総合「好きなこと」へのこだわりはいらない
いま、人事部で中途採用の責任者をしています。特にダイレクト・リクルーティングに力を入れていて、「採用」というよりは当社が大切にしている「仲間探し」を仕事にしているという感覚がありますね。中学生や高校生の頃、私は野球部にいたのですが、もしサードが一人足りなくなったら、自分の足で教室を回って野球をやっていた奴やスポーツをやっていた奴を探したはず。それと同じです。
求人広告や人材紹介を利用した従来の採用手法も一部利用していますが、全従業員の約6割はダイレクト・リクルーティングで入社しています。日々、当社のサービスに登録されている方のプロフィールを見て直接連絡をしたり、リンクトインやフェイスブック、ブログなどを通じて「これは」と思う人にコンタクトしたりしています。すぐに転職という話にならなくても、長期的な視野で緩やかにでもつながっておけば、キャリアの転換期や心境が変化した時に連絡をくれるかもしれない。大学の講義で「弱い紐帯の強み」という言葉を習いましたが、まさに常に緩やかな人的ネットワークをたくさんつくっておくことが大切ですね。
それからうちは社員紹介経由での入社が非常に多いんですよ。いまは300人以上の従業員がいますが、その6割くらいが誰かしらの知り合いで、そこがこの会社の特徴的なところだと思いますね。なので、社内で「誰かいい人はいないですか」と声をかけることも重要な仕事の一つです。
スタッフの友達というのは、会社にとってとても大切な存在なんです。結局、その人がある一つの会社で働こうと思うかどうかは、組織や集合体に何かしらの面白さや共感できるポイントがあるからですよね。一方で会社も採用の際に相手のスキルや技術、経験を踏まえながら、面接を通じて価値観がどれだけ近いかを見ていくわけです。
社員の知り合いであれば事前に「この人だったらうちの会社に合いそうだな」とわかるので、良さそうな人がいたら毎月開催しているピザパーティに誘って、雰囲気を知ってもらったり。その意味ではあのパーティは社員の交流のためだけではなく、採用活動の一つの受け皿でもあるんですよ。
とにかく会社と人との価値観がかみ合ったときに採用は決まるのだから、候補者を紹介してもらう従来の“待ちスタイル”で採用活動していくのはどうなんだろう、というのがビズリーチのうちの事業の一つのテーマなわけです。企業というものはもっともっと採用を主体的に能動的に取り組んでいけるんだ、と。
何かを仕掛ける熱狂の中にいたい
私は大学を卒業後、楽天に4年間勤めて去年の3月からこの会社で働き始めました。もともと大学時代に社長の南がビズリーチ事業を立ち上げる際にインターンとして手伝ったんです。
南との出会いは、大学時代にオリンピックの招致活動をやっていたことがきっかけでした。2016年開催の立候補のときです。学生団体を仲間で立ち上げて、最終的には100大学が参加する団体になりました。
最初は知恵もお金も人脈もない、でも学生だから時間だけはいっぱいあるという中で、スポーツ系の企業の社長さんに会いに行ったりしていたんです。当時、南は楽天イーグルスの立ち上げをしていたので、その関係で会うことになったんですね。
どうしてオリンピックの招致活動なんてしていたかというと、2002年の日韓ワールドカップのときに、中村俊輔さんや中田英寿さんが世界のフィールドで戦う姿に感動すると同時に、どうやってあんなどでかいイベントを日本に招致したんだろう、ということがすごく不思議だったからでした。大学でもスポーツにかかわることをしたいと思っていたちょうどそのとき、石原都知事が東京にオリンピックを呼ぶと言っていた。それで、その世界が覗けるチャンスかもしれないと考えたんです。
招致活動を体験してみて今もよかったと思っているのは、少し遠い未来を考えることが私たちのような若者にとっては、本当にポジティブな体験になるんだってことでした。学生時代ってわりと一週間後や来年のことばかり考えているじゃないですか。でも、オリンピックの招致活動では10年後の東京や日本のことを考え、それに賛成だったり反対だったりと議論を積み重ねるわけです。
その体験は社会人になって自分が働いていく上で、一つの価値観になったように思います。世の中には何かを仕掛ける側と仕掛けられる側がある。どんなことでも最初は会議室でアイデアが生まれて、それを世に問う側と問われる側がいる。私は何かを仕掛けるということの面白さを招致活動で体験しましたが、常にそちら側で働くためには遠い未来を見据えている必要があるんだ、ということを実感したんです。それに若い頃は「スポーツ」にこだわっていたけれど、仕事で面白いのは何かをつくり上げていく行為そのものであって、自分の好きなことにこだわる必要は特にないということも知りましたね。
楽天イーグルスをつくろうとしていた南も、まさに何かを仕掛けるという熱狂の中で働いていて、本当に楽しそうに見えました。
「まずは大企業に入ったほうがいい」
私がビズリーチの立ち上げを手伝うことになったのは、その彼が事業を新しく始めようとしていたタイミングで、団体の代替わりがあったからでした。大学を留年したので、団体の代表を退いた挨拶もかねて「1年、暇になりました」と南に電話をしたんです。そうしたら、「ちょうどいいから、明日おいでよ」と。
当時のビズリーチはマンションの一室でサービスの立ち上げ準備をしていて、私は人材業界や採用業界の歴史を調べたり、他社のサービスについてのリサーチをしたりすることを主に担当しました。
実を言えば、当然自分はそのままビズリーチに入るものだと思っていたんです。だから、就職活動もしていなかったんですよ。そうしたら半年が経とうとするある日、南から「おまえはどうするんだ」と言われて。
「特に考えていなんですけど」と言いながら、心の中では「うちに来いよ」と言われるものだと思い込んでいました。ところが、南は「それだったら、まずはでかいところに行けよ」と言うんです。「お前も何かを仕掛けたり、つくったりすることをやりたいんだろ。それならまずは大きな企業に入って、良いところも悪いところも含めてみてきたほうがいいぞ」と。それで楽天に入ったというわけです。
思えば彼もモルガンスタンレーの出身ですし、楽天の三木谷社長も興銀出身なんですよね。それを言われたときは大人の意見だなと思うだけでしたが、あらためて振り返ると楽天で4年間働いたことでとても視野が広がった。彼の言っていたことはとても正しかったんだといまは感じています。