるので、今のうちから会社に愛着をもってもらおうと企画しました」と。学生たちが何社からも内定を取っていることを意識しながら、学生を確実につなぎ止めたいという本音がちらりと透けて見えました。
悩み深める地方は…
売手市場で学生をどう確保するか。地方の企業も頭を悩ませています。福島県会津若松市に本社がある中堅のスーパー「リオン・ドール」。新卒の大学生30人に内定を出し、10月3日、内定式を行うことにしていますが、それを前に、半数以上が内定を辞退。いまも採用活動を続けていますが、あまり学生が集まらなくなっているといいます。
人事担当の人は、「内定を辞退する学生の数は年々増えていて厳しいです。内定を出したあとの学生へのフォローや、採用方法の見直しも考えていかなければならない」と厳しい表情で話していました。
地方の企業を選んでもらおうと、自治体も懸命です。山形県は、インターンシップや採用試験で山形に来る県外の学生に、交通費として1回につき最大で1万円を支給する制度を2年前に始めました。去年は、延べ41人の学生が活用。17人が山形県の企業に就職したということです。同じような制度は新潟県や福井県、群馬県などでもスタート。山形県庁の担当者は、「ほかの自治体もどんどんこうした制度を設け、競争になっている」と話しています。
25年ぶりの人手不足に企業は
内定式があちこちで開かれる中、日銀は2日、「短観」という注目の経済指標を発表。企業がどれくらい「人手が足りない」と感じているかを見ると、およそ25年半ぶりの水準まで人手不足感が強まったのです。少子化が進む中、若者が取りあいになっていることも背景にあるのは間違いなさそうです。優秀な学生をいかに確保するかー。人事担当者の永遠の課題ですが、ますます大きな課題になっています。