管理職層は、今の若手が「まずやってみろ、と言われる理由が分からない」と言う理由を理解しマネジメントしているか?

総合管理職層は、今の若手が「まずやってみろ、と言われる理由が分からない」と言う理由を理解しマネジメントしているか?

石田 大手企業でいうと、今まで研修対象は新人ばかりでしたが、今は管理職向けにかなりやり始めていますよね。なぜかというと、会社は管理職に困っているんですよ。管理職が人を育てることができないので、そこを変えたいという会社がだいぶ増えています。特に営業系の組織ですね。人がいない。若い人がいない。辞めてしまう。そうそうたる大企業でも社員が辞めていくという現実があります。メガバンクでも多いですからね。


井上 ある面、企業もそれを折り込んで新卒の採用計画を立てていたりします。

石田 それでも人が採れるところはいいんですよ。大手企業でも採れるところはいいのですが、中小企業、地方企業は大変です。「採りたくても採れない」と困っているところはたくさんありますから。

井上 仕事の標準化ということと関連性があると思うのですが、この3、4年くらい、ブラック企業問題が盛んに言われています。石田さんから見て、この問題はどう捉えていますか?

石田 今、飲食やアパレルの現場は大変なことになっています。新しい人が来ないし、辞めてしまう。ただ、この先そういうブラック企業は残らないと思いますけれどね。
先日も、飲食店でアルバイトをしている大学生と話をしたら、こんなことを言っていました。今彼が働いている店は、友だちと二人で応募して入ったけれど、その友だちは1ヵ月で辞めてしまった。辞めた理由を尋ねてみると、「友だちの上司になった社員は、熱くて、『しっかりやれ!』と怒ってばかりで、言っていることがよくわからない」。一方、同じ職場に残っているその大学生に辞めない理由を尋ねると、「自分の上司はちゃんと教えてくれる。ちゃんと教えてくれるのでやろうと思っている。教えてくれないのなら辞める。働くところいっぱいあるし」というのです。

井上 飲食業も、やり方を変えていかないと立ち行かなくなりますね。

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石田 例えば、オーナーシェフのような形で一店舗に絞るか、それこそ完全に標準化して多店舗でやるのか、そのどちらかに完全に二極化すると思います。
台湾へ講演に行ったときにもそうした話が出ました。台湾といえば、小龍包が有名ですよね。その小龍包のつくり方を完全に標準化して世界展開をしている企業もあります。小龍包の皮の皺も完全に統一化されている。完全に決まっているんですよ。そういうことができる企業は広がっていきます。

井上 代わりのいない職人技ではなく、従業員は誰でも同じものをつくれるようにするから、人も育つし、グローバルに展開できる。やはり、重要なのは、人と仕事を切り離すということなんでしょうね。ところで、会社の取り組みとしてしっかり仕組化、標準化していくときにネックになっているのが、前回も話に出た管理職の方々の問題です。

石田 大手企業ではよくある話ですが、人材開発部の人と話すと、「仕事の標準化はどうしてもやりたいが、一番困るのは部長たちが反対することだ」と言います。一方、管理職の方々は、「標準化なんて……。とにかく〝KKD〟(カンと経験と度胸)だ!」と。これは本当に問題だと思いますね。

井上 そんな中、今の新卒の子たちは、どういう価値観で入社してくるんでしょうね。

石田 いろんな企業の採用担当者と話をしていて面白いのは、どこの企業でも「最近の新卒の子たちは3つ同じことを聞く」といいます。1つ目は「残業ってどのくらいあるんでしょうか?」、2つ目は「マニュアルとかちゃんと教えてもらえるんでしょうか?」、3つ目は「人間関係はどうなんでしょう?」と。これが今の子たちが選ぶ基準なんです。
給料がどうとか、出世がどうとかは。あまり考えない。仕事に求めているものが全然違うんです。そのギャップがわかってないとお互いに凄く苦しむと思うんです。それは数字にはっきり出ます。売上げが全然伸びませんから。

井上 僕も、個人的に身につまされる部分が多少あるんですよね。うちも中途採用をやっていて、うちの場合は若手というよりは中堅から幹部くらいの年齢の方なんですが、そういう方たちに応募動機を聞く中で、「勉強になるから」「この環境に身を置いて成長していきたい」という方は大歓迎なんです。しかし、「教えてもらえるか?」というキーワードが出てきてしまうと、僕は頭の中では結構引いてしまいますね。「教えてくれる?」って、あなたこれは仕事なんだから……と正直思ってしまう(苦笑)。

石田 だから、今の井上さんみたいなことを言っている人がいるから、人材開発の人間がみんな困っているんですよ(笑)。「そんなこと言っても、現場は人がいないんですよ。どうするんですか?」みたいな……。

井上 わかりました、僕もこれから変えます(笑)。ただ、自分でも、〝昭和の根性〟があるなと思いますね。

石田 この前も、あるメーカーの人事部長と話したら、昔、その人が営業マンだったときには、担当者と関係性をつくるために、毎週のように家に呼んで焼肉パーティなどを開いていたそうです。でも、「今の若い奴にそういうことをやれと言ったら会社を辞めますよ」と。若い人は、「家族ぐるみの付き合いなんて勘弁してくれ」、「なんで休みの日にまで仕事しなきゃいけないの?」という感覚ですからね。全然違うんですよ。

井上 石田さんは、行動科学マネジメントの観点から、「『気合を入れろ!』とか『ちゃんとやれ!』などと言う上司はダメだ」と一貫しておっしゃっていますよね。

石田 それは僕の経験からですよ。僕の会社では、残業をなくし、完全週休二日にしたら、離職率が激減して、ゼロになった。全く辞める人間がいなくなりました。結局、社員が何を求めているかというと時間です。彼らは時間が欲しいんですよ。「時間かお金がどっちが欲しいか?」と聞いたら100人が100人とも「時間が欲しい」と言う。

井上 つまり、自分の時間をどうつくってあげるのかが重要だ、と。

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石田 若い子たちに聞いても、みんな「欲しい物が何もない」と言うんですね。そもそも車には興味がないし欲しい物が何もない。そういう人間に、「がんばれば給料が上がるよ」と言ってもやらないですよね。それよりも、「がんばったら一日余分に休みをあげるよ」と言ったら喜んで働く。結局、動機付け条件をどう見るかなんですよね。その人が何を望んで仕事をやっているのかを知るのが一番大切だと思いますね。そういうことを台湾で話したら、向こうでもまったく一緒だと言っていました。
また若い子たちは、「試されるのが本当に嫌だ」とよく言いますね。「何も説明されずに『この仕事をやってみろ』と言われて、やってみると怒られるのが死ぬほど嫌だ。意味がわからない」と。「ダメなことはなぜ最初から言ってくれないのか?」というわけです。

井上 やっぱり国民の成熟度が上がっていく中で、欲求の順番が変わってきたんでしょうね。

石田 マズローの欲求五段階説でいうと、上の段階に行きつつあるんだと思います。昔は、金か出世だけだった。でも、お金やモノが満たされた時代の若い人たちは、「出世しても、朝から晩まで仕事している上司の姿は全然幸せにそうに見えない」と。若い人たちは、「仕事だけの人生は絶対に嫌だ」とも言います。仕事もプライベートも充実させたいと思っているので、そういうライフスタイルを会社がどうつくってあげるかだと思いますね。それに合わせてマネジメントスタイルも変えていかないと、優秀な人間は残らないと思います。