総合ユニークな採用手法で隠れた人材を掘り起こす 「U-29採用」の挑戦
「サイボウズ ガルーン」「Kintone」「メールワイズ」などのグループウェアの開発を行う、サイボウズ株式会社。より良い働き方を実現するために、ユニークな取り組みを多く行っていることでも知られています。20周年企画の一環として行われた、「働き方改革、楽しくないのはなぜだろう」と銘打ったキャンペーンも話題を集めました。
そんなサイボウズが、採用難を打破しようと生み出した手法が「U-29(ユニーク)採用」です。従来の採用では獲得できなかった人材が入社し、組織活性化にも一役買っている様子。文字通りユニークな採用手法について、サイボウズ人事部の武部さんにインタビュー。「採用」の成功の軌跡を追いながら、急成長を遂げたサイボウズの採用戦略に迫りました。(2017年7月取材、聞き手:尾越まり恵)
サイボウズ株式会社
「Kintone」「メールワイズ」などチーム・コラボレーションを支援するツールを開発・提供しているほか、子会社サイボウズ・ラボを中心に長期視点で情報共有に関するソフトウェア技術の研究開発活動を行っている。1997年に愛媛県松山市で創業し、2017年現在、本社は東京都中央区にある。大阪、松山にもオフィスを構えるほか、ベトナム、上海、米国にも進出。従業員数は516名(2016年12月末 連結)。
社会人経験が少なくても、優秀な若手を狙う
―「U-29 採用」とは、どのような採用方法なのでしょうか?
「U-29(ユニーク)」と書くのですが、アンダー29、つまり29歳以下であることと、ユニークのふたつの意味を掛け合わせています。これまでに就業経験がない方や未経験分野に挑戦したいという若手層を、新卒採用と同じく、職種を限定しない形で募集しています。
応募者の方からは、よく「私の経歴はユニークではないのですが、大丈夫ですか?」と問い合わせを受けるのですが、サイボウズで働く意欲があり、きちんと志望動機を語れる若手の方であれば、大歓迎です。
―U-29採用が生まれた背景を教えてください。
2015年6月にスタートしたのですが、ちょうどその頃、新卒採用に苦戦していたんです。特に、新卒の男性がなかなか採用できなくて、「新卒にこだわらず、第二新卒のような形でも、中途で採用できたらいいのではないか」という意見が出ました。
また、ちょうどその頃、ユニークなルートでサイボウズに入社してくれたメンバーがいました。彼は大学を卒業後の2年間、青年海外協力隊でバングラデシュに行き、帰国後に既卒として就職活動をしました。すごく優秀なのですが、既卒となるとなかなか間口がなく、応募先すら限れていたらしいのです。そこにヒントを得て、中途採用として応募できないものの、優秀な人たちはたくさんいるのではないかと考えました。
例えば海外に留学したり、スポーツでオリンピックを目指したりしてきた人は、優秀なのに就業経験がないために機会に恵まれないことが多い。そういう面白い経歴を持つ方を、積極的に採用しますとメッセージを出せば、もっと応募が増えるのではないかと思ったんです。大企業から第二新卒の優秀層を採れたら、という狙いもありました。
「U-29採用」の告知サイト。実際に入社したユニークな人材を紹介している。
さまざまなキャリアの人材が、会社にプラスの影響を与える
―どんな方がU-29採用から入社されていますか?
これまでに、10人ほどのメンバーが入社しています。陸上や野球など、スポーツをしてきた方も多いですし、芸能事務所でマネージャーをしていたり、大手企業で生産管理をしていたり、あるいは区役所に勤務していたりと、多様な経歴をもつメンバーが活躍しています。
―どんな成果を感じられていますか?
やはり、多様なメンバーが入社してくれるのはすごく面白いですね。いろいろな文化が混ざり合いますし、若手の優秀な層が採れるようになってきたという実感もあります。
異業種から来てくれるメンバーも多くいます。普通に中途採用として募集しているときは、どうしてもIT業界の経験者など、似たような業種からの応募が多かったです。しかし、U-29採用を始めたことで、まったく違う業種からもチャレンジしてくれる方が増えました。
当社の場合、扱っている製品が企業向けのグループウェアであり、BtoBビジネスなので、ありとあらゆる企業や組織がお客様になります。他の業種のことを知っている経験者が入社してくれるのは、会社にとってすごくプラスになると思っています。
―成功したポイントは何だと思いますか?
いまでは、第二新卒という言葉もかなり浸透してきてはいますが、そこを積極的に採用しますとメッセージを出したことが良かったと思います。U-29採用を始める前から大歓迎だったのですが、宣言していなかったので、エントリーは多くありませんでした。きちんと宣言して間口を広げると、やはり応募してくれるのだなと感じています。
スキルや経験よりも「共感」を重視する
―U-29採用のプロセスを教えてください。
エントリーをいただいた後、まずは書類選考があります。その後、人事担当者が電話面接をしています。
対面での面接の前に電話面接を挟んでいるのは、どの職種に配属したらよいかを検討するためです。営業なのか、マーケティングなのか、あるいはシステムコンサルティングのような方向がいいのか、電話面接の段階である程度お話を聞き、本人の意向と適性を確認して、方向性を定めます。その上で、その方向の現場のリーダーが面接する流れになります。面接は2~3回行いますが、最後は必ず社長の青野も立ち会います。
―採用活動において、課題に感じていることはありますか?
当社は会社への共感をとても大事にしています。「チームワークあふれる社会を創る」という企業理念があり、そこに向かって「世界で一番使われるグループウェアメーカーになる」という目標を掲げています。そこにきちんと共感できることが、スキルや経験よりも重視するポイントになります。
最近ではメディアで取り上げていただくことも増えたので、認知度は徐々に上がっているとは思います。ただ、私たちが目指していることや具体的にどんなことをやっていきたいかについては、理解が及んでいないことが多いと感じています。私たちの想いに共感していただける人に来てもらえるための認知が、まだまだ弱いのが課題ですね。
いまも試行錯誤中なのですが、広報的な活動により理解を深めていくことも大事だと思いますし、対面できちんと会って話をしていくことも大切にしていきたいですね。中途採用向けの説明会は1~1.5カ月に1回実施しており、毎回多くの方に来ていただけています。そうした機会を利用して、より理解を深めていただきたいと思います。また、オフィスに来ていただいたり、実際に社員と話していただいたりする機会ももっと増やしていきたいと思っています。
採用の受け皿を広げることに挑戦
―今後の展望を教えてください。
サイボウズの会社そのものはだいぶ認知していただけるようになってきたので、次はサイボウズのエンジニア、サイボウズの広報、サイボウズの人事のように、職種ごとの理解を深めて、職種ごとのブランディングをすることに挑戦したいと思っています。例えば、エンジニアはいま、「Cybozu Meetup(サイボウズ ミートアップ)」というイベントを毎月実施して、「サイボウズのエンジニアはこんな仕事をしています」と、エンジニアの方々に向けてプレゼンして交流する機会をつくっています。
もうひとつは、間口を広げなければ採用できないような層を積極的に採用することです。例えば、これまでに実施した、「キャリアママインターン」という取り組みでは、子育てでキャリアにブランクのできた女性を、まずはインターンとして採用し、その後正式に社員として働いてもらっています。
また、「複業採用」という制度では、サイボウズを副業とする人を採用しています。もともとサイボウズは副業OKなので、その逆もあっていいよねという発想から生まれました。これもあえて枠を作って打ち出したことで、多くの応募をいただきました。U-29採用をはじめ、このような成功パターンをどんどん増やしていきたいですね。
意欲や能力があるのに働く機会に恵まれない方々に向けて、多様な働き方のできる受け皿をつくることで、可能性を広げていきたいと思っています。
