総合「人事不要論」は本当か?次世代型人事の在り方とは?~人事アンケート調査結果から読み解く~
「人生100年時代」の到来により、従来の日本型雇用システムをベースとした働き方や、企業と働き手の関係が大きく変わろうとしている。AIの人事業務への導入など、テクノロジーによって省力化・自動化される人事業務も増え、いまのままの人事部では不要になるという声さえ聞こえてくる。
人事はどう変わるべきなのか。変わるための準備はできているのか。ProFutureが企業の人事責任者・担当者を対象に実施したアンケート調査結果から、人事の現状を分析するとともに、いま、人事が迫られている「変革」の方向性を探っていく。
| 調査主体: | HR総研(ProFuture株式会社) |
| 調査対象: | 上場および未上場企業人事責任者・担当者 調査方法:webアンケート |
| 調査期間: | 2017年7月26日~8月15日 有効回答:313件(1,001名以上:35%、301~1,000名:30%、300名以下:35%) |
「働き方」も「人事」も大転換期を迎えている

世界的ベストセラーとなった『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)~100年時代の人生戦略』(東洋経済新報社刊)の著者であるロンドン・ビジネススクール教授リンダ・グラットン氏は2017年9月19日~22日のHRサミット/HRテクノロジーサミット2017にビデオ講演で登壇する。彼女が示した未来の働き方、生き方に関する予測と提言は、世界中の経営者、人事の人々にとって、ある種、衝撃的なものだった。
世界中で平均寿命は延び続けており、いま生まれてくる多くの子供たちの約半数は100歳以上の人生を生きることになるとグラットン教授は言う。そのような「人生100年時代」には、80歳程度の平均寿命を前提に「教育→仕事→引退」という固定的な3つのステージで構成された人生から、柔軟なマルチステージの人生へとモデルチェンジが起きる。すなわち、学びのステージ、仕事のステージ、さまざまな活動に同時進行で取り組むステージを、個人の状況によって行ったり来たりするようになるというのである。
そして、70歳を超えて働くことが想定される人生100年時代を生き抜くため、個人にとっては、多様な働き方や、学び直しによるスキルセットの更新が重要になる。グラットン教授は、フリーランスなど、企業に雇用されず、独立した立場で生産的な活動に携わる「インディペンデント・プロデューサー」が劇的に増えると予想している。そうなれば、企業と働き手の関係は大きく変わっていくことになる。
実は、そうした未来は現実のものになり始めている。インディペンデント・ワーカーは米国だけで5,500 万人存在しており、Forbesによれば、その数は2020 年までに全労働者の50%に達すると予想されている。フリーランスの働き方が増えていることは、たとえば世界各国の都市で人々にシェアされるコワーキングスペースを展開する米国企業、WeWorkのここ数年の躍進からも読み取れる。日本でも、今後、同社のコワーキングスペースが開設されると報じられている。
いま、働き方は世界的な規模で大きく変わろうとしている。人事にも新しいあり方が求められているということである。
AIに取って代わられる、未来の人事業務

人事のあり方を根本から変えようとしている要因が、もうひとつある。AI(人工知能)である。進化したAIが人事業務を代替する流れは、猛烈な勢いで加速している。
特に今年、2017年はソフトバンクが新卒採用にAIを導入すると発表し、大きな注目を集めた。同社では膨大なエントリーシートの審査を行うAIを開発し、採用担当者が行っていた業務を大幅に削減したという。しかし、AIはエントリーシートの審査のみならず、採用プロセス全体を自動化することさえ可能にしつつあるのが現実だ。
NECが開発している機械学習による人材マッチングシステムは、過去の履歴書データと採用試験の合否判定結果の情報をもとに、自社に適した人材を高精度で抽出できるという。AIが面接官に代わって一次面接を行うわけである。また、米国のAI企業ミャー・システムズが開発中の人材採用向けクラウド型AIチャットボット「Mya」は、採用プロセスを最大75%自動化可能だとされており、現在はβ版を運用している段階だが、すでに多くの企業が導入している。
採用のほかにも、最近のクラウド人材管理システムは、さまざまな人事データを統合化し、一元管理してAIが処理することによって、労務管理、勤怠管理、教育、配置、評価、報酬などに関するさまざまな人事業務を自動化し、「人に代わってできること」を増やしつつある状況だ。
このようなAIの進化は、人事部門のオペレーション業務を削減するのみならず、今後、人事部門の縮小につながる可能性があると見る向きもある。これまで、日本企業の人事は、人に関する情報を囲い込み、自分たちの培った経験や勘に頼って人材管理を行ってきた傾向が強いといわれる。しかし、人事情報がデータベースに統合化され、その情報を使ってAIが最適な判断を行うようになれば、その場面での人事の優位性は大きく下がる可能性が高い。
そうした状況の中で、「いまのままの人事部はいらない」といった人事部不要論も浮上してきた。時代が変化する中、人事が「現場を知らない」、「経営と乖離している」、「グローバル化に対応できていない」といった批判にさらされる企業も増えている。実際に、採用業務を現場に移管し、縮小させた人事機能をCSR 部に移管するなど、「人事部門の見直し」の動きは大手企業の間でも出てきている。
いま、人事に突きつけられているのは、まさに、時代の変化に対応してどのように変われるか、どのような新しい価値を生み出していけるかという命題である。
日本企業の人事は「ガラパゴス」か

では、日本企業の人事の現状はどのようになっており、新しい時代への対応をどのように行おうとしているのだろうか。その実態を探るため、ProFutureでは、上場および非上場企業の人事責任者・担当者を対象に「次世代の人事への対応に関するアンケート調査」(調査期間:2017年7月26日~8月15日、有効回答313件)を実施した。回答を得た企業の規模は1001 名以上が35%、301~1,000名が31%、300 名以下が35%となっている。
このアンケートでは、まず最初に、「日本企業の人事は『ガラパゴス』だと思うか」という問いを投げかけた。ガラパゴスの定義は、「限られた地域で独自に進化し、ほかでは通用しにくいこと」とした。
結果はどうだったか。「そう思う」との回答が最も多い55%となり、半数を超えている。「そう思わない」は16%にとどまっており、「どちらともいえない」は29%である。日本という限られた場所で、新卒一括採用や終身雇用・年功序列の人事配置といった日本型雇用システムに対応した人事としてやってきた結果、一歩、海外に出れば通用しない人事になってしまっている。そのような危機感、現状認識を、多くの企業の人事の方々が持っている現状がうかがえる。ことに、「1,001名以上」の「メーカー」では、「そう思う」との回答は65%に跳ね上がっている。大手メーカーではグローバル化が進んでいる場合が多く、M&Aを行って買収先の欧米企業の人事と一緒に仕事をする機会などもあるため、とりわけ「ガラパゴス化」を感じているのかもしれない。




