なぜ企業は広告費と同じ「1%」を、採用費に当てられないのか?

総合なぜ企業は広告費と同じ「1%」を、採用費に当てられないのか?

あなたは自分の会社の「採用費」が、どのように決められているか知っていますか?

初回から大きな反響を呼んでいるコラム「北野唯我のロジカル採用理論」。ボストン・コンサルティング・グループで事業戦略立案業務の経験を持ち、株式会社ワンキャリアでチーフアナリストを務める北野唯我氏が、データを交えて人材業界をロジカルに紐解きます。第一回は、「新卒採用で採るべき人数」を決めるのに必要なデータを解説しました。

第二回となる今回のテーマは「採用費」。人材の採用にかけるコストの妥当性を検討します。

意外と答えられない? 企業の「採用予算」の決め方

「年間の採用予算って、どうやって決めるべきですか?」

友人の経営者に、こう聞かれたとします。採用責任者である“あなた”は、なんと答えるでしょうか。私の肌感覚ですが、多くの方が「意外と答えにくいな」と感じるのではないでしょうか。回答は、以下の3つの方法のどれかに当てはまると思われます。

▼企業の採用予算の決め方(例)

1、 採用単価から計算する方法(人数×採用単価
2、 施策単位の予算を積み上げて計算する方法(施策数×平均予算
3、 前年比予算をベースに計算する方法(前年予算×増減率

この中で最も一般的な手法は、おそらく1つ目の「採用単価」から計算する方法だと思われます。調査によれば1人あたりの採用費は平均で45.9万円といわれますから、10人を採るのであれば460万円が必要になる、といった形です。

では、そうして決まった採用費は何に使われているかというと、「広告費」が50%近くを占めます。具体的には、採用ホームページの制作費や、ナビサイトへの出稿、合同説明会がメインといわれます。

企業の「広告宣伝費」が決まるメカニズムから、採用費を考える

さて、広告費といえば、企業全体の「広告宣伝費」はどうやって決まるのでしょうか? 結論からいうと、広告宣伝費の予算は「売上の歩合(X%)」をベースに決まることが多いと言われます。例えばトヨタ自動車は売上の1.7%、ソニーは売上の4.8%程度といった具合です。

その背景はいくつかあります。例えば、
(1)変動費的な要素が強く、業績に応じた増減が簡単だから
(2)将来顧客を獲得するための「投資」として、一定額を保つ必要があるから
などです。このように商慣習として、広告宣伝費は売上に連動する形式をとっているわけです。

そして「採用費」は、上記2点で「広告宣伝費」に似ています。
具体的な共通点として、採用費も
(1)業績に応じて予算額を変動させやすく、
(2)企業にとって投資になりえる
ことが挙げられます。

採用費は「広告宣伝費の1,000分の1」で本当に妥当なのか?

しかし、両者は決定的に異なる点があります。それは、「予算規模」です。上述のソニーは年間の広告宣伝費は4,000億円近くもあると言われますが、同社の採用費(新卒)は採用人数から逆算するに、3億~6億円程度だと推測されます。すなわち1,000倍近い差があります。

これは変な話です。企業にとっての「採用」とは、料理における「素材」のようなものです。あなたが美味しい料理(=企業の成果)を作ろうと思ったら、まず良い素材(=優秀な人材)を仕入れるはずです。そんな重要な採用費が、広告宣伝費のわずか1,000分の1しかないことは本当に妥当なのでしょうか。ストレートに言うなら、私は2つの観点から「採用費の割合を増やすべき」と考えます。

企業が採用費の割合を増やすべき2つの理由

1つ目は、近年「人材の重要度」が高まっていることです。国内GDPにおけるサービス産業の割合は年々高まり、現在は70%近くを占めています。(内閣府調査:PDF)サービス産業は、資産のうち「物理的なもの以外」の割合が大きいわけですから、企業間の差別化ポイントも、必然的に「モノ」ではなく「ヒト」によって生まれる部分が多くなるはずです。

言い換えれば、「以前よりも人材の重要度が高まっているのだろうから、企業の採用費もそれに準じて上がるべき」ということです。

もう1つは「効果的な広告宣伝に要する金額が減っていること」です。テレビ広告は依然として強い影響力を持つと思われますが、雑誌や新聞といった紙媒体の広告価値は減るばかりです。一方でウェブマーケティング(SEO、SNSやコンテンツマーケティングなど)の価値は高まりつつあります。そして、ウェブはマスメディアに比べてターゲットを出し分けできるので、効果的なプロモーションを比較的低予算で展開できます。つまり、広告にかける予算を適切にウェブに移行していけば、広告宣伝部の予算は余るはずです。

広告宣伝部の「余った予算」はどこへ行く?

では、広告宣伝部の「余った予算」はどうすべきでしょうか? 本来は、部署を超えて企業に最適な形で使うか、留保されるべきです。ですが、多くの組織では、人事部と広告宣伝部が分離しており、各部署は独自に予算消化の方向に走ります。結果、広告宣伝費の予算が人事部にあてられることは極めて稀です。

「就活売り手市場」と言われる昨今、多くの企業は採用費の予算を増加させようとしています。現に、2018年度卒向けの新卒採用について、約35%もの企業が「採用費が増えると思う」と答えています。一方、「減ると思う」と答えた企業はわずか6%に留まりました。

加えて、前回述べたように、「優秀な人材の獲得競争」は激化しています。だとすれば、採用費の重要度も当然上がると考えるのが妥当です。

▼人事部に必要なこと

採用予算を増やす:売り手市場/優秀な人材の採用単価アップに対応する
予算調整機能:広告宣伝費を採用費に配分する、または予算の調整機能