転職すれば上がる?ITエンジニアの給与実態

中途転職すれば上がる?ITエンジニアの給与実態

転職後に給与が上がるITエンジニアの割合がここ数年、右肩上がりに増えている――。リクルートキャリアが2017年7月に公表した指標「転職時の賃金変動状況」によってこんな結果が得られた。

この指標は、同社の転職支援サービス「リクルートエージェント」を使って転職した人材のうち、転職前に比べて賃金が1割以上増加した人材の割合を調べて算出した。リクルートエージェントを使って転職する人材は年に3~4万人という。それらの人材が転職後に給与が上がったかどうかを調べた。

「転職時の賃金変動状況」の算出式。転職支援サービス「リクルートエージェント」を使って転職を決定した人材のうち、前職と比べ賃金が1割以上増加した転職決定者の割合を調べた
(出所:リクルートキャリア、以下同じ)
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転職前賃金と転職後賃金の定義
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転職前に比べて「1割以上増加」が条件となっているため、2割や3割と大幅に給与が上がった人材も含まれる。転職前の賃金は各種手当を含んでいるが、転職後の賃金は時間外・休日・深夜労働などの変動する割増賃金は含まない。

転職時の賃金変動状況を業種別に調べれば、企業が「どの業種の人材の獲得に積極的かどうか」「よりよい待遇や雇用条件を提案しようとしているか」といった傾向を探るのに役立つ。同指標の算出に携わったリクルートキャリア 経営統括室カンパニー企画グループの高田悠矢氏は「求人倍率や賃金水準だけでは分からない、人材の需給に関する傾向を調べやすくなると考えた」と狙いを説明する。

同社はこれまで転職市場の需給動向を示す指標として毎月、転職求人倍率を公表してきた。求人倍率自体は全体傾向として上昇が続いており、人材の需給バランスもひっ迫感が高まっているという。

ITエンジニアの転職後の給与は上がりやすくなっている

IT系エンジニアの転職時の賃金変動状況について2008年からの推移をみると、19.2%から26.4%へ上昇している。ただ毎年上昇を続けてきたわけではなく、2008年から2009年にかけてと、2011年から2013年にかけては下降した。

IT系エンジニアの「前職と比べ賃金が1割以上増加した転職決定者の割合」
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2008年から2009年にかけての下降に影響している大きな要因はリーマン・ショックである。2011年から2013年にかけての下降については、リクルートキャリアによれば「内閣府の景気基準日付によれば2012年3月~11月は短期的な景気後退局面だった」ため、転職時の給与水準が上昇しづらかったと考えられる。

リクルートキャリアによると、2013年以降に転職時の賃金変動状況が上昇した背景には、IoT(インターネット・オブ・シングズ)や人工知能(AI)、ロボティクスといった最新技術に取り組む企業の増加がある。こうした最新ITを事業に活用するために、ITエンジニアの獲得に乗り出す企業が増えているのだ。

こうした「デジタル化」の流れの中、ITエンジニアの活躍の場が広がっている。システムの受託開発を主とするSIベンダーにとどまらず、ユーザー企業のIT部門や新たな製品・サービスの開発に必要な人材の獲得競争が激化している。

リクルートキャリアによればITエンジニアを獲得しようとしている代表的な業種の例が自動車メーカーだ。特に組み込みソフトや制御ソフトを開発するエンジニアの人気が高い。「自動車完成車メーカーを始め、自動車部品メーカーや総合電機メーカーの車載部門などが採用を強化している」という。

これらの企業はIoTの活用を見据えたコネクテッドカー関連の製品・サービス開発に必要な人材を獲得しようとしている。トヨタ自動車が神奈川県内などを走るJR南武線沿線にエンジニアの求人広告を出して話題となったのもこうした流れの一環といえそうだ。

このほか、SEからコンサルタントに転職した人材やWebサービスの開発向けエンジニアに転職した人材も、これらの職種への採用が強化されているため、賃金水準の上昇が比較的見込みやすいという。

システムの受託開発を主とするITベンダーの枠から飛び出し、ユーザー企業で高付加価値な製品やサービスの創出に貢献できれば、受け取る対価としての給与も上昇しやすくなる。活躍の場を広げる選択をしたITエンジニアこそが、今の転職市場における「勝ち組」といえそうだ。