総合中小企業こそ成果主義、人事で売上高5倍も 大企業には失われた25年、ついに人事部冬の時代へ
売上高がずっと2億円ほどだった会社が2年後には10億円を突破した。中堅社員が次々と辞めていた企業では社員の定着率が上がり社員が辞めなくなった。1年で売上高8%、経常利益が約10%上がった・・・。
目を見張るような変革を遂げている中小企業がいま続々と誕生している。成長への切符を手にしたこうした中小企業でいったい何が起きているのか――。
経営者が代わったのか。いや違う。新しい経営哲学を導入したのか。それも違う。では画期的な技術や販売方法を開発したのか。それも正解ではない。
中小企業ならではの落とし穴
クラウド型の人事評価制度を導入した結果なのだ。
中小企業に大企業のような人事評価制度は必要がないと思われるかもしれない。社員一人ひとりに社長の目は行き届くので、会社の方針と評価がリンクしやすく、社員の声も直接経営者が吸い上げられる。
しかし、ここに大きな落とし穴があった。
社長の見方は属人的で若い社員には実は不満がたまっている。成果を上げてもきちんと給与が上がる仕組みになっていないために社員のやる気が削がれている。精神論がまかり通り、必要もないのに夜遅くまで働く・・・。
社員と経営者の距離が近いことに結果的にあぐらをかいて効率的に働き成果を出す仕組みができていなかったのだ。
さらに、人余りから人材不足へ社会は急激な変化を起こしている。若い人たちの考え方も古い世代とは大きく変わり始めている。そうした中で、古い慣性力のかかった経営を続ければ社員のモチベーションは下がってしまう。
ここに目をつけた企業がある。クラウド型人事制度を構築・運用している「あしたのチーム」という会社だ。
契約している企業は設立9年(2008年設立)で1000社を超えている。「社員の労働生産性向上」「管理職の育成」「採用力の向上」「離職率の低下」・・・。中小企業の悩みだったこれらの問題を「人事」によって革新していく。
そして重要なのが、1つの人事システムを企業に押しつけるわけではないということだ。確かに標準の基本システムはあるが、社長と徹底的に打ち合わせを行う中で、その企業にぴったり合ったシステムに作り変えている。
このシステムを導入した中小企業は、その多くが短期間で圧倒的な成果を上げている。企業にとって人事がいかに大切なものか、改めて認識させられる。
会社の未来は若い人材が切り開く
能力がそれほど高くないように見える社員でも、やる気を引き出せれば今までの2倍、3倍の働きをすることがある。逆にどんなに一流の大学を出て能力が高い人材でも、組織の歯車の1枚という扱いを続ければ高い能力は宝の持ち腐れとなる。
それどころか、企業が若い社員の能力を殺してしまえば、若い人材の将来を奪うことにもなりかねない。社会の発展に責任を負うべき企業にとって人事ほど大切なものはないと言っても過言ではない。
その意味で、このクラウドを使った人事評価システムは、ベンチャーや中小企業だけではなく、日本の大企業を大きく変える可能性を秘めている。
年功序列から成果主義へ、日本の大企業はここ20~30年の間に大きく舵を切ってきた。しかし、それで大きな成果を上げてきたかと言うと、恐らく答えはノーだろう。
形だけ評価システムを変えても、評価する側の都合を優先している仕組みが大半だからだ。むしろ、年功序列の特徴であった先輩から後輩への愛情のこもった指導のようなものは失われ、若い社員の成長機会を奪っている可能性もある。
総人件費を抑えたい、管理職の気に入った部下の評価を上げたいというような評価する側の都合ではなく、生産性を高め創造的な仕事をするには何が必要かを最優先するシステムになっていない。
クラウド型人事評価システムが今後大企業でも採用されるようになってくると、「革命」が起きる可能性がある。ホワイトカラーの労働生産性が低いと言われる日本がそれによって大きな変革を起こすかもしれない。
あしたのチーム社長、高橋恭介さんに話を聞いた。
あしたのチーム高橋恭介社長問:『人が辞めない会社がやっている「すごい」人事評価』(アスコム刊)を拝読しました。ここに書いてある通り、IT時代まっさかりで企業会計士がいらなくなるように、IT化で標準化やAI化が進むと、大企業も中小企業も日本社会全体が変わっていきますね。
高橋:まず、大手の人事企画部の人たちはいらなくなると思います。仕事がなくなっていきます。
今までのように単純に右から左へ書類を作っている人はいらないですし、もっと言えば評価制度構築というようなコンサルティングの世界もなくなると思っています。
人事の世界がついにデジタル化
問:人事部の人がコンピュータ―やAIに置き換わるわけですね。そういう時代は来ると思っていましたが、意外に早かった。
高橋:そうですね。もっと言うと、タワーズワトソンヘイ、マーサーといった外資系の大手企業から中小の日本企業に至るまで、およそ「企業向けの評価制度」を展開している会社のサービス自体がなくなると思います。
いわゆる勝ちパターンというものが、私たちのクラウドの中にあって、それが無料で流通していき、しかも日々更新され改善されていきますから。
昨年くらいから、ITの世界で言うとフィンテックやHRテック(ヒューマンリソーステクノロジー)への動きがあります。今、アメリカではHRテックは活況を呈していて、日本にも、どんどんHRテックが入ってきています。
最もアナログだった人事の世界がついにデジタル化し始めたのです。
問:御社の場合は、米国流を翻訳しただけではなくて、日本的な要素を加えたオリジナルなものだそうですね。
高橋:はい。海外に近いサービスはありますが、自分たちのサービスは、評価シートをクラウドに乗せて、評価データというビックデータを獲得し、そこに人工知能を入れて、最適な目標設定、最適な評価を導き出していこうっていうものです。
この発想は、米国のシリコンバレーも含めて、今までなかったと思います。
人事評価制度に初めてAIを導入
問:人事評価制度にAIを導入したのは初めてと言うことですか?
高橋:そうです。世界初です。模倣ビジネスを私はやってきませんでしたから。それとITテクノロジーの進化と今の時代のマッチングが良かった。
日本の働き方改革というのは、私たちのビジネスには大変な追い風です。職能資格制度、いわゆる目標管理、終身雇用、年功給、これらが全部変わろうとしているわけですから。
評価制度は、オールドエコノミーのじめっとした面倒くさいところにITが入ってコモディティ化して、仕組み化して、平準化して売って行くところにチャンスがありました。
2008年のリーマンショックの10日後に会社を作って、2009年からこのサービスを始めてきた歴史はもう1つのブランドになっていると自負しています。
誰もやらない、全く必要とされなかった時から、必ずこのサービスが必要とされる時は来る、という思いでやってきました。
今となっては信用、信頼にはつながっていると思います。ポッと出の儲かるビジネスをただやっているだけじゃない、ということを分かる人には分かっていただける。
今後は、誰かにマネされたときの仕組みを考えています。
問: 企業の人事評価の悩みを一緒になって解決してきた10年間は、その試行錯誤全部が資産になっているわけだ。10年間と言えば短いようにも聞こえますが、ITのスピード感で言えばべらぼうな蓄積ですね。
高橋:そうです。人が人を評価することに100点はないと思っています。80点台を取れれば大成功でしょう。
しかし80点台を取り続けるにも、ITツールだけでは不可能です。
そこには私たちが大切にしている言葉「おせっかい」というサービスが大きな力を発揮します。企業に寄り添って、毎月定期訪問しながら業務に対する指摘をさせていただいています。
目標設定がうまくできていない人はこの人ですよ、こうすれば改善しますよ・・・など、フェース・ツー・フェースでアドバイスさせていただいています。
問:そんな個別の人事評価まで見ているのですか。
高橋:IT側で見えます。ただ見えると言っても、皆さんにお配りしたアカウントにはいろんな機能があるので、「どうぞ使ってください」ではうまくいきません。
給与計算や経理業務が、ツールだけでもうまく回っていくのは、会社法に基づく法的要件だからです。
要するに決算をしなければいけないので税務申告書を出す、そのためには月次があって、人件費を計算しなければ月次が閉められない。これに付帯する仕事です。在庫管理システムもそうです。
でも、評価制度は、法的要件ではないんです。例えば、最低賃金法の抵触していなければ、30年間勤務している社員の給与を1円も上げなくても違法性はありません。
人が人を評価することについては個別企業の裁量に委ねられています。そのため、なかなか競合が出て来ないのが実態です。
最後は経営者の思いだったり、管理職の力量に委ねられているので、その人たちに私たちは日々寄り添っていく必要があります。そのために47都道府県に拠点を出し、日々定期訪問をして、クラウドサービスというものの両輪が走っていけると思っています。
問:非常に人間くさいITというわけですね。ところで、フェース・ツー・フェースの「おせっかい」は誰に対してやるんですか。人事部長ですか。
高橋:経営者、社長です。意思決定も100%社長ですし、私たちがお手伝いするときも社長です。
実は人事部長は敵の場合もあります。会社のナンバー2すら敵の時があるんですよ。現状維持が好ましい人は、全員敵ですから。
問:書籍の中にありましたが、プロ野球チームの1つ、独立リーグの徳島インディゴソックスでこの制度を導入されていますね。
高橋:独立リーグ「四国アイランドリーグPLUS」に所属する「徳島インディゴソックス」は、2015年に新しい球団代表が就任し、選手たちに社会人としての基礎を身につけさせる人間教育に力を入れています。
独立リーグは、野球の夢を捨て切れなかった人の最期の場です。NPB(セ・リーグとパ・リーグの日本野球機構)に行ける選手は、1年に数人しかいません。
ほとんどの選手は1~3年の間にチームを去り、別の道を歩みます。野球しかやってこなかったので、コミュニケーション能力に乏しい若者が多い。
入団して来る選手の今後を考えると1年で「社会人」としてスキルアップさせるのに評価制度が必要だったのです。
そうした再就職に向けての成長を目指したのが第1の理由ですが、目標設定をはっきりさせたことで、NPBに行けた選手が増えました。
2016年は外国人選手が2人、日本人選手が2人が移籍しました。それは私は革命だと思っています。
問:東日本大震災で被災した宮城県の会社もこの制度を利用しています。
高橋:宮城県の名取市などで「漁亭浜や」ほか5つの飲食・物販店を運営する「まるしげ」という会社です。
津波で名取市の海鮮居酒屋が流されて、社長自身が避難生活を強いられるなか、お金をかき集めて、従業員一人ひとりを尋ねて給与を渡しながら、泣く泣く全員解雇しました。
震災復興の助成金で営業再開できましたが、その前の会社の預金残高は1678円だったそうです。名取市で助かった人たちは、思いを胸に一緒にこの居酒屋の中で酒を飲みながら、震災復興をやっていた。
私たちは評価制度を通じて、人の採用や複数店舗を成功するための側面的な貢献ができたと思っています。
問: 2013年におよそ2億2000万円だった売上高を、2015年には10億円を突破した「LIFE CREATE」というホットヨガを運営する札幌の会社もありますね。
高橋:女性の社長なんですが、1回ドロップした女性や、メンタルに少し問題を持っている女性をたくさん見て来ていて、女性が元気になることを事業としてやりたいと選んだのがホットヨガでした。
お客様は100%女性です。働く側も、社員の90%以上も女性です。
気持ちや体が清らかになっていくことを事業として、輝く女性を1人でも多く作りたい。そういう会社の成長のエンジンになれたのが評価制度だったんです。これもすごく側面的な貢献ができたかなと思います。
問:そもそも高橋さんが人事評価へ関心を向けられたのはいつからでしたか。
高橋:新卒で興銀リースという会社に入り、営業と財務に配属されました。毎年3万5000円ずつ給与が上がって、6.4か月分の賞与が固定されて、実力がなくても年収が80万円ずつぐらい上がっていく、という時代でした。
2年目の時に12年目の尊敬している先輩が、「うちはリース業界では一番給与が良い。なのにこんなに仕事が楽だからこんなにいい会社はない」と話すのを聞いて未来がないと思い、3年3か月で辞めました。
ちょうど、マイカルがつぶれ、そごうがつぶれ、というそんな時代でした。
その後、ジュエリーを扱うプリモジャパンという会社の投資事業部に転職し、株主が変わっていく中で副社長に就任しました。
大赤字だった時に営業本部長になり2年間で数字を上げ、営業部隊が機能し始めたんで、その後、管理本部長をやってという流れで、表と裏と全部自分がやらせていただいた。
その管理部長の2年の時に手をつけたのが、人事評価制度です。従業員は500人くらいいて、売り上げも90億円くらいあったんですが、評価制度が全くない。
いわゆる基本給が一切上がらないのと、残業代も1円も支払われないんで、夢も希望もない。未払い残業だけがある、というブラック企業でした。
問:構築された評価制度は、興銀リース時代のものが母体になっていたんですか?
高橋:全くなっていません。参考になった部分があったとすれば、反面教師として、でした。
興銀リースは、興銀グループの筆頭子会社で、いわゆる銀行と同じような仕組みが入ってきていました。
どんな業種業態でも、MBO(目標管理制度)と呼ばれる成果を達成するためのプロセスを見る目標管理シートがあるものでが、そこでは、一人ひとりが目標設定している感覚もなければ、上司も一人ひとりを評価して、これで自分が自分の部下の賃金を決めるという迫力もありませんでした。
一言で言えば、終身雇用を前提とした年功給という画一的な支給システムを、表面的には目標管理シートというツールに乗せただけで、結局出てきた評価点は、ほぼ「中心化傾向」にある、とものでした。
問: 中心化傾向とはどういうことですか。
高橋:みんな同じような評点が出てきて、標準偏差で言えば、ほとんど真ん中に寄り、そして結局は同じ賃金が支払われていくんです。
例えば2万5000円昇給していたものが、表向き目標管理シートで成果主義になりました。さぁ差がつくかと思ったら、実は90%以上の人は2万5000円ずつ上がっていく。
仕組み上、年功給のままじゃだめだからと、成果主義を導入しただけなんですね。特に大企業は、真の成果主義というものに長らく振り切れなかった。
生涯年収も高く、社会的ステータスもあって、ほとんどの人が誰も辞めない。辞めることの方がおかしいという中で、単年度単年度出していく評価と報酬なんてものは、意味がないですね。
やるだけ無駄なんですけど、成果主義を標榜しちゃった以上もう戻れないというか・・・。この狭間に1990年代後半から25年間ぐらい、日本はすっぽりとはまっていました。
日本に輸入されてきたものが、何となくいろんな形に変え、職能資格制度と米国型コンピテンシーを使った目標管理制度が入り混じったようなものになり、意味もなく25年間継続してきたのが実態だと思います。
問:年功序列なら年功序列で良い面もあるわけですが、形だけの成果主義で良い面も失われてしまった。もちろん本物の成果主義のメリットは享受できていない。経営における失われた20年、25年ですね。
高橋:現在、70歳前後の団塊世代を駆け抜けてきた経営者の方々、経団連クラスの大企業の経営者しかり、中小企業の事業承継前のオーナーもしかりですが、この人たちの成功体験は、高度経済成長期です。
全体のパイが増え、全体の所得が上がっていく。そして主体は製造業だったという日本の構造をそのまま成功体験として持っているので、サービス業主体の本物の成果主義の評価ができるわけがありません。
サービス業を主体とした一人ひとりの働き方に、一人ひとりの目標設定を緻密にして、一人ひとり差をつけるというやり方そもそもを受けてきていないし、必要性も感じずにやってきた人たちです。
突然、働き方改革です、「集団管理から個別管理に移行してください」と言われても、やってきてもいないし、やり方も分からないですし、それ以上に成功体験の塊でプライドもありますから変われない。
問:日本の社会がサービス業中心になってくると、ベンチャーや中小企業が成長の中心になります。まさにそういう時代の中で新しい人事評価制度が必要になってきます。
高橋:マザーズ上場企業クラスか地方の優良企業で言うと事業継承前のタイミング、いわゆる統治システムが変わるタイミングで、新たな次世代の経営者がキーワードです。
買い手市場の間は、人事評価制度はいらなかったんですよね。雇用主の方が強いですから。正社員でそこそこの給与を保証していれば、それで終わりでよかった。
リーマンショックの直後なのに内定切りをせず、「雇用していただいてありがとうございます」という時代から、2012年の12月を節目に大きく時代が変わり始めました。
野田佳彦さんから安倍晋三さんに首相が代わって、アベノミクスが発動した2013年からの4年間の雇用統計の数字が右肩上がりを続け、ついに「人余りから人手不足へ」変わりました。
問:これまで20年間、何をしなくても人が集まってきたものが、そういうわけにはいかなくなりました。それ以前のバブルの時代の人手不足を体験してきた経営者も第一線を去り始めました。
高橋:それもありますが、実は戦後、高度経済成長期が長く続いたので本当の評価制度は要らなかった。バブル崩壊からは、デフレの失われた25年の中で評価制度が不要だった。
では、日本に評価制度が馴染まなかったかと言うとそうではありません。評価制度の起源はどこにあるかと言うと、605年の推古天皇の冠位十二階と言われています。推古天皇は身分に関係なく人を登用して評価される仕組みを作ろうとした。
しかし結局は武士の時代が続くようになり、身分制度があって不要になっていった。
ほとんどの人たちが真の意味で社員と向き合い、一人ひとりの目標を設定して、一人ひとりに頑張りようを見て評価するという、プロスポーツでは至極当たり前のことが、ビジネス社会おいては非常にギャップのあるものになってしまった。
プロ野球の大谷翔平選手に「21歳なのに1億円もらうなんてあり得ない。お前21歳なんだぞ。もらって500万~600万円でもありがたく思え」っていう人はもはやいないと思いますが、少し前だったらいたかもしれない。
でもプロスポーツだったらもはやそこは実力主義で、成果は分かりやすい。
問:いま能力のある若い人を閉じ込めようを思っても海外に出て行ってしまいますよね。
高橋:そうですね。日本は金融ビックバンで実はそういう経験を金融界はしたはずで、山一証券がつぶれ、大和証券もつぶれるのではないかと言われた時代に、野村証券、大和の優秀な人は、モルガンスタンレーやゴールドマンサックスに2~3倍ぐらいの給料で引き抜かれていった。
銀行もシティバンクあたりに引き抜かれていったはずで、その時に日本型の目標管理制度ではもはやダメなんじゃないか、ということは、分かっている人たちには分かっていたかもしれないけれど、結局、脱皮できなかった。
もう1つは大企業に限って言えば、1億総サラリーマン社会と私はよく言うのですが、東芝問題もしかり、結局は戦前、戦後で創業者が作った今の大企業も、会長、相談役まですべてがサラリーマンじゃないですか。
新卒で入って課長になり、部長になり、平取になり、社長になり、会長になって顧問やって、相談役やってという人たちなので、結局は自分事として会社や立場の違う社員にどう向き合うかというところが欠落しているじゃないかな、と、そういうふうに思います。
問:基本的に7割が平目でうまくいければ、のし上がって行かれるサラリーマン社会ですから・・・。下と向き合う、というのはなかなか訓練されませんよね。
高橋:今さら組合と対峙して、晩節を汚してもいいという武士のような経営者はなかなか少ないですね。
私は実はガバナンスの大きな大きな試金石が人事評価だと思っています。要するに社長がお手前で給与を決めるというのもだめだし、仕組みなくして何となくの年功給というのも芸もない。
本当の意味での労務ガバナンスというのは、人事評価制度で体現されると思っています。ガバナンスが効いている会社、例えばカルビーという会社で言えば、会長の松本晃さんは、「この人事制度で嫌な奴は辞めろ」とバサッと言う。
あそこまで言えるプロ経営者であれば会社を変えられると思います。これからはサラリーマンの延長線上の経営者が務まる時代は終わると思います。
問:若い世代の人たちが旧態然とした大企業に入った時に、一番大事な20代、30代が失われた10年、20年になってしまう危険性があります。いまの時代は大企業に入ることが若者にとってのリスクになりかねない。
高橋:私は、終身型の貯金型人事評価制度はもう流行らないと思います。20代はいたずらに給与が安くて、だんだん上に上がるに従っていたずらに給与が高いっていうのは、ペイフォーパフォーマンスじゃありません。
そういう会社は、おそらく長く続かないだろうと思っています。
経団連加入クラスの超大手企業でも、これからは労務ガバナンスが求められ、やっぱりペイパフォーマンスになっていき、若い人たちでも賃金が上がり、残念ながらお給料が下がる人もいるということが当たり前になるのではないでしょうか。
問:経営者の役割というのは、社員にのやる気に火をつけることだと思います。その中核にあるのが人事評価制度ではないでしょうか。同業種の中で社員に火をつけられた会社は、中間層が2倍、3倍働くとライバル会社に圧倒的に差がつく可能性がありますよね。
高橋:まさにその通りです。私はそれをお手伝いしたい。
ただし、そのためには参入障壁が2つあります。まず第1は、クラウドベースでやってきた、いわゆるデータベースがたくさんあること。
もう1つは、私たちが、フェース・ツー・フェースでお客様と日々もやり取りをしていることです。
一般スタッフの評価について、社長自らが行うのではなく、管理職に権限移譲する必要があります。
しかし、できる経営者に限って自分で抱えてしまい、マネジメントの悦に入っている場合がある。自分が作ってきた成功体験を人に任す、ここに「おせっかい」が入って、初めて実現できるのです。
問:経営者を育てるっていう感じですよね。
高橋:僭越ながら、実は私は、弊社のクライアントになっていただけるかどうかで、もはやスクリーニングがかかっていると思っています。
そういう資質がある経営者じゃないと私たちの門は叩かないと思います。変わろうと思うかどうか。本当の意味で社員と向き合っていこうと思い、そこに投資をしようと思うか。いくつかの意志決定プロセスがあると思います。
問:日本ではベンチャーがちゃんと育ってくると素晴らしい国になると思います。
高橋:私はIoTは、日本のベンチャーが伸びるファンダメンタルだと思います。おもてなしの精神も創意工夫もあるので、IoTの領域だと大化けするビジネスはいっぱいあると思います。