総合働き方改革 さびつくルール(中)無期雇用転換に落とし穴 「全員参加」しなやかに
「責任ある仕事を任せてもらい、やりがいを感じる」。生活協同組合コープみらい(さいたま市)のたまらん坂店(東京都国立市)店長、和田一美さん(50)は昨年9月、有期のパート従業員から無期契約の正規職員に転換した。仕事の負荷は高まったが、年収は2倍以上に大幅に増えた。
優秀な人材確保
和田さんは子育ての一段落を機に「エリア専任職」と呼ぶ限定正社員になった。月給制で福利厚生も厚く、スキルアップに向けて研修も受けられる。「優秀な人材をつなぎ留める」(牧伸一郎人事部長)狙いで2014年に創設したこの制度は約420人が活用した。
コープみらいの取り組みは、地位が不安定な有期社員の待遇改善を狙って13年の改正労働契約法で定められた「無期転換ルール」の先取りだ。18年4月以降、5年を超えて有期契約で働く人が申し出れば企業は無期雇用にしなければならない。有期契約で働く人は約1500万人。その約3割の約450万人が権利を得る計算で、無期雇用への大転換時代を迎える。
ルール導入を待たず無期転換する企業も大手中心に相次ぐ。高島屋は契約期間が1年を超す約3200人の契約社員などを無期雇用に転換。ファミリーマートは加盟店で働くパートやアルバイトを本部が社員として直接雇用する制度を設けた。労働政策研究・研修機構の調査では、フルタイム契約者について「5年を超える前に無期雇用に切り替える」とした企業は4社に1社にのぼる。
無期転換の際に給与や福利厚生を手厚くするところもある。背景は人手不足。7月の有効求人倍率は1.52倍と約43年ぶりの高水準だ。ルールは待遇改善を義務付けていないが、進んで取り組まねば人材が流出するとの懸念が企業を走らせる。
望まぬ転換も
ただ、企業がいざ無期転換をしようとすると問題も生じる。19年度にも始まる、同じ仕事を同じ賃金にする「同一労働同一賃金制度」との整合性が取れていない点だ。
ガイドライン案では、基本給や福利厚生などで正規と非正規の不合理な待遇差を認めない。ただ制度の対象は有期契約やパート、派遣労働者。フルタイムの有期契約が無期に切り替われば「対象から外れる」(厚生労働省)。正社員と無期契約の間の格差が残ってしまう可能性もはらむ。
転換を望まない人もいる。制度上は、無期転換の権利を行使しなければ済むはず。だが一斉に無期に切り替える企業も多い。労働経済学が専門の八代尚宏・昭和女子大学特命教授は「有期契約で気軽に仕事をしたい人に労働負荷を強いることになりかねない」と話す。
人手不足の今は雇用をつなぎ留める役割が大きいが、企業は非正規社員を景気の波に備えた雇用の調整弁としてきた。景気後退時は負担増要因になり得る。無期雇用を嫌い「雇い止め」が生じる潜在的なリスクもある。
ハイテクなど変化が激しい業界では柔軟な人材活用が成長の鍵を握る。多様な働き方を求める人が全員参加できるしなやかなルールが必要だ。
