AIの真の成功は「人材をどう扱うか」にかかっている

AIAIの真の成功は「人材をどう扱うか」にかかっている

かつてクラウドコンピューティングがそうだったように、IT分野のスタートアップが次のトレンドになり得る存在として認められるためには、人工知能(AI)という言葉を使うことが必須のようになっている。売り文句に「機械学習」や「ニューラルネットワーク」などのキーワードが含まれていなければ、そのスタートアップは関心を持たれないかもしれない。

しかし最近では、AIのマイナス面も強調されるようになってきた。億万長者たちが人類の遠い未来を心配する議論を交わしているほか、メディアはAIが生み出す仕事よりも、AIによってなくなる仕事の方が多いのではないかと心配している。

自動化やAIが台頭した結果、危険にさらされるようになった産業や職種は数多くあるが、IT産業は微妙な位置にあり、AIを使ったツールを作る立場でありながら、自動化によって多くの職が失われる可能性のある産業でもある。

もちろん、AIの影響を真っ先に感じるのがIT業界の人間であるのは、ある意味で当然の報いだと考える人もいるかもしれない。

また近年のIT産業が、従業員や従業員のスキルの将来について真剣に考えてきたとはとても言えない。

過去10年ほどのアウトソーシングやオフショアリングの流行は、短期的には企業の収支によい影響を与えたかもしれないが、業界に入ってくる人材を受け入れる、簡単な仕事をなくした原因にもなっている。クラウドコンピューティングの台頭も、多くのアプリケーションメンテナンスの仕事をなくしてきた。

AIの普及も同様の影響を及ぼす可能性がある。アウトソーシングの影響に関して頻繁に出てくる不満の1つは、後任をトレーニングするのに必要なスタッフが足りないことだ。そして実はAIの世界でも、AIが仕事をできるようにするためのトレーニングに、多大な人手が必要となることが問題になっている。しかしもちろん、一度トレーニングが終わってしまえば、トレーニングを行う人間は必要なくなる。

こういったことは、必ずしも悪いこととは限らない。車輪から内燃機関まで、過去のあらゆる新技術は、よりよい新たな仕事を生み出してきた。重要なのは、自動運転車でも同じことが起こるようにすることだ。

PwCが最近発表した、未来の仕事に関するレポートには、次のように書かれている。「自動化と人工知能は、あらゆるレベルのビジネスと、ビジネスに関わる人間に影響を与えるだろう。この問題は、IT部門(あるいは人事部門)だけに任せるには大きすぎる。変化し続ける技術の動向を深く理解し、十分な知見を得ておくことは、必要不可欠だ」

この指摘は正しいが、IT産業のチャンスもここにある。AIの仕組みを理解しているIT産業には、どうすればAIを取り込みながら、単純に既存の雇用を破壊するだけに終わらせずに済むかを、ほかの産業に示す責任がある。IT企業やIT部門は、自らの振る舞いによって、AIや自動化は必ずしも雇用や労働者のスキルにとって悪いものではないと示す必要がある。新たなテクノロジを導入することで、破壊するよりも多くの仕事を生み出せると示さなくてはならない。これは、AIを単なるコストカットに使うのではなく、従業員が新たなスキルに対するニーズに順応するのを支援すべきであることを意味している。もしIT産業がAIの導入と適切な雇用の創出のバランスを取れないとすれば、ほかの産業に望みはあるだろうか。

AIは確かに大きなメリットを生み出すが、そこには検討が必要な大きな課題もある。自動化が進んだ後に、人材をどう再訓練するのか。1週間の労働時間や、従来のキャリアに意味はあるのか。そしてそのことは、社会の仕組みに対してどのような意味を持つのか。

これらの課題をすべて解決するには何十年もかかるだろうが、今日の企業の振る舞いは、将来の答えに影響を与えるはずだ。AIの本当の成功は、テクノロジよりも、AIが普及した際に影響を受ける人々を、どう扱うかによって決まると言っていいだろう。