総合「アウトソーシング」と「派遣」の違いは? それぞれの上手な活用方法と留意点を解説
すべての業務を社内だけで完結している企業は存在しないでしょう。たとえば、経理の仕訳や製品の輸送、Webサイト制作などは様々な外部の力を借りています。また、現在はクラウドソーシングなども多く活用されているため、アウトソーシング選択のハードルは以前に比べて低くなっています。
今後はコア事業・業務だけを社内に残して、ノンコアの部分は外注・アウトソースまたはツール(システム)化する動きはますます加速するでしょう。そういった状況の中でアウトソーシングの意味と派遣との上手な使い分けを考えてみます。

アウトソーシングとは?
アウトソーシング(Outsourcing:外部委託)は、「業務上、必須となるビジネスプロセスを外部の専門業者に委託し、サービスとして購入する契約」と定義されることが多いようです。
契約とは、外部の専門業者との業務委託契約(正確にいえば、請負契約もしくは準委任契約)となります。委託される業務の内容、範囲、執行・提供時間、障害対応、違約の場合の補償など詳細にわたる契約が、会社と外部の専門業者とで取り交わされます。
具体的に、どのような業務が専門の業者にアウトソーシングされているのでしょうか。ここでは人事労務の主な業務を例に考えてみましょう。
(a) 人材の雇用、雇用契約の管理
(b) 人事評価
(c) 給与計算、各種控除や源泉所得税等の計算
(d) 給与や福利厚生費用の会計計上
(e) 労務管理
(f) 年金の積み立て
上記の業務のうち、(c)と(f)について、比較的標準的な業務ではあるものの、税法の変更頻度が高い業務でもあります。たとえば、所得控除の内訳、適用されるべき税率などの確認作業は大変ですし、年金の積立の数理債務の計算には専門的知識が必要になります。
そのため、これらの業務がアウトソーシングの対象となるケースが欧米でも数多く存在します。そのほか採用や労務管理などでも、単純かつ標準的な作業レベルに落とせるものはアウトソーシングするケースが多くなってきています。
アウトソーシングと派遣の違い
派遣の場合、受け入れる会社が派遣業者と「労働派遣契約」を結び、派遣社員を会社の中に受け入れ、社員の管理下で事務を行います。正社員とほとんど同じ事務を行っていても、企業と派遣社員の間に雇用関係は存在しませんが、社員が派遣社員に対し、事務の内容、仕事の仕方、成果に至る手順やプロセスを説明し指示した上で、その進捗を社員自身が管理することができます。
一方、アウトソーシングは業務を丸ごとアウトソーサーに委託しているため、社員によるプロセスの管理や業務改善を直接アウトソーシング業者に指示することはできません。また、アウトソーシング業者が代行している業務上のノウハウは基本的に蓄積できず、依頼主はサービスの良し悪しを評価できるにとどまります。
つまり、派遣は「人材の提供」がサービスで、人が働いた分に費用が発生し、アウトソーシングは「業務、成果物の提供」がサービスで、業務や成果物の完遂・品質によって費用が発生する、と考えるとわかりやすいでしょう。
どの業務をアウトソーシング、派遣すればいい?
では、アウトソーシングと派遣はどのように使い分けたらいいのでしょうか?
よくある判断の基準は、社員が急に辞めたので派遣社員で充当するが、業務の安定化や大幅なコスト削減をしたい場合はアウトソーシングを導入するというものです。
しかし、より効果的にアウトソーシングと派遣を使い分ける場合は次のような3つの視点が有用です。
(1) 収益性の観点から、商品やサービスを収益の柱か否か、コアかノンコアかに大きく区分。ノンコアのものついては、アウトソーシングの対象としてより詳細な分析を行う。
(2) 次に、コアの商品やサービスであっても、製造工程やサービスの提供プロセスを分析し、自社しかできないのか他社でもできる業務なのかを区別する。他社でも可能であり属人化しているものは、マニュアルの作成などを通じて標準化する。この点も含めアウトソーシングが可能か、より詳細な検討を行う。
(3) 最後に、コアかつ自社しかできない部分であっても、その製造工程や業務プロセスをタスクレベルまで詳細に分析し、タスクの重要度に応じ、正社員に実務させるか、派遣社員に実務させるかを検討する。
この判断のポイントとしては、ノンコア業務をアウトソーシングするか派遣で対応するかという選択肢ではなく、ノンコア業務はアウトソーシングすることが前提になっていることです。また、コア業務では直接指示できる利点を活かし、最終的な段階で派遣社員の活用を検討しています。
外部のリソースを活用するときに気を付けておくべきこと
使い分けを考える際には、次に挙げるような部分も重要です。
外部のリソースを利用するということは、社風・働き方・価値観が違う外部企業からサービスの提供を受けるため、自社で管理ができない部分が増えることを意味します。業務改善やノウハウの蓄積もできません。
また、アウトソーシングの対象となる業務を特定した場合、それまで担当してきた社員をどうするかという大きな問題が起こります。業務プロセスの標準化・効率化も必要ですが、リストラ(整理解雇)を明言した場合、内部の反発はかなりのものとなると予想できます。
派遣の場合は将来的に直接雇用を想定することも念頭に置かなくてはいけません。労働者派遣法も直接雇用を見越した内容になっているため、必要なときだけ雇えるという発想は昔ほど安易にできなくなりつつあります。
コスト面だけで決めてはいけない
収益性の向上を目的とした、アウトソーシングや派遣社員の活用は経営戦略の策定と実行の上で極めて重要です。
基本的な手順として、まず、コアな商品かサービスであるかに大別し、それを支える工程や業務プロセスを詳細に分析する必要があります。その分析過程で他社でもできる事柄を洗い出し、標準化の可否を踏まえながら絞込みを行います。
さらに、自社のノウハウが必要になる部分についてもタスクレベルに落とし込み、単純作業は派遣社員に教育して任せるといった決断が必要です。
ただし、コストだけを重視した計画は成功しません。派遣でいえば先述したように将来的な直接雇用の想定、アウトソーシングでいえば委託先の事業継続性や社風、自社でいえば対象となる社員の取り扱い、内部調整と組織変更に伴う教育実習の変更など、さまざまな角度から検討も行い、外部の活用を図るべきでしょう。